AIの活用が世界中で熱を帯びている。その立役者となったのが、言語や画像の処理能力に長けた生成AI技術だ。オープンAIの「チャットGPT」、グーグルの「ジェミニ」に代表される生成AIは自然な対話を可能にし、一気にAI活用のハードルを下げた。

 日本の大手小売り各社も、かつてAIといえば「AI発注」くらいだったが、日常業務において積極的にこの対話型AIを活用。自社の様々なデータを集約し、これを基盤にAIを活用して社内向けマニュアルの呼び出しや売り上げ分析資料を作成するなどの事務作業削減につなげる企業が増えている。

 年末には政府が「人工知能基本計画」を策定。AIモデルの開発で先を行くアメリカ、中国に対し、日本はロボットなどのフィジカルAI開発で勝ち筋を見出したいと表明。冒頭に掲げられた言葉は、「『信頼できるAI』による『日本再起』」だ。

 ただこの言葉が空疎に聞こえるほど、AIの技術革新は急激だ。今年1月、ニューヨークで開催された小売業向けITベンダーの展示会NRF2026。そこでマイクロソフト、SAP、オラクルが紹介したのは、小売業のあらゆる業務にAIエージェントが入り込み、それらがさらに広範囲に複雑に連携することで全体最適を実現するエージェンティックAIだ。

 AIによる自動発注は、AIが発注予測モデルそのものを内外のデータを分析して最適化、それを人間が承認すると今度は在庫担当に在庫手配の提案を発出する――。店内では従業員一人ひとりがAIエージェントとともに業務を担い、誰がいま動くべきかをAIが判断、その提案を店長に投げて判断を仰ぐ――。こういったことがすでに技術レベルでは実現可能となっているのだ。ここまでの変化に人間がついていけるかどうか。AIの大きなうねりに対し、小売業は変革の有無が問われる。

 ここからは国内の小売り各社の取り組みと、中国、アメリカのAI活用最前線を見ていこう。