時代とともに低コスト低価格の小売業が台頭し、成長とともに高コストに肥大化し価格も高くなっていき、やがて新たに台頭してきた低コスト低価格の小売業に取って代わられる。アメリカの経済学者マルコム・P・マクネアが提唱した「小売りの輪の理論」だ。マルコムがこの説を唱えたのは1958年。日本では紀ノ國屋がセルフ・サービス方式を導入し、西友、ダイエー、イトーヨーカ堂が創業したばかりの頃だ。
それからまもなく70年が経とうとしているが、日本の流通業界の歴史はまさに「小売りの輪の理論」に沿う形で歩んできたと言える。かつて隆盛を誇ったGMS(総合スーパー)は非食品(衣料、住居関連)をユニクロやニトリに代表される専門店に奪われ、書店や家電量販店はアマゾンや楽天らECに奪われ、食品を主戦場とする食品スーパーや食品強化のコンビニはその食品を新興勢力であるディスカウントストアやドラッグストアに侵食されている。いずれも奪う側は低コスト低価格の参入者だ。
これから日本は労働人口が激減する本格的な人口減少社会に突入する。パイは縮み、売り上げの奪い合いはますます激化する。一方でインフレ経済への転換により、今までのように店は増やせず、人件費・水光熱費は上がり、AIやDX投資も増える見通しだ。低コスト低価格の新規参入組への追い風は強まる。それに既存のプレーヤーがどう対抗していくか。それには小売りの輪から抜け出すための自己変革が不可欠と言えよう。実際、今日残り続けている企業は、これまでの環境変化を何らかの形で乗り越えてきたということだろう。
歴史の中に小売りの輪から抜け出すためのヒントはあるのか。激流50周年を機に、流通業界の50年を振り返ってみたい。

















