色味が特徴のカレーシリーズから華やかな「赤」が登場

「できるだけ手軽に、だけど多様なものを食べたい」。昨今の食卓ニーズを捉えたハウス食品の2025年秋冬新商品が発表された。カレールウでは、昨年発売し話題を呼んだ「ホワイトカレー」「ブラックカレー」に続き、華やかな赤色のカレーが家庭で簡単に作れる「レッドカレー」(冒頭写真)を追加。また、居酒屋の逸品のようなメニューが手軽にできるシーズニングのラインアップを拡大するなど、簡便性と多様化ニーズへの対応を両立する品揃えを強化している。

 内食を取り巻く環境は今、大きく変化している。特に物価高を背景とした「経済性」志向、生活様式の多様化からくる「簡便性」志向は年々高まっており、実際に主菜・副菜を減らした「主食偏重型」の食卓が増加する傾向が出てきている。一方で、簡便さを求めながらも「メニューのマンネリ化を避けたい」「手料理のレパートリーを広げたい」といった新たな課題も浮かび上がっている。

 こうしたニーズに応えるべく、ハウス食品は今秋冬のテーマとして「多彩で手軽なメニューバリエーション」を設定。品数を減らすなど日々工夫して料理する生活者に対し、満足度の高い食卓を提供するべく、新たな選択肢となる商品を開発した。

 中でも目玉となるのがカレールウだ。ハウス食品では調理型カレーの価値を、コスパ、タイパを起点にさらに拡張。エンタメ的なパフォーマンス(エンパ)、健康(ヘルス)面でのパフォーマンス(ヘルパ)、自由なアレンジを楽しめるパフォーマンス(アレパ)を加えた「五つのパ」として整理し、提案の幅を広げている。今シーズンはその中でも“エンパ”にフォーカス。昨年、期間限定で展開し好評を得た「ホワイトカレー」「ブラックカレー」を通年販売に切り替え、新ラインアップとして「レッドカレー」(税別参考価格298円)を追加。三種のカラフルなカレーとして提案し、いつもの家庭のカレーに彩りや華やかさといったエンタメ要素を提供していく。

「レッドカレー」の最大のこだわりは、何と言ってもその名が示す鮮やかな赤色のソースだ。パプリカやカラメルの組み合わせにより、ハウス食品の家庭用カレールウ史上“最赤※”を実現。白さ・黒さにこだわった既存品の「ホワイトカレー」「ブラックカレー」同様に米粉を使うことで透明感を引き出し、油脂の照りで艶やかな色味を出した。

※ルウそのものの色ではなく喫食時のソースの色

「レッドカレー」の味わいは、えびの旨みとスパイス香る濃厚なコク深さが特徴だ。えびの旨みはパウダーやエキスで再現し、えびの香ばしい風味と相性の良いクミンやマスタードを使用することでえびのおいしさを最大限引き出した。また、ターメリックなどのスパイスでシーフード特有の臭みを減らし、味の輪郭を際立たせている。綺麗な赤色を引き出しつつ、えびとカレーの風味を両立させるために行った試作の回数はおよそ300回。「見た目は鮮烈な赤だが、激辛ではなく、辛さは中辛。えびのおいしさが溶け込んだみんながおいしく食べられる味に仕上がった」と担当者は胸を張る。なお、本商品は主な具材としてえびと玉ねぎを想定。火の通りが早いため、フライパン一つで調理でき、沸騰から約15分で完成する簡便・時短メニューでもある。

 「レッドカレー」のメインターゲットは、ハウス食品が独自分類した七つのセグメントのうち、20~30代女性を中心とする「料理エンジョイ層」だ。好奇心旺盛で流行に敏感、ただ凝った料理に挑戦するというよりは見栄えを意識し、手の届く範囲で楽しむ志向が強い層だ。同社では今後、この層の拡大を見込み、新規顧客の獲得を狙う。

 プロモーションには、ママタレントとしても活躍するお笑い芸人、横澤夏子氏をアンバサダーに起用した展開を計画。主婦の“あるある”をもとに、SNSと店頭を連携させながら、シリーズ三品それぞれの魅力を発信する。月見やハロウィーンなどのイベントの際には「カリフルパーティ」と銘打った提案を強化する考えだ。

 昨年の「ホワイトカレー」「ブラックカレー」発売時は、発売からわずか10日で累計出荷100万個を達成。「この色のインパクトはクセになる」「(ホワイトカレーは)子どもが服を汚しても洗濯が楽」といった、これまでにないユニークな声も多く寄せられた。「想定以上にカレーの自由さ、広がりを実感できた」と担当者。ここにレッドカレーを加えることで、ハウス食品ならではの新たな選択肢を提示し、市場の深掘りを図っていく。

オニオングラタンスープのような玉ねぎが主役のカレー

 カレールウに続き、レトルトカレーも今期は新たな切り口で提案する。玉ねぎにとことんこだわった新商品「ぎゅっと濃厚玉ねぎカレー」(税別参考価格238円)がそれだ。

 野菜が特徴のレトルトカレーの販売金額はこの4年間(2021~2024年度)で約1.5倍に拡大、特に女性を中心に支持が高まっている。中でも玉ねぎは調理型カレーの使用野菜ランキングで1位を獲得する定番の野菜。カレーに旨味・風味をつける重要な役割を果たしている。半面、具材そのものとしてはじゃがいも、人参などの野菜に比べ、比較的目立ちにくい存在でもあった。

 そこでハウス食品は「玉ねぎが主役のレトルトカレー」の開発に着手。シャキシャキとした食感の生玉ねぎをはじめ、じっくり炒めた飴色玉ねぎ、香ばしさを加えるオニオンチップ、旨味を引き立てるオニオンルウなど、様々に加工した玉ねぎを組み合わせることで複雑な風味を構築。まるでオニオングラタンスープのような奥深い味わいに仕上げた。

 じっくり煮込んだブイヨンと合わせた「ブイヨン風味仕立て」と、なめらかで濃厚な生クリームを合わせた「生クリーム風味仕立て」の二品を用意。パッケージは中央に玉ねぎのイラストを大きく載せ、その周りにカレーソースを配すことで「玉ねぎを使用した」「濃厚な」カレーであることが一目で伝わるデザインとした。レトルトカレーは店頭で商品を見て購入を決める人が約8割を占めることから、今までにない商品価値を売り場で打ち出しながら売り込むことでレトルトユーザーの新規獲得を目指す。

左から「ぎゅっと濃厚玉ねぎカレー」<ブイヨン風味仕立て><生クリーム風味仕立て>

「おかず」にも「つまみ」にもなるシーズニングのラインアップを拡大

 ハウス食品はシーズニングでも独自の価値を備えた商品を強化する。おかずとつまみをまとめて作りたいタイパニーズに応える「おかづまみの逸品」シリーズからこの秋冬、5品を新たに追加する。

 今年2月に発売した同シリーズは、節約志向とコロナ禍で定着した“家飲み”を背景にした簡便調味料だ。家庭によくある食材が、簡単調理で「おかず」としても「つまみ」としても楽しめる一皿に早変わり。小料理居酒屋の逸品のようなメニューが手軽に味わえると支持を高めている。税別参考価格で一袋100円という価格設定も魅力の一つ。ワンコインのため、スーパーだけでなく、コンビニや均一ショップなど幅広い業態で販売が拡大中だ。

 今回新たに展開するのは「手羽先の山賊焼き」「魚の西京焼き」「鶏の南蛮漬け」「茄子の揚げびたし」「あんかけふろふき大根」の5品だ。本来なら揚げる・煮る・漬けるといった手間暇のかかる調理工程が必要なメニュー群だが、いずれもシーズニングの力で簡便に再現できることが最大の特徴。例えば魚の西京焼きは、通常は白みそに1日以上漬け込んで調理するが、本品は糖原料と浸透圧を活用することで、白身魚にまぶして30秒ほどで味が染み込む。あとは焼くだけで、白みその香りとコクが広がる、しっとりとした西京焼きの完成だ。

 専用シーズニング市場は、コロナ前と比較して拡大しているが、現状主婦層の購入率は約3人に1人。市場拡大の余地は依然として大きい。ハウス食品は「おかづまみの逸品」の訴求でこの市場の開拓に挑む。

左から「おかづまみの逸品」〈手羽先の山賊焼き〉〈魚の西京焼き〉〈鶏の南蛮漬け〉〈茄子の揚げびたし〉〈あんかけふろふき大根〉

 同社は手軽さを担保した多彩なメニューを各カテゴリーで提案。“驚きに満ちた、もっと自由なおうちごはん”の発想を起点に、内食の可能性を広げていく。