みそ汁との相性を熟考したワンランク上の味わい

 “だし”をきかせた食事を提案することで、毎日の健康づくりを応援する――。にんべんは9月1日、健康総合企業のタニタとタッグを組んだ新商品「タニタ食堂監修のだしパック」(冒頭写真)を発売し、伸長傾向が続くだしパック市場に打って出る。鰹節専門店ならではのだし本来の旨みにこだわり、おいしさと減塩を両立させた新機軸の商品で、市場のさらなる活性化を狙う。

 コロナ禍以降、市販用だしパック市場は、家庭での調理機会が増えたことや手軽に本格的な味わいが実現できる点などが支持され、右肩上がりで伸長している。特に、調味料不使用の「味無しタイプ」が好調だ。2021~2024年の3年間で、売れ筋価格のボリュームゾーンが500円以下から600円以下に上昇(日経POSデータより)しており、高付加価値品が消費者ニーズを掴んでいる。その一方、同社調べによると「味無しタイプ」は、日常的に料理をしている、年齢層が高いといったユーザー属性に偏りがあることが課題となっていた。

 こうした中、ユーザーの裾野拡大につなげようと、今回新たに投入する「タニタ食堂監修のだしパック」は、健康計測機器の製造・販売や「タニタ食堂」の運営で知られるタニタの知見を生かし、共同開発した。

 同商品のコンセプトは、“みそ汁に合うだしパック”。みそ汁との相性を熟考し、国内製造の鰹節といわし煮干し、北海道産昆布の3種の厳選だし素材を配合した。毎日の食事で手軽に“だし”を取り入れてもらうことを目的に、みそ汁に最適な香りと旨みを追求。「塩分を控えても満足感を味わえるよう、素材の味を一層引き立てるワンランク上の味わいを目指した」(同社)という。

 パッケージ裏面ではおいしく減塩できる調理のコツとみそ汁のレシピを紹介。タニタ食堂の管理栄養士によるレシピで、栄養バランスに配慮した減塩メニューを提案する。

 販促施策については、「タニタ食堂」店舗での同商品を使用したメニューの展開や試供品サンプリングなどを実施し、既存販売チャネルを生かした認知拡大を図る。また同じく「タニタ食堂」監修商品のパックみそを展開するマルコメとのコラボ企画も実施予定。「和食の日」(11月24日)や「朝食フェア」などのテーマに合わせて、小売店でのエンド展開を強化していく。

「つゆの素」テレビCM投下などで拡販につなげる

 今秋冬の家庭用新商品では、同商品を含め、全7アイテムを上市した。約20年ぶりに発売した炊き込みご飯の素「だしめしの素」は、鶏めしと帆立五目の二品で展開。直販事業や生協などで人気の商品を家庭用向けに仕立て直して提案するもので、炊き込みご飯の素の主な購買層である60代をメインターゲットに据えた。主要原料に国産食材を使用し、だしと食べ応えのある具材感にこだわった。米2合用の商品だが、調味料を加えることで3合用としてもアレンジできるレシピをパッケージ裏面で提案する。

「だしめしの素 鶏めし」「だしめしの素 帆立五目」(各200g)

 鍋つゆについては、既存のストレートパウチ「だし鍋つゆシリーズ」に新味として、「海鮮だし辛み鍋つゆ」を追加。今春発売の個食タイプ「一味唐辛子めんつゆ」など2品が、辛みに加え、旨みを感じられる味わいが支持され、想定を上回って好調に推移していることから、同アイテムを追加した。鰹節やさば、まぐろなどの五種の魚介の香りと旨みに、辛み成分を多く含む天鷹唐辛子を合わせた。具材の旨みが引き立つ、ピリッと刺激的な辛さが楽しめる鍋つゆだ。

「海鮮だし辛み鍋つゆ」(750g)

 そのほか食物アレルギー配慮調味料として、特定原材料等28品不使用の「食卓の和シリーズ」3品(つゆ・白だし・ぽん酢)も発売した。

 なお同社の今期(26年3月期)概況については、4~6月累計で、増収増益で推移している。売上構成比の約7割を占めるつゆ類は、数量ベースで前年同期比1.4%増、金額ベースで同4.9%増となった。

 一方、原材料高騰などを背景に6月2日出荷分より、つゆの素、たれ類、白だし類などの価格改定を実施。価格引き上げにより数量ベースの落ち込みが懸念されていることから、下期は主力のつゆの素を中心に、販促策に注力する。対象商品の購入レシートで銘柄米などが当たるキャンペーンを実施予定で、さらなる拡販につなげていく。また10~11月にかけては地上波(関東ローカル)でのテレビCMの投下を予定。「つゆの素」の拡販に加え、「にんべん」ブランドの認知拡大につながる内容を検討中だ。併せて、YouTube同社公式チャンネルや店舗内のデジタルサイネージ、ラジオ・新聞などへの広告投下も予定されている。

 鰹節やだしを楽しむ人々を広げていく活動「にんべんだしアンバサダー」(25年7月末現在の登録者数1261)との連動企画も継続する。他企業とのコラボ企画なども実施し、同活動を通してにんべんブランドの価値を高め、商品の拡売にもつなげる方針だ。同社は今秋冬も鰹節専門店として、鰹節・だしをあらゆるシーンでの活用を提案し、利用機会の拡大に注力していく。