高付加価値品への支持で「ゴールドシリーズ」が好調

 にんべんは今期、鰹節専門店ならではのだしにこだわった付加価値品の投入で、売り場の活性化を目指す。家庭用事業部の春夏商品施策では、和の香辛料とだしの旨味が際立つ個食タイプ「柚子こしょうめんつゆ」(税抜き210円)「一味唐辛子めんつゆ」(同、冒頭写真)を発売。好調なめん専用つゆに新アイテムを投入し、さらなる拡販を図る。

 同社の前期(25年3月期)概況については、価格改定の影響もあり、増収増益での着地を見込む。プレミアムライン「つゆの素ゴールドシリーズ」(白だし、つゆ)の販売実績が数量・金額ベースともに2ケタ伸長し、売り上げの底上げにつながった。同シリーズは、レギュラー品「つゆの素」と比較して、1.5倍のだし素材を使用した豊かな風味と上質な味わいが特徴の高付加価値商品。特に、めん専用つゆ「ストレートタイプ」3品(素麺・蕎麦・金ごま)が好調で、つゆ市場(同社調べ)がほぼ横ばいで推移する中、直近5カ年で販売実績の伸長率が3倍以上に成長。国内製造の鰹節、北海道産昆布、本醸造有機醤油といった厳選素材を使用し、だしの抽出方法にもこだわった本格志向のめん専用つゆで、プレミアムニーズをつかみ、量販店への配荷率も順調に拡大している。 

 この「ストレートタイプ」の好調を受け、3月1日には、「柚子こしょうめんつゆ」「一味唐辛子めんつゆ」を発売。1人前50g、3袋入りの個食タイプだ。液体つゆ市場(インテージ調べ)が下降傾向にある中、個食つゆは簡便性に加え、夏日の長期化なども影響し、堅調に推移している。そこでバリエーションを増やし、個食つゆの主要客層である20~40代に人気の辛味フレーバーを投入することで、若年層の需要獲得を図る。

「柚子こしょうめんつゆ」は、九州製造柚子こしょうを使用した香り爽やかなやさしい辛さ。「一味唐辛子めんつゆ」は、辛み成分を多く含む天鷹唐辛子のピリッとした刺激的な辛さが特徴だ。2品とも鰹節だしと相性の良い、和の香辛料を使用しており、単に辛いだけではない、だしが効いた奥行きのある味に仕上げた。

 発売以降、各店舗への配荷導入率はスーパー、ドラッグストアなどを中心に順調に推移している。その要因を、町田忠男執行役員経営企画部長は、「個食つゆ市場が堅調に推移する中、小売店では味のバリエーションの広がりが求められている。他社のフレーバーにはない、和の香辛料を使用している点が支持されているようだ」と分析する。商品パッケージ裏面には、レンジアップで調理できる冷凍めんとのレシピを掲載。暑い夏に火を使わずに作れる簡単料理を訴求し、簡便ニーズにも対応する。蕎麦や素麺のめんつゆとして、水またはお湯で薄めてめん料理のつけ汁としても使用できる。 

鰹節専門店こだわりの「浅漬けの素」で市場を活性化

 祖業である鰹節専門店こだわりの3種のだし素材を使ったアイテムとして同日、「だし浅漬けの素」(300mL、同250円)も発売した。鰹節、さば節、昆布を使用し、素材の味わいがより引き立つ仕様に仕上げた。浅漬けの素市場(富士経済調べ)は、野菜高騰の影響などを要因に縮小傾向で推移。その一方で、「浅漬け レシピ」のインターネット検索件数が過去5年間で1.5倍に増えるなど手作りニーズが高まっており、新商品の投入で市場の活性化を目指す。

「だし浅漬けの素」(300mL)

 だしの香りには食欲を増進させ、だしのうま味にはどんな素材にも合わせやすく、奥行きのあるワンランク上の味わいに仕上げる効果があるという。生野菜の浅漬け以外にも、焼いた野菜やゆで卵の漬け込み液として使用するなど、様々なアレンジレシピを提案する。またサラダや肉料理など洋風メニューへの使い方訴求も予定しており、生鮮品など関連商品との同時購買を促進させる売り場提案を実施していく。

 広告販促施策としては、YouTube同社公式チャンネルや店舗内のデジタルサイネージ、ラジオ・新聞などへの広告投下が予定されている。また同社が推進中の鰹節やだしを楽しむ人々を広げていく活動「にんべんだしアンバサダー」(25年2月末現在の登録者数1189人)との連動企画も継続する。14年にスタートした同プロジェクトは、交流を深めるファンミーティングや商品モニター、投稿キャンペーンなどが主な活動内容。カルビーやひかり味噌といった他社と実施したコラボ企画も奏功し、登録者数は21年のリニューアル時と比較して、約2倍に拡大している。上期は、新商品サンプリングやだしを使った夏向けレシピの投稿を呼びかけるキャンペーンなどを計画中だ。鰹節やだしを楽しむ人の輪を広げていくことで、にんべんブランドの価値を高め、商品の拡売にもつなげる狙い。

 同社は今春、だしにこだわる新商品3品を発売し、他社商品にはない独自性を打ち出すことで定番導入を図り、より多くのユーザー獲得を目指す構えだ。