機能派、素材派二つのニーズに自然素材で応える

 高齢夫婦や単身世帯の増加から、ペットを家族同様に慈しむヒューマニゼーションが顕著となった。このトレンドをしっかり捉え、ユニ・チャームは2025年春のペットケアに新機軸の新商品を相次いで打ち出す。特に食の分野では、ペットは家族同然との想いから、おいしいものを食べさせたい、健康にいいものを食べさせたいというニーズが一段と強まり、高付加価値商品の開発は必至。それは商品単価を引き上げ、新需要を創出し、ユニ・チャームが目指す業界総資産拡大に貢献するものともなっている。

 犬猫の飼育頭数、給餌量(使用量)の歴年変化も、商品単価拡大の必然性を示唆する。犬は13年に871万4000頭であったものが、10年後の23年は684万4000頭と200万頭近く減少(日本ペットフード協会の調べ)。小型犬化も進み使用量減のダブルパンチ。猫の飼育頭数は微増で推移、だが使用量は横ばいという課題を抱えている。

 ユニ・チャームが市場の拡大成長を見込んでいるのが、まずキャットフードの付加価値戦略。猫のフードは、ドライ、ウェットの主食、副食(おやつなど)の3タイプがあるが、ドライ市場は健康とおいしさの二極化が進んでいる。実際ユニ・チャームのこれまでの調べでは、スタンダードと呼ぶ価格志向の商品は伸び悩みを見せているのに対し、おいしさ訴求のグルメ、健康機能食のプレミアムは伸長。グルメの22年売り上げ326億円は、翌23年385億円と118%の伸びを示し、プレミアムの22年373億円は、460億円と123%の伸びを見せた。26年には、23年比でグルメ113%、健康機能食のプレミアムは、実に135%の伸びを見せると予測している。

 この健康志向のユーザー層のニーズは、二つに分かれる。下部尿路、腎臓、皮膚被毛などの健康維持の機能を求める機能派。今一つは、現状健康に不安はないので、栄養がしっかり取れて健康に良いこだわりの食材を求める素材派。ユニ・チャームの調べでは、この2つのニーズの人数構成比では、機能派が77%と圧倒的にボリュームが大きい。だが素材ニーズも22年を100とすると24年は128%の伸びを見せている。ボリュームの機能派、伸長率の素材派と二つのニーズをしっかり押さえておかねばならないことがわかる。

 猫の毎日の健康をサポートするブランド、「AllWell(オールウェル)」。ここですでに発売され好評を得ているのが、猫の食事の吐き戻しを軽減する技術。猫は噛まずに食べることも多いので、ドライフードの粒がお腹で水を吸って膨らみこれが吐き戻しの原因の一つとなる。ユニ・チャームは独自の食物繊維配合技術を使い、粒がお腹の中で素早く崩れて消化、食事の吐き戻し軽減※を実現した。

※軽減効果は猫によって個体差があります。病気に由来する嘔吐に効果があるものではありません

 今春発売される新商品は、10種の自然素材を粒にブレンド。肉は、チキン・ポーク・ビーフの3種。魚は、まぐろ・かつお・サーモンの3種。野菜は、かぼちゃ・にんじん・トマトの3種、これに大豆一種を加え、計10種類の素材を配合した商品を市場に送り出す。

シリーズ既存品(左)の機能に加え、自然素材を訴求する「AllWell 10種の自然素材」(右)

プレミアム、グルメの売り場構成比引き上げを提案

 粒、パッケージにも工夫を凝らした。粒設計はうまみ成分がしっかりと詰まるものに。現行品の粒と比較して、新商品では特殊な形状でうまみ成分を染み込みやすくしたのだ。パッケージデザインは、特徴を最大限伝えるため、全体を白を基調として自然をアピール。10種の自然素材の商品の特徴をコピーで明示。さらに10種の素材のイラストを半円で描くことで、栄養バランスの良さを表現している。

 オールウェル10種の自然素材は、機能派には、食事の吐き戻しの解決とともに、毎日の健康サポートを提供。素材派には、食事の吐き戻しの解決とともに、自然素材にこだわった食事を与えたいというニーズにもろに合致する商品となっている。

 商品のラインアップは、室内猫用(サーモン&ツナ味)、室内猫用(チキン味)、避妊去勢、10歳以上用、15歳以上用の合計5タイプの全てにお試し、小袋、中袋の3容量を用意し、合計15アイテムを発売する。3月の発売に合わせてオールウェル全体でテレビCM、デジタル広告、サンプリングを大々的に計画、一気に消費者に認知拡大を図る仕掛けも施す。

 同時並行で進めるのが、流通企業に向けた中長期の売り場提案。過去40%程度あったスタンダードの売り場構成比は、現状30%弱に縮小。これを30年には、スタンダード20%、代わってプレミアム、ベスト(グルメ)それぞれの構成比を40%に引き上げようというもの。その中では、素材派、機能派の商品群が確固たる地位を築いていることも目的としている。

食事で愛犬を喜ばせるおかず仕立てを発売

 ユニ・チャームは、ドッグフードでも今春新機軸の新商品を打ち出す。猫同様、犬もより家族に近い存在になっている。愛犬への想いは、食事やおやつで喜ばせたい「おいしさニーズ」、自分の好きなおかず、おやつを与えたい「擬人化ニーズ」、高くても品質のよい、安心安全なものを選びたい「高品質ニーズ」と三つ。だがここで共通するポイントは、「食事でもっと愛犬を喜ばせたい」ということだろう。

 実際、飼育頭数減でドッグフード市場も縮小傾向にある中で、犬のウェットフードの使用率は拡大を示した。理由は「愛犬を食事で喜ばせたい」ニーズに対応したからだ。使用者は使用のきっかけを「喜んで食べてくれるし、ごはんへの食いつきが違う」と語る。だがウェットフードトータルの市場規模では縮小傾向も出てきた。形状が缶詰、トレイ、パウチなどあり、ゴミ捨てが大変、1回で使い切れないなどの問題が出ているからだ。その中で継続して伸びているパウチタイプは、この形状の不満が少なくユーザーの支持を得ている。

 今春発売の「グラン・デリ」の新商品は、見た目もおいしさもまるで人間のおかずのような仕立て。「食事で愛犬を喜ばせたい」というこだわりをパウチに凝縮した。肉じゃが、ポトフ、そぼろ煮仕立ての3品を開発。肉じゃが仕立ては、国産鶏肉、じゃがいも、にんじん、インゲンを使用。ポトフ仕立ては、国産鶏肉、コーン、にんじん、インゲン、ブロッコリー、キャベツが。そぼろ煮仕立ては、国産鶏肉、さつまいも、インゲンを使用している。

 見た目のおいしさを打ち出すため、中身の素材の形状にもこだわり、開発には苦労を重ねた。肉じゃがとポトフに使われる肉は食べ応え、おいしさ感を出すため形をしっかりと残し、そぼろ煮は見た目もそぼろ煮そのものに。種類豊富な野菜をメニューに応じて使用することで人間が普段食べる食事感を打ち出した。

 その苦労は商品評価にも反映され、食べ具合と見た目のおいしさ感が高評価。総合評価88%の高得点を獲得した。評価理由は、(愛犬が)近づくと唸るぐらい夢中で食べていました。素材がゴロゴロ入って、人のごはんみたい。鶏肉が大きくて食べ応えありそう。野菜も見てわかる位の大きさでおいしそうなど、いずれも狙い通りの評価を得ている。

 パッケージもグラン・デリ肉じゃが仕立てのタイトルに、肉じゃがを大きく描き、犬の好きなおかずをしっかり伝達。皿に盛られた肉じゃが仕立ては人間のおかず、品質感を表現。「ワンちゃんのおいしいおかず」のコピーで犬専用品であることを知らしめている。

 ユニ・チャームは今回発売するグラン・デリおかず仕立てパウチの他に、グラン・デリパウチでは、国産ささみ入りパウチ、使い切り新鮮パウチ、二つの味わい、無添加、総合栄養食をすでに発売している。共通のキーワードが国産鶏肉100%使用。この国産がおいしさ感と安心感の伝達に重要なキーワードとユニ・チャームでは捉えている。この国産をベースにパウチ、小容量の使い切りパウチ、これと水さえ与えておけば栄養に問題ないというウェットフードの総合栄養食が順調な伸びを見せている。

ヒューマニゼーション化に対応したおかず仕立てパウチ「グラン・デリ」〈肉じゃが仕立て〉〈ポトフ仕立て〉〈そぼろ煮仕立て〉

 犬ウェット市場の成長には、まずパウチの拡大が欠かせない。実際ユニ・チャームでは、25年から30年の予測でパウチの市場規模は102%の伸長を見せ、その中でもグラン・デリおかず仕立てのような擬人化ニーズを捉えたパウチは、380%もの伸びになると見ている。

 犬ウェット市場のさらなる活性化に向け、ユニ・チャームはパウチにおいて、総合栄養食、国産、使い切り、マルチパックの四つの潮流への対応。さらに擬人化ニーズ、すなわち食のヒューマニゼーションへの対応の必要性を流通企業に訴求。それが買い上げ点数、単価拡大につながるとの共通認識の下、あるべき売り場の実現を図っていく方針だ。