様々なコストが高騰する昨今、店舗経営における固定費の見直しがかつてないほど重要な課題となっている。スーパー、ドラッグストア、その他業態問わず、テナントで出店すれば毎月必ず発生する賃料。ここへの対応が企業の財務戦略を大きく左右する時代を迎えているのだ。賃料交渉の専門コンサルティングを展開するギブ・スパイラル・ジャパンは、2010年設立と同業の中では後発ながら、独自のAIを駆使した交渉で今や業界首位を視界に捉える。店舗賃料にメスを入れる際のポイントとは? 同社のトップに取材した。
曖昧な賃料相場に〝基準〟をつくる
「経営環境が厳しさを増す今こそ、賃料の適正化に取り組むべきです」とギブ・スパイラル・ジャパンの鷹尾豪社長(冒頭写真)は力を込める。
バブル崩壊後、国内の賃料水準は総じて下降線をたどっている。コロナ禍を経て足元、都心のごく一部では賃料が大きく高騰しているエリアもあるものの、日本全体における賃料の下落基調は継続している。その最大の要因は人口減少だ。商圏内の人口が減っていけば、店舗のポテンシャルは当然目減りする。物件価値は継続して下がる傾向にあり、つまり今が賃料の減額交渉の好機とも言えるのだ。
「民法上、賃料は経済情勢の変動に合わせてメンテナンスすべきものと考えられています。あらゆるコストが上がる環境下だからこそ、賃料は見直す余地があるコストなのです」と鷹尾社長は強調。店舗運営の3大コストと言えば、仕入れ費用、人件費、賃料だが、その中で固定費である賃料が削減できれば企業の財務体質改善にも直結する。
とはいえ、賃料の交渉は利害衝突の関係にある2者が合意形成をなす場。話はそう簡単にまとまらない。店舗の開発担当者にとってはオーナーと膝を突き合わせなくてはならない大仕事でもある。だが、実施の機会は数年に一度のため、企業としては人員を張りつけておくことも難しい。
そこで頼りになるのが専門のコンサルタントだ。賃料コンサルの業界には目下300社がひしめくと言われるが、中でもギブ・スパイラル・ジャパンには他社にはない圧倒的な強みがある。
それがAIを活用した高精度の賃料シミュレーションだ。そもそも賃料とは、入居する企業の規模やタイミング、貸主の特性などによって、同じ建物内でも金額に幅が生じる。ゆえに従来、「明確な基準がないもの」「曖昧な相場に頼らざるを得ないもの」とされてきた。ギブ・スパイラル・ジャパンはそうした状況に風穴を開けた。これまで蓄積してきたビッグデータをベースに、AIでロジックを組み、個別案件ごとに最適な賃料をはじき出す仕組みを作り上げたのだ。

このほどバージョンアップを経たAI「Geniee(ジーニー)2.0」は言語系にも対応し、対話形式で賃料の分析を行える。シミュレーションした金額と実際の合意額との誤差は平均1.5%以内と精度の高さも折り紙付きだ。
ジーニー2.0は今年2月に特許を取得。今後も日々の業務の中でデータを蓄積しながら精度向上を図るとともに、近い将来には店舗経営者にアカウントを付与し、ツールとして自由に使えるようにするバージョンアップも計画している。
一番大切なのは貸主と長く良い関係を築くこと
ただ、やはりいざ交渉となると、「貸主との関係が悪くなるのでは」と不安がる店舗経営者も少なくないはずだ。ギブ・スパイラル・ジャパンはそんなクライアントの懸念も熟知、「何より貸主との関係を保つことを重視している」と鷹尾社長は語る。
同社は交渉に入る前に必ず貸主と会い、その人となりや現状を分析するところから始める。具体的な分析項目は5つ。すなわち、①決裁権(貸主の権限)、②代替案(物件の引き合い状況)、③ファン度合い(借主に対する愛着)、④スタンス(協調性の度合い)、⑤物件収支(利回りの状況)だ。これらを点数化した指標を基に、「貸主様との関係性を科学し、最適な提案を差し上げることで納得を引き出す」(鷹尾社長)。事実、トラブルを起こさない仕組みを構築し、それが信頼につながり、同じクライアントから再び依頼を受けるリピート率は実に70%を超えるという。
鷹尾社長はまた、このようにも指摘する。「クライアントの借主様にはよく、『賃料の交渉は貸主様のためでもある』とお話しさせていただきます。例えば、ある物件を2年半だけ満額で貸した場合と、16%減額して3年間貸した場合、貸主様が受け取る金額はほぼ変わらない。貸主様にとって月間賃料はいわば客単価。契約年数こそが客数なのです。店舗経営をされている方々なら客数こそ大切だとわかるはず。適正な賃料で長く良好な関係を築くことがお互いにとって一番重要なことなのです」
ギブ・スパイラル・ジャパンは今年5月に大阪・梅田のJPタワーに新オフィスを構えた。同社は今後も店舗経営者の良きパートナーとして、共に成長の可能性を切り拓き続ける。




【会社概要】
会社名:株式会社ギブ・スパイラル・ジャパン
所在地:大阪市北区梅田3丁目(JPタワー大阪)
代表者:鷹尾豪
設立:2010年5月
資本金等:1億円
事業内容:賃貸借アドバイザリー事業/交渉内製化支援コンサルティング事業/教育研修並びに人材育成支援コンサルティングなど
URL:https://www.give-spiral.co.jp/