1995年に日本初のカロリーゼロ甘味料として発売されたサラヤの「ラカントS」。甘味料の定番棚に陳列されており、近年では、20代から60代まで幅広い生活者から高い支持を得ている。「ラカントS」は、ウリ科の植物「羅漢果(ラカンカ)」から抽出した高純度エキス(サラヤ特許成分)とトウモロコシの発酵から得られる天然甘味成分 「エリスリトール」の二つの素材が原料。安全性にこだわった100%植物由来の甘味料として砂糖と置き換えれば簡単にカロリーと糖質をカットできる。羅漢果は英名「モンクフルーツ」と呼ばれ、今では日本だけではなく、米国やカナダ、アジア各国でも販売され、世界中に「ラカントS」の愛用者が着実に広がっている。「ラカントS」が開発・商品化され、一般生活者に広く普及する道程を広報担当者に聞いた。

新しい機能性の追加でラカントユーザー層を拡大

 サラヤは、創業から「社会課題をビジネスを通じて解決する」ことを事業の柱としてきた。そして、高度経済成長期に日本人の生活が豊かになるのに伴い急増し、社会問題化していった糖尿病に着目し「ラカントS」の開発をスタート。しかし、砂糖に代わる代替甘味料の開発を決めたものの、当時、日本に植物性でカロリーゼロの甘味料は存在せず、化学合成の人工甘味料しかなかった。そういった全くゼロの状態から研究者が植物由来の甘味成分を探す中で出会ったのが、数百年前から漢方原料として使われてきた羅漢果だった。ただ、羅漢果は長年の食経験はあるものの科学的なデータが無く、さらに、その希少性から中国政府によって重点保護植物として海外への持ち出しが禁止されていた。

 そこでサラヤは、羅漢果の原産地の桂林に直接出向き、現地の大学や中国の行政関係者の協力のもと研究を開始した。廣岡竜也広報宣伝統括部長は、「羅漢果は、昼夜寒暖の差が大きく、日当たりと水はけのよい場所が栽培最適地。そのため、畑は山の急斜面に作られる。しかも、羅漢果は、虫による受粉が難しいため、全て人の手による人工授粉。そういった栽培方法の確立や果実からの甘味成分の抽出、そして甘味成分の科学的な構造解明など、発表まで3年ほどかかった」と当時の研究者の苦労を述べた。現在も毎年、春に契約農家が畑に苗を植え、人の手で一つひとつ花粉を付け、秋頃に手作業で丁寧に完熟した果実のみを収穫する。収穫された実は、工場で再度、傷や汚れ、虫食いなどがないか確認され抽出工程に進む。さらに、その安全性が担保された羅漢果の実から抽出される甘味成分はわずか1%しかない。

 商品化までの工程は、一見すると非効率とも思える作業だが、サラヤは、食品の安全・安心には代えられないという想いから、契約農家による栽培から収穫、自社工場での抽出、製造まで一貫した管理体制を構築している。近年、紅麹の食品添加物の安全性について生活者の間で信頼性が揺らいだが、「ラカントS」は、類似品が出始めた時に、厚生労働省が羅漢果抽出物の安全基準を定めるため「ラカントS」の羅漢果抽出物を試験対象として検査。それを羅漢果抽出物の安全基準として設けた経緯があり、その安全性は国も認めている。

手作業が必要な羅漢果の栽培は春から秋まで時間と手間がかかる

新商品の発売を通じて多様化するニーズに対応

「ラカントS」は、発売当初、日本初のカロリーゼロ甘味料として人気を集めたが、その後に大手メーカーが追随した安価な人工甘味料の登場により発売が低迷。その中でサラヤはメインの販売先を一般客から、開発の原点となった糖尿病患者と予備群向けに変更した。そして患者や予備群だけでなく、病院や管理栄養士に商品の価値を丁寧に説明。学術論文や臨床データを整え、糖尿病指導の際に紹介してもらうことで、地道に地盤を固めていった。

 廣岡部長は、「陽の目を見るようになったのはインターネットの普及によって、誰もが人工甘味料に関する論文などを見られるようになってから。そういった状況下で健康意識の高い人たちは、医師や栄養管理士が推奨した『ラカントS』を手にするようになった」と転換点となった経緯を語った。さらに近年、健康的に糖質を摂取する美容・ダイエット層の中で「ラカントS」の人気が拡大。コロナ禍の行動制限がされる中、「コロナ太り」対策として、インフルエンサーやSNSを活用したプロモーションを展開し、20代、30代の女性にも購入層が一気に広がった。

 またサラヤは極端な糖質制限ではなく、「ラカントS」を活用した簡単かつ適切な糖質コントロールを提唱している。そうした中で「おいしく、楽しく食べて、健康に」を目的にしたロカボ商品の考えに賛同し、「食・楽・健康協会」に参画。「ラカントS」にもロカボマークを付け、健康的な糖質管理を推奨している。

 近年の多様化する健康志向を受け、今年からラカントシリーズのラインアップを拡大。健康意識の高いコアユーザーに向け、新機能を追加した機能性表示食品「ラカント アルロースブレンド」(100g)も発売した。また「腸活ニーズ」に応えるため、新たにラカントブランド初の腸活シロップ「ラカント フローラビオ」(265g、機能性表示食品)を投入。話題の機能性関与成分の「イヌリン」(食物繊維)が腸内のビフィズス菌を増やし、腸内フローラを良好にし、食後血糖値の上昇をゆるやかにするW機能を持つ商品だ。

左から機能性表示食品「ラカント アルロースブレンド」、腸活シロップ「ラカント フローラビオ」(※スーパーマケット向けパッケージ)

 サラヤは、100%植物由来でカロリーゼロの甘味料「ラカントS」を軸に、日本だけでなく世界の健康問題に対し、「ビジネスで社会課題を解決する」商品群を広げていく方針だ。