ロボット学の第一人者である大阪大学大学院の石黒浩教授が2021年に創業したAVITAは、アバターや生成AIの技術力を駆使して人手不足をはじめとする社会課題の解決に取り組んでいる。

 中でも自社開発のアバターを活用したリモート接客サービス「AVACOM」は、コンビニ大手のローソン(冒頭写真)が複数店舗で導入するほか、スーパーや家電量販店などで活用が広がり、アバター店員がセルフレジのサポート、商品やサービスの案内などで活躍中だ。オペレーターは遠隔でアバターとして接客するため、自分の顔を出す必要がない上、声も変えられるので年齢や性別を超えて働くことができる。また、少人数で複数拠点を対応することも可能になるため、コスト削減をはじめ、多様な働き方や人手不足の解消にもつながる。

 AVACOMのアバター接客はオンライン保険相談や銀行のウェブサイト、ECサイトの問い合わせ窓口などにも導入され、それぞれコンバージョン率や売り上げアップに貢献するなど多くの実績をあげている。特に保険の相談では病歴や収入などセンシティブな内容を含むことから、相手の顔が見えない方が話しやすいという人が多く、いち早く導入した業界最大級の保険選びサイト「保険市場」ではオンライン上の相談をほぼアバターに切り替えている。

 AVITA創業者の一人である西口昇吾取締役副社長COOは、「AVACOMの導入事例数100のうち小売業は15%ほどで、今後はもっと高めていきたい。セルフレジのサポートをはじめ、商品販促ではリテールメディアとは違った切り口での展開も考えていく。アバターを相手役にしたロープレ支援サービス『アバトレ』を通じて、外国人従業員など多様化する働き手の教育や研修の面でも貢献できる」と力を込める。

 今後は移動式ロボットとアバターを組み合わせることで、動きながら販売や案内もできるよう、実証実験を進めている。ロボットとの融合が実現すれば、アバター接客の可能性はさらに広がりそうだ。

「アバターの技術は日本が進んでいるので、海外の企業も非常に欲している。このビジネスを世界に広げて日本に還元する仕組みをつくることができれば、日本の人手不足を遠隔操作で海外の人材に補ってもらうことなども可能になる」と西口副社長は事業領域の拡大に自信を見せる。

「アバターで人類を進化させる」というミッションを掲げるAVITAは、アバター店員で小売業の可能性を広げていく構えだ。

AVITA創業者の一人である西口昇吾取締役副社長COO