「カゴメ トマトジュース」の出荷数が年間1000万ケースに迫る勢い
幅広い世代にカゴメの野菜飲料が支持を広げている。2023年の野菜飲料市場は横ばいで推移しているが、その中で「カゴメ トマトジュース」は、前年比123%と市場の伸びを上回り、シェアも60%を超えるまでに拡大。その結果、トマトジュース市場は同116%と急伸長している。
背景には、同商品に含まれる「リコピン」と「GABA」の機能性をパッケージに表示できるようになったことがある。一つ目の「リコピン」には血中HDL(善玉)コレステロールを増やす機能が、後者の「GABA」には血圧が高めの人の血圧を下げる機能があることが、それぞれ報告されている。これらの機能に関心の高い40〜60代の購入が増加。またSNSを中心にリコピンと美容に関する話題が拡散し、10〜30代の購入が一気に増えた。
それに加え、前年比2倍に価格が高騰した生鮮トマトの代わりに買われる機会も多くなっている。カゴメマーケティング本部飲料企画部の西村晋介部長は「出荷数は既存ユーザーの拡大と新規ユーザーの獲得で年間1000万㌜に迫る勢いで伸長し過去最高を記録した」と話す。
実際に週に1回以上飲用するヘビー層の年間購入量は19年の17Lから23年には27Lへ大幅に増加している。カゴメのトマトジュースは、「トマトだけにこだわる」「余計な味がしない」というカゴメの商品設計が「お客様の支持継続につながっている」(西村部長)と見ている。
一方でカゴメのにんじんジュースは、92年の「キャロット100」がヒット商品となり大ブームを起こすなど長い歴史を持つが、トマトに含まれるリコピンは価値が広く浸透しているのに比べ、にんじんに含まれるβ-カロテンはその価値の認知がまだ広がっていないのが実情だ。
無菌充填技術の採用でにんじん100%を実現
そこで、カゴメは今年3月、野菜の健康を凝縮した春夏新商品「カゴメ野菜生活100 グリーンサラダ」と「同 レモンサラダ」の2商品に加え、「カゴメにんじんジュース 高β-カロテン」の合計3品を発売。野菜飲料市場のさらなる拡大を図る。
「グリーンサラダ」は、葉野菜のうちスーパーリーフベジを30%以上使用したほか、厚生労働省が推奨する1日に摂取する野菜摂取量(350g)の約3分の1の野菜を使用。味については、爽やかな白ぶどうの味わいをメインに洋なしの風味豊かな甘みとライムのすっきりとした香味を合わせることで、飲み飽きない味わいに仕立てた。
「レモンサラダ」は、皮ごと搾ったレモン原料を使うことで、爽やかな香りでキレのある味わいを実現。発酵技術を用いた、にんじん原料を使用することで「カゴメ野菜生活100 オリジナル」に比べて糖質を約3割削減した。使用する野菜は175gで、厚労省が推奨する1日の摂取量の約2分の1を摂取できる。西村部長は、「レモンサラダは甘くない味わいが非常に好評で、唐揚げなどの揚げ物との相性が良く、野菜飲料全体の拡大に貢献している」と手応えを口にする。
「にんじんジュース 高β-カロテン」は、主原料に雑味が少なく、甘くて濃い味のニュージーランド産にんじんを採用。雑味を低減させる「ベジタブル・リファイニング製法」ですっきりした味わいに仕立てた。
また無菌充填技術を採用したことで、従来は賞味期限保持のために使用していたレモンが不要となり、にんじん100%の野菜飲料を実現している。西村部長は「『にんじんってこんなに甘いんですね』というお声を多数いただき、自然な甘さをご評価いただいた」と自信を見せる。
プロモーションでは、「カゴメ野菜生活100」でバンド「緑黄色社会」をイメージキャラクターに起用。新メッセージ「朝を味方に。」をテーマにテレビCMを展開している。「にんじんジュース 高β-カロテン」については、「にんじん〝ヒーロー化〟戦略」を打ち出し、にんじんに含まれているβ-カロテンの価値を訴求していく。
現在、β-カロテンの付加価値の認知が高まる兆しが見えつつある。SNSを中心にβ-カロテンの話題が拡散されており、ある通販サイトでは美容訴求の結果、昨年まで発売していたカゴメの「高β-カロテンにんじんジュース」の売り上げが2倍に拡大したのだ。西村部長は「β-カロテンが持つ健康や美容の価値を積極的に発信し、トマトジュースと同様に、野菜不足を解消する手段として朝にんじんジュースを飲む習慣を確立したい」と力を込める。カゴメは「にんじんジュース」の価値を訴求し、野菜飲料市場の活性化を図る構えだ。