IT機器の増加による管理業務の煩雑化、電気代高騰など小売業で対応を迫られる課題は多い。近年高まる一方の難題に対し、オムロン フィールドエンジニアリングでは、店舗価値の最大化に向けた「マネジメント・サービスソリューション」や、「脱炭素ソリューション」などを小売業向けに幅広く提案している。

効率的な店舗機器管理とコスト削減を実現

 ――御社の事業内容を教えてください。

 片本 当社はオムロンの保守サービス会社として1970年から事業を開始し、交通、鉄道などのインフラ機器の保守管理で培ってきたノウハウと技術力を生かし、現場の改善のみならず、管理・経営面の課題を解決するソリューションを提案しています。近年は大手の小売業を中心に実績を積み、店舗運営効率化への確かな効果を生み出しています。

 ――流通小売業へのサービス展開とはどういうものですか。

 片本 店舗運営の効率化を実現する「統合保守サービス」と、電気代削減や脱炭素化に向けた「太陽光発電システムの導入」の主に二つを展開しています。

 ――主力事業である保守サービスの強みは。

 片本 小売業の現場では、増加するIT機器・システムの利用・管理において、管理の煩雑化やIT管理者の不足など様々な課題を抱えています。このような中で当社は、すべてのベンダーの保守サービスをワンストップで提供できることが強みと特色となります。当社では、全国130拠点、1200名のエンジニアを抱え、24時間・365日、現場に駆け付ける保守サービスを提供しています。加えて、ロジスティクスやヘルプデスクなどの機能を持ち、機器・店舗運用管理をトータルでサポートすることができます。これらにより、店舗従業員・管理者の業務の効率化、IT管理者の負荷軽減にも貢献できると考えています。

 ――導入事例はありますか。

 片本 複数の小売業ですでに実績がありますが、一例としては、全国1万4500店舗超(23年現在)を展開するローソンさんで統合保守サービスを導入いただいております。2019年からIT機器の保守サービスを複数の既存ベンダーから一括で当社に移管。サービスメニューをすべて見直し、コスト削減と省力化を実行しています。

 ――複数の既存ベンダー対応から一括の保守サービスに切り替えるメリットはありますか。

 竹村 機械の保守サービスや修理をベンダーに任せきりになることで、高額な保守費となっている可能性や無駄なコストが発生していることがあります。例えば、駆け付け対応するほどベンダーの売り上げが上がるため、電話での操作説明で復旧できる障害であっても出動する。それに対し当社では、一つひとつの修理ごとの料金体系をしっかり提示することで、適正な保守コストの分析・管理を可能にします。また、対応件数、障害件数の削減によるトータルコスト削減にも努めています。

 ――他に導入メリットはありますか。

 竹村 管理工数の削減により、店舗従業員・本社従業員など関係者すべての負担を軽減します。各店舗・ベンダーの窓口、店舗IT機器の障害管理、資産管理をトータルで請け負うことで、本社・管理部門における問い合わせ対応・管理が不要となります。また当社は保守対応履歴をリアルタイムで確認できるウェブアプリケーションを用意しており、作業員の店舗到着、作業中、作業完了、また障害原因をリアルタイムで閲覧できます。全国の店舗状況をいつでも確認できるため、管理部門の安心にもつながります。さらに、当アプリを分析することで、店舗作業の業務効率化も実現しています。

 ――実際にどういった声が上がってきていますでしょうか。

 竹村 管理部門の担当者さんからは、「保守の現場作業、在庫管理、非効率な業務の改善など全国の店舗の状況がすぐに把握できるようになり、目的のひとつであった無駄の見直しもできた。実店舗へのサービス向上やさらなるコスト削減に向けて今後もアプリを活用していきたい」という声をいただいています。現在は、サービス導入時より定期的に実施している合同定例会を通じて、障害対応の可視化とデータ活用を推進し、データ分析とマニュアル改善による効率化にも取り組んでいます。

 ――これは多店舗展開する他の小売業にも適用できますね。

 片本 はい。コスト削減だけではなく、「IT管理者が不足している、従業員の負担を軽減させたい」という要望がより強くなっています。本業以外のシステムや機器の取り扱い・問い合わせは大きなストレスになります。スーパーマーケットやドラッグストア、飲食店など全国でチェーンストアを展開している小売業でも同様の課題を抱えています。当社が提供する統合保守サービスは、今後も増加が見込まれる店舗IT機器やシステム、それに伴い不足するIT管理者、店舗運営に必要な人材の確保の課題解決にお役立ちします。

電気代を下げながらクリーンな電力で再エネ比率を向上

 ――もう一つの基幹事業である脱炭素ソリューション関連の事業はどうですか。

 田渕 同事業では、店舗や倉庫の屋根などへの太陽光発電設置を提案しています。先の見通せない電気代の高騰に加え、近年頻発する大規模災害、そして脱炭素化への社会的要請などに対し、脱炭素ソリューションを提供。電気代の削減、温室効果ガス削減、再エネ比率向上など経営課題の解決を支援しています。

 ――太陽光発電の事業者は多い。御社グループの強みはどこにありますか。 

 田渕 一つめに、店舗から倉庫まで様々な規模に対応した脱炭素ソリューションを提供できることです。店舗向けにはパワコンや蓄電池、大型店舗や物流倉庫へは、メガソーラーや大型蓄電池を導入しています。二つ目は、現場診断から提案、設計・施工、運用と保守(O&M)に至るまでワンストップでサービスを提供できることです。前者の統合保守サービスでお伝えしたように、当社には万全の保守サービス体制が備わっているため、長期に渡り、発電のロスを最小化、安定した電力供給の支援が可能です。3つ目に、太陽光発電で発電した電力を最大限活用するシステムとしてオムロンの制御技術を用いて独自開発した「Smart‐EMS※クラウド」(※賢いエネルギーマネジメントシステム)を持っていることです。気候データなどとも連動しており、発電・蓄電を最適制御してエルギー効率の最大化を実現します。

 ――小売業の導入事例は。 

 田渕 皆さんが良く知っているスーパーマーケットやホームセンターなどで導入いただいています。そこでは太陽光発電と蓄電池の導入により、電気代の削減や脱炭素要請に応える再エネ比率の向上、災害時の冷凍庫の電源確保などに活用いただいています。

 ――導入方法はいかがでしょうか。

 田渕 自己資金での導入もありますが、初期投資費用ゼロで太陽光パネルを設置するPPA(電力販売契約)モデルでの提供が増えています。同時に蓄電池を併設し、Smart‐EMSクラウドを導入することで、安定・安価な電力供給、再エネ電力の最大活用を実現したいという要望も増えています。

 ――これらの御社が提供する小売業向けソリューションの提案を今後予定していますか。

 片本 2024年3月開催の展示会「リテールテックJAPAN2024」の東8ホールに出展し、小売業向けの課題解決提案に力を入れています。本記事内でご紹介した「マネジメント・サービスソリューション」と「脱炭素ソリューション」を始め、業務の効率化、省人化の加速、データを活用した業務のDXといった小売業の課題解決につながるソリューションを展示します。パネルやデモを用いて担当者から詳しく説明しますので是非、お立ち寄りください。

 ――最後に、今後も御社で小売業の課題解決のために提供したいことは。

 片本 当社が提案する「マネジメント・サービスソリューション」による店舗価値の最大化です。流通業界を取り巻く環境・課題は多様化しており、省力化に向けた業務プロセスの最適化、ESG対応など店舗の現場にかかわる経営課題も想定されます。私どもは、エンジニアであり、経営パートナーとして、管理・運用で得られるデータから店舗の課題を発見し、共に解決していきたいと考えています。

(冒頭写真右から、オムロン フィールドエンジニアリングのLSソリューション推進課長の片本清志、LSソリューション営業2課の竹村宇雅プロジェクトマネージャー、EMエンジSE1課長 田渕博史)


■ マネジメント・サービスソリューション
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