イオンは2月28日、イオンモールとイオンディライトを完全子会社化すると発表した。現状は両社ともイオンの連結子会社で東証プライム市場上場だ。直轄とすることでスケール拡大によるシナジー創出と効率化を図り、グループ全体の成長につなげる。

 現在イオンが58.16%の株式を保有するイオンモールについては、7月を効力発生日とする株式交換を行うことで合意した。株式交換比率は、契約締結日である4月上旬までをめどに決定する。

 完全子会社化により、イオンモールの持つ人材やノウハウをより柔軟にグループ全体に波及させていく考え。既存SCの価値向上のほか、今後、大型から近隣型までのマルチフォーマットをエリア特性に応じて展開していく際のシナジー効果などを期待する。同日開いた会見でイオンの吉田昭夫社長は、「イオンモールは特に海外で飲食比率・サービス比率の高いSCを運営してきた経験を持つ。今後国内でもそうした需要が高まる。SCがタウンセンターとしての役割を担う場面も増える。モールとの連携を深めることでエリアごとによりきめ細かな出店戦略・店舗戦略を策定できる」と完全子会社化の意義を語った。

イオンの吉田昭夫社長

 またスケールメリットの観点では、全体取引によるコスト最適化も見込む。什器・部品の発注、修繕工事などの集約はもちろん、販促やイベント企画の同時展開などの可能性も広がる。「仮に今モールで行っているリテールメディアを、イオンのSC全体で打ち出すことができれば、これもかなりのボリュームが効いてくる」とイオンモールの大野惠司社長は力を込める。

 ゆくゆくはイオンモールを核とした不動産バリューチェーンの垂直統合と、これによる新規事業の創出も可能になると見る。さらにはイオンのビッグデータをテナントの営業支援に活用することも検討していく意向だ。

イオンモールの大野惠司社長

 一方、イオンが57.41%を保有するイオンディライトについては、公開買付により完全子会社化する。1株当たり5400円、買付予定数は約2025万株、買付代金は約1094億円。公開買付の期間は3月3日~4月24日で、決済の開始日は5月2日を予定している。買付後、イオンディライトは上場廃止となる。

 イオンディライトはイオンの国内外のSCで空調の保守や清掃、警備などを担う。国内のファシリティマネジメント事業は拡大傾向にあるものの、人件費や原材料費高騰の影響を受けており、とりわけ人手不足が深刻な課題となっている。

 こうした状況に鑑み、イオンディライトは完全子会社化により、グループのファシリティ需要を集約、効率化と事業領域の拡大を両面で進めることで収益の拡大を目指す。投資余力を高めることでDXを活用し省人化にもつなげる。イオンディライトの濵田和成社長は「競争力を高めることで、将来的にはグループ外の顧客からの受注を増やす。ビジネスモデルそのものを変革していく」と意気込む。

イオンディライトの濵田和成社長

 今回の体制変更は、イオンがかねて指摘されてきた経営効率の悪さにメスを入れ、再成長への道筋を探るものといえる。吉田社長は「子会社が自主自立をもって成長する。この基本の考え方を変えるわけではない」と強調した上で、「今回の2社はグループSCのプラットフォーム(イオンモール)とインフラ(イオンディライト)を担う企業であり、よりリソースを傾け、成長を加速することが、グループ全体に与えるプラスの効果が大きいと考えた。効率的かつ効果的に成長を、次の投資につなげ、さらなる成長を生み出す好循環を作っていきたい」と期待を込めた。