楽天グループ(以下、楽天)は1月31日に「楽天新春カンファレンス2025」を開催し、三木谷浩史代表取締役会長兼社長が楽天市場出店者向けに講演を行った。
冒頭、三木谷氏は、膨大なデータを並列処理できるGPUによりAIの進化が加速すると指摘。今後は、汎用性の高い生成AIの普及に加えて、「何かを推薦したり調べたりするだけでなく、これからはAIが実際の取引までやってくれる時代になるかもしれない」とAIエージェントの可能性について語った。
また、「脳の細胞であるニューロンの数は860億個といわれている。それをつなぐシナプスは100兆。人間の脳は非常に複雑な構造になっていて、だからこそアイデアや創造性が出てくる。AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使いこなすことが重要だ」と強調。
楽天は昨年12月、新たな日本語LLM(大規模言語モデル)の「Rakuten AI 2.0」と、楽天初の小規模言語モデルの「Rakuten AI 2.0 mini」という2つのAIモデルを発表しており、近くオープンソースコミュニティ向けの新モデルも公開する予定だ。
楽天では3万人超がRakuten AI を使っており、毎日使っている社員も8000人を超えるという。そして、AI活用により、マーケティング、オペレーション、クライアントの三つの効率をそれぞれ20%アップさせる「トリプル20」を目標に掲げている。
楽天市場ではAIをユーザーの検索体験の向上などに活用しており、嗜好や季節など個人のニーズに合った検索結果を表示する。「たとえば同じ『ワンピース』という検索に対しても、冬と夏で違う結果を表示している。将来的には沖縄と北海道で検索結果を分けるなど、地域別の精度も高めていきたい」(三木谷会長兼社長)
また、出店者の店舗運営でも、AIにより商品画像の作成時間を10分から1分に短縮することで、新規商品登録などの時間を増やすことができているという。同様に、商品画像に対するフィードバックや大型セールの分析にAIを活用することで、広告パフォーマンスを向上したり、流通総額や販売件数の増加に寄与したりしている。
1月29日には、楽天モバイルから法人向け生成AIサービス「Rakuten AI for Business」をリリース。同サービスでは、文書や議事録の作成、情報収集などを通じて、企業の営業活動、事務作業、マーケティングをサポートする。
その肝煎りのモバイル事業は830万回線を突破。三木谷氏は、24年は20年と比べて物価全体が値上がりする中、通信費は例外的に下落したという統計データに触れて「楽天モバイルは家計に貢献した。特に若者のシェアが高い」と胸を張った。
楽天モバイルの契約者は楽天市場、楽天トラベル、楽天カードのいずれの利用金額も上昇傾向にあり、特に楽天市場では46.9%増と高い伸びを見せている。三木谷氏は「モバイルの成功は楽天グループの大きな挑戦。楽天エコシステムの発展が主目的だ」と、今後もモバイル事業を通じた楽天経済圏の拡大に意気込みを示した。