ドイツを拠点とする小売大手メトロと、同社の大株主であるEPグローバルコマース(EPGC)が2月5日、メトロ株式の上場廃止(デリスティング)で合意した。競争環境の変化や卸売事業の強化に注力するため、公開企業としての規制や負担を軽減する必要があると判断、長期的視点で戦略を実行できる環境を整えることが狙いだ。
チェコの投資家ダニエル・クレチンスキー氏が率いる投資会社EPGCは、メトロの大株主で約49.99%を保有している。残りの発行済み株式の全株取得を目指し、1株あたり5.33ユーロで買い付けを行う。メトロの経営陣も上場廃止を支持しており、今後も留任する。本社を引き続きデュッセルドルフに置くことや、共同決定(従業員代表制度)および団体交渉協約に関するコミットメントも盛り込まれている。
さらに、EPGCは上場廃止が完了してから18カ月の間、メトロがEPGCからの資金支援を利用し戦略的に必要な場合を除いて、支配契約を実施しないことを約束している。
メトロは引き続きグローバルなホールセール(卸売)ビジネスを中心に事業を展開し、投資や店舗・拠点の整理・拡充などを検討していく。従業員・顧客・サプライヤーなどの利害関係者に対しては、経営安定とサービス向上に向けた施策を順次進める計画。上場廃止のプロセスは現地の法令や取引所ルールに従って進められる。完了時期は未定だ。
メトロは食品・家庭用品を中心に、現金卸形態の卸売店や小売店舗を世界各国で展開してきた。かつては複合企業体として家電量販のメディア・マルクトやサターンなどもグループ傘下に収めていたが、グループ再編によりその事業を段階的に分離し、近年は卸売分野に注力している。
上場廃止の可能性は2023年ごろから各メディアで報道されていた。上場廃止後は、投資家への四半期業績報告や株価変動の影響を相対的に気にせず、必要に応じた組織再編や追加出資など大胆な手を打ちやすくなる。大株主であるEPGCが非上場化して直接コントロールすることで、必要な増資や財務支援を行いやすいメリットもある。リストラが完了すれば、再上場して株式売却益を得たり、同業他社とのM&Aを検討したりするなどの出口戦略を狙っていくのではないか。