昨年、業界人のみならず、一般消費者からも広く注目を集めたオーケーの銀座出店。直近11月にも関西進出を控え、ニュースに事欠かないオーケーだが、オープンからちょうど1年が経過した銀座店の勢いは今なお健在か。商圏分析を専門とする技研商事インターナショナル社の協力を得て、話題店舗のその後を追った。

品切れ頻出の大盛況

 東京・銀座の一等地に300円のかつ重――。昨年10月17日、オープン直後のオーケー銀座店(中央区)の店内には看板商品の弁当が山と積まれていた。複合商業施設「マロニエゲート銀座2」の地下1・2階に展開。売り場面積はしめて647坪。そもそも食品スーパーの銀座への出店が異例だが、同施設の上階にはユニクロ、GU、ダイソーらが出店しており、ハイブランドが立ち並ぶ銀座の中で商業施設そのものも異例の存在といえる。

 売り場は、地下1階が生鮮・加工食品・酒・和日配・医薬品、地下2階が洋日配・菓子・冷凍食品・飲料・惣菜の構成。中でも強力なマグネットとなっているのが惣菜売り場だ。「郊外ならいざ知らず、銀座まで来てオーケーに行くのか」という業界関係者の見方を裏切り、オープン当初は冒頭のかつ重やピザなどの人気商品にお客が殺到。いつ行っても品薄という状態がしばらく続いた。

 そんなオーケー銀座店もオープンから1年が経過した。客入りの現状はどうか。また、同店の出店が施設やエリアにどんな影響を与えたのか。データ分析によって検証してみた。

中高齢層の増加が顕著

 まず技研商事インターナショナルの地図情報システム「KDDI Location Analyzer」を用い、オーケー出店前後で施設の客数がどう変化したかを見てみよう。データの取得期間はオーケー銀座店のオープン1カ月半前から1年間だ。

 図1を見ると、オープン日を境に客入りが跳ね上がっているのが顕著にわかる。年末頃にオープン特需は1度落ち着いたようだが、その後も客数のベースは底上げされたまま今に至っている。同施設では4月にくら寿司のオープンもあったが、こちらはグラフ上ではほとんど変化が見られない。オーケーが圧倒的な集客力で施設全体の客数を引き上げ、そして今も維持していることは確かなようだ。

 では一体、増えたのはどんなお客か。抽出した人流データを年代別に整理し、オープンする前と後とで増加率を比べてみた。すると、全ての年代で増加が見られる中で、特に50~70代以上の中高齢層の増加率が高いことがわかった(図2)。今まで同施設のお客はファッション・雑貨に興味のある若者が中心だった。これがオーケーの出店後、全世代をまんべんなく取り込む形に変化。単にお客が増えるだけでなく、オーケーは施設の顧客構造自体をも一変させたのだ。

銀座店来訪者の「ペルソナ」とは

 さらにここからは技研商事インターナショナルの「MarketAnalyzerⓇ5」を用い、オーケー銀座店の顧客像を深掘りしてみよう。人流データから施設来訪者の居住地を推定。ここに公的統計や生活意識のデータを重ね合わせることで、技研商事インターナショナル独自※1の「仮想ペルソナ分析」を行った。その結果、来訪者の居住地特性は「都心のセレブ」「高級住宅街」「独身貴族」とはじき出された。つまりオーケー銀座店のお客は、1都3県の平均よりも収入が高く、ハイブランド志向で働き盛りな単身層、生活に余裕のあるファミリー層が多いと推察できる(図3)。

※1 特許第6943436号(来訪者の地域特性分析 システム及びそのプログラム)

 格安スーパー・オーケーのお客と聞いてイメージされる層とは異なるが、これはある意味同社の狙い通りだ。オーケーの二宮涼太郎社長は、銀座店出店の目的の一つとして、「この店からオーケーを知ってもらいたい」と語っていた。銀座店はこれまでオーケーを知らなかった層、知っていても来店していなかった層にオーケーの名を知らしめ、お客として取り込む役割を果たしたといえる。

 こうした立地でもやっていける、富裕層にも需要が見込めることを示したことで、今後はディベロッパーからの引き合いも増えそうだ。すでにオーケーは今年3月、東京都中央区で2店目となる日本橋久松町店を出店。ゆくゆくは関西でも都心エリアを狙っていく可能性もある。オーケーは銀座店を足がかりに、次の成長ステージへと着実に進みつつある。