テレビCMをフックに〝オレンジラベル〟を前面に

 鰹節専門店のにんべんは今秋冬、主力商品「つゆの素」発売60周年、「フレッシュパックソフト」発売55周年を記念し、周年施策を相次ぎ投入する。テレビCM、ウェブに加え、店頭を巻き込んだ大規模なプロモーションを展開、ロングセラー商品「つゆの素」と「フレッシュパックソフト」のさらなる育成に力を注ぐ。

 オレンジラベルでお馴染みの「つゆの素」の発売は、東京オリンピック開催の1964年にさかのぼる。当時、鰹節を使った液体調味料は珍しかったが、本物の鰹節だしが手軽に味わえることや、様々な料理に使える汎用性の高さから利用が普及し、家庭の定番調味料の一つに育った。味の決め手となる醬油はつゆとの相性が良い「本醸造JAS特級醤油」を採用し、鰹節の旨味を上品に引き出した。

 この秋からは「つゆの素」(1000mL、3倍濃厚)を前面に打ち出し、周年企画を盛り上げる。その核となる取り組みが9月から放映予定のテレビCMだ。制作にはクリエイティブディレクターの鹿毛康司氏を起用し、訴求力を一段と高める。制作チームは、にんべんの伝統ある世界観を守りつつも、テンポの良い音楽を活用した映像で視聴者の興味を喚起するコンテンツを制作。CMの終盤には「#にんべん15秒レシピ」の文言を大きく投影し、SNSやウェブ広告、メディア施策と連動させる仕掛けで話題を提供。紹介するレシピは、バニラアイスにつゆの素をかけた「#にんべんバニラ」など、簡単かつキャッチーなメニューを考案し、動画を見たユーザーがにんべんレシピで作った料理を自身のSNSに投稿することで生まれる〝バズ消費〟も狙っている。

 CM放映と同時に仕掛けるのが店頭での露出拡大だ。10月中旬から11月上旬までの期間を〝店頭フェイス月間〟と題し、取引先店舗のエンドに〝おかげさまで発売60周年〟の限定ロゴ付きの「つゆの素」を大量陳列する。これと連動し、10月11日~12月23日までの間、調理家電などが当たる「LINE&ハガキマストバイキャンペーン」を実施し、購入促進を図る。期間中売り場ではキャンペーン概要を記した「ネックリンガー」を添付するほか、専用POPなども配置し、店頭を盛り上げる予定だ。

〝あとのせ〟シリーズに新味種が登場

 鍋つゆ市場の活性化にも力を入れる。今秋冬の目玉として、昨年発売した小袋タイプの鍋つゆ「あとのせ鰹節が香る鍋つゆ」シリーズから新商品「しゃぶ鍋つゆ」(内容量・2人前×2回分)を9月1日に発売する。

 同シリーズは、「あさりの旨み」「魚介の旨み」「トマトの旨み」の3品を展開。にんべんのファンコミュニティ「にんべんだしアンバサダー」との共創商品で、鍋を食べる直前に鰹節をのせて食べる新しい鍋スタイルを提案している。素材本来の良さを生かすべく、調味液には鰹荒節、トッピングには本枯鰹節をそれぞれ採用し、深い味わいと芳醇な香りが同時に楽しめるのが魅力だ。

「あとのせ鰹節が香る鍋つゆ」シリーズ左から、新商品「しゃぶ鍋つゆ」「あさりの旨み」「魚介の旨み」「トマトの旨み」

 新商品「しゃぶ鍋つゆ」では、だしを強化。鰹節やさば節など、5種類の魚介の旨みを合わせた贅沢なだしを開発し、口当たりの良い上品な味わいに仕立てた。〆にはにんべんおすすめの「だし茶漬け」を提案、自慢のだしを存分にアピールする。

 にんべんの調査によると、昨今検索エンジンによる〝だし〟のボリュームは増加傾向にあり、だし訴求の商品も様々なカテゴリーで目立つという。商品サービス企画部の田中敢係長は「生活者のだしへの関心が高まっていることの表れ」と指摘。新商品をラインアップに加えることでカバー領域を拡大し、鍋つゆの新規ユーザーの獲得を図る。

 また同シリーズは、しゃぶ鍋つゆの発売に合わせて、従来品のパッケージも刷新。各フレーバーのアイコンを目に留まりやすい位置に移したほか、横幅を1cm縮め棚に並べやすくするなど改良を重ねた。

 このほか、ストレートタイプの鍋つゆ「鶏だし醤油鍋つゆ」「海鮮だし塩鍋つゆ」(各750g)もパッケージを刷新。あとのせシリーズ同様、だし感のあるシズル感や鰹節だしを訴求した内容に変更。創業の地である江戸・日本橋の様子を際立たせ、店頭のご当地コーナーでの同時陳列を打ち出す。


鍋つゆ「鶏だし醤油鍋つゆ」「海鮮だし塩鍋つゆ」(各750g)

 23年度の鍋つゆ市場は暖冬の影響でダウントレンドとなった。だが一方で、ご当地鍋つゆなど〝特別感のある鍋つゆ〟は年々拡大傾向にある。にんべんは「あとのせ鰹節が香る鍋つゆシリーズ」をフックに、新しい鍋の楽しみ方を訴求。鍋を囲むときに生まれる弾む会話や笑顔など、お客目線の付加価値を提案。鍋需要が高まる年末にかけてプロモーションと店頭で万全の備えを整えた。