子会社の餅製造技術を活用し、米粉原料の植物性チーズを開発
企業理念「私たちはお米を通じて、素晴らしい日本の水田・文化を守り、おいしさと幸せを創造して、人々の明るい食生活に貢献します」を掲げる、米卸最大手の神明は、米粉を使った商品群で様々な売り場への進出を果たしている。中でも米の加工技術の特性を生かした、新たな価値として今春に最も力を入れているのが、米粉を原料とした植物性チーズだ。国産米粉の調達量や価格は、乳製品に比べ長期で安定していることに加え、健康志向や環境意識の高まりもあって世界的にも植物性チーズの市場規模は拡大の一途だ。そこで消費量が年々減少している米業界の活性化を目的に、新たな植物性チーズの開発を長年行ってきた。
その結果、神明は米粉を主原料にした植物性のチーズ代替品の家庭用シュレッドタイプを昨年9月に発売、乳製品分野に進出し、米の利用の幅を広げている。餅スイーツなどの製造を手掛ける子会社のモチクリームジャパンの餅加工技術を活用し、チーズ同様の食感と発酵の旨味を味わえるように作り上げた。豆乳や豆腐でもない新機軸の米粉由来の植物性チーズとして話題となり、この半年で流通販路も一気に広がった。
価格を引き下げコレステロール99%オフを訴求、フーデックスジャパン、フードコンベンションで話題に
今年4月1日からは、新商品「お米のシュレッド 国産米使用」(100g)として刷新、乳製品売り場への提案をさらに強化する。 パッケージや商品名、中身などを改良し、価格、量目も見直した。 その理由を神明の鈴木章人取締役 執行役員営業本部長は「初めて乳製品売り場へ参入しましたが、多数の商品が並ぶ乳製品売り場の中では、一目で米粉を主原料にしたチーズであることが分かりにくく、お客様が商品の特徴をつかみにくかった」と説明する。
そこでパッケージには、黒を基調に大きな「米」の印を前面に入れ、乳製品売り場の中でもお客が一目で、他にはない米粉原料の植物性チーズだと分かるように改良。またパッケージの正面下には米粉を原料にした三つの特徴「ア レルギー特定原材料等(アレルゲ ンフリー)28品目不使用」「コレステロール99%オフ」(ゴーダチーズ比)「乳製品不使用」を大きく打ち出した。中でも今回から健康志向に対応したコレステロール 99%オフを強く訴求。さらに中 身の味にもよりこだわった商品に仕立てた。米粉の独自の癖やにおいを取り除きつつ、乳製品ではできない、もっちりとした食感を実現。見た目も茶色から白色に近づけ、シュレッドチーズと同様に細切りで使いやすくなった。パッケージや中身をニーズに合わせて早速改良したことを流通も高く評価し、神明でも乳製品売り場への提案をさらに強化していく。
また手軽に買いやすい量目と価格への見直しも実施した。鈴木本部長は、「容量は従来の200gから100gにサイズを半分に減らし、より使いやすい量目に変更。それに合わせて、希望売価設定は、従来の350円から198円(税抜)へと変え、店頭での価格訴求力を高めた。新規トライアルのお客様が気軽に購入できるようにハードルを下げました」と強調。輸入乳製品価格のさらなる上昇が予想される中で一層の価格優位性を乳製品売り場で打ち出す。
賞味期限は、製造日より90日から120日へと約1カ月の延長を実現。店舗での販売ロスやフードロスの削減にも取り組んでいる。「米粉原料なので乳製品のように発酵がないことから、さらに延長できると考えて実験を重ね改良を続けています」(鈴木本部長)。
販促では「お米のシュレッド 国産米使用」の発売に合わせて、ホームページを刷新。サラダのトッピングや植物性チーズフォンデュの幅広いレシピを提案。店頭も絡めた関連販売も予定している。
神明は、食物繊維を豊富に含んだ「こめからだⓇ」ブランドの「そのまま炊ける雑穀ごはん」シリーズを昨年12月に発売するなど、米を原料にしたオリジナル商品の 品揃えを広げている。今年1月には、米粉100%の原料を使用したグルテンフリーのパンの製造を手掛ける「BIOSS A」(ビオッサ)を子会社化。ビオッサの製造体制やノウハウを生かし、グルテンフリーのパンを高級スーパーや外食、ホテル、メーカーなど幅広い取引先への販売を検討。米の可能 性を最大限引き出す新規事業の一つとして力を入れている。
神明は、「お米のシュレッド 国産米使用」などの商品を揃え、国際食品・飲食展「フーデックスジャパン2023」や日本アクセスの東・西日本の総合展示会「フードコンベンション2023」に出展。他のブースにはない米の特性を生かしたオリジナル商品が注目を集めた。今後も米の新たな価値を流通業界に強く訴求し、日本の米食文化を守ることに邁進していく。
神明の日本アクセス展示会でのブース。多くの来場者で賑わっていた(左からインテックス大阪、さいたまスーパーアリーナ)