環境宣言の発表によって商品開発への理念が合致した

 ――両社は環境に配慮したPB商品を記者会見で発表しました。環境への取り組みを強く打ち出しています。

 石橋 セブン&アイ・ホールディングス(HD)のグループの各店舗には毎日約2240万人のお客様が来店し、多くの商品をご購入いただいています。ただ、それと同時に使われるプラスチック量や食品残渣も多い。このような商品に関する課題をグループ全体で解決することを目的に、グループ商品戦略本部を組織しました。

 ――グループ横断で環境への取り組みが共通化されていなかったのでしょうか。

 石橋 そうです。そこでグループ横断の取り組みをより促進するために、環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を2019年に発表したのです。環境宣言ではCO2削減、プラスチック対策、食品ロス・食品リサイクル対策、持続可能な調達の四つをテーマに定め、2030年、50年までの明確な数値目標を打ち出し、環境対策に真剣に取り組むことを社内外に掲げました。これを基に取引先の皆様から環境に配慮した原料、商品開発まで様々なご提案をいただきました。サラヤさんを含めて商品化まで取り組みを発展させたことは、環境宣言を発表した一つの成果と言えます。

 ――サラヤでは「衛生、環境、健康」の三つを企業理念にしています。

 山田 当社創業もそこにあります。戦後間もない1950年代に赤痢が広がり、日本の死亡原因の1位となりました。これを解決するため52年に感染予防の基本である「手洗い」に着目し、日本初の薬用せっけん液を開発したことが創業の原点です。そして手洗いを習慣化するための標語をポスターにして、学校や工場などに広げていきました。

 ――当時は業務用専用だったんですね。

 山田 もう一つの分岐点が水質汚染への対応です。70年代に主流だった石油系合成洗剤の排水が河川に流れ、河川や湖沼への公害対策を迫られた。中でも当時汚染が激しかった琵琶湖では、排出条例に適した洗剤でないと学校給食にも採用されなかった。そこで環境負荷の少ない植物系洗剤の「ヤシノミ洗剤」を71年に開発し、業務用で発売。手肌に優しくて環境に配慮した商品の良さが口コミで広がり、一般家庭用にも取り扱いを広げていったのです。

 石橋 当社でもサラヤさんの商品は手肌に優しい植物由来で、それを高く評価したお客様がリピート購入される良質な商品であることは、以前から認識していました。実際に当社グループの店舗や食品加工場でも、ウイルスなどの殺菌効果があり、速乾性も高いサラヤさんのアルコール消毒剤や石けん液などを業務用として長年愛用してきました。そして、新型コロナ感染拡大によって、「手洗い」の大切さが社会全体で改めて認識された。食品工場や各店舗では、サラヤさんの商品を使って手洗いと消毒を徹底し、従業員の感染予防対策を進めました。また店舗入口にもサラヤさんのアルコール消毒剤を設置し、感染対策に努めています。

 ――業務用からセブンプレミアムの「ヤシノミ洗たく洗剤・柔軟剤」や「サラヤ薬用泡ハンドソープ」、「サラヤ手指消毒スプレー」など商品の開発に至ったわけですね。

 石橋 環境に配慮した良質な商品を一般流通に広げることは、小売業の一つの役割だと思います。ただ、もともとサラヤさんは業務用がメインなので、商品の良さが幅広いお客様に伝わっていなかった。そこで、セブンプレミアムで一緒に開発できませんか、とご相談したわけです。そしてもう一つは、当社が環境宣言を発表したことで、サラヤさんの創業時からの理念や考えと合致したことが大きい。PB商品をただ出すだけでなく、両社の環境への取り組みも深められると考えたのです。

 山田 セブン&アイHDさんの環境宣言の中でも100%持続可能な原料を使うというテーマに共鳴しました。というのも、ヤシノミ洗剤は、業界に先駆け、持続可能な原料調達に取り組んできました。05年に国内で初めて、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)に加盟し、環境と人権に配慮したパーム油の普及に努めてきました。

 また、パーム油の原料生産地の一つであるマレーシア・ボルネオ島では、現地の方々と協力。現地の重要な生活基盤であるパーム油産業と、動物の生息域の確保の両立を目指し、中立組織の国際NPOのボルネオ保全トラストを設立しました。この団体を支援するため、07年からヤシノミ洗剤などの商品の売り上げの1%を還元する仕組みを続け、この15年程度でボルネオ島の動物達の生息域もかなり広がりました。

 石橋 確かに、生産地域の環境に影響を与えるパーム油は食品の構成比が大きい。当社グループの食品工場でもRSPO認証の油を使った商品開発を進めています。

セブン&アイ・ホールディングス 石橋 誠一郎 常務執行役員 グループ商品戦略本部長

子どもの手洗い習慣化を両社で進める

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