イオン傘下のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)でデジタル本部長を務める山本慎一郎副社長とセブン&アイ・ホールディングス(HD)の齋藤正記執行役員グループDX推進本部長が3月3日、リテールテックJAPANのセミナー「スマーター・リテイリング・フォーラム 2023~流通業デジタルトランスフォーメーションの潮流~」内において、業界共通の基本商品マスタの必要性について、パネルディスカッションを行った。
山本副社長は、日本の小売業が求められている課題として、生産性の向上、カーボンニュートラル対応、原料や賃金の高騰などを挙げ、従来の取引形態を見直し、サプライチェーン全体がより生産性の高いものになっていくためには、業界共通の基本となる商品マスタの整備が必要と指摘する。山本副社長がいう商品マスタとは、取引情報などを抜いた基本的な商品情報のことだ。「統一情報を正しく早く伝える仕組みは民間がイニシアチブを取る必要があるだろう。そういう意味ではスピードが必要。5年先でなく、来年とか再来年にはできてこないと非常に問題だと考えている」と危機感を示した。
齋藤執行役員はこうした意見を踏まえ、「業界全体の協調が必要なのはそのとおり。セブン&アイの中でITシステムの構築運用の責任ある立場として、商品情報を有意義なものにしていきたい。こうした(ディスカッションの)場が広がっていくことが重要」と語った。
セブン&アイでは目下、「グループサプライチェーンプラットフォーム」を構築している。コンビニ、スーパーの業態間で必要な基本商品情報を共通化して読み替えられるようにしており、メーカーやベンダーに販売情報、在庫情報として開放しているという。齋藤執行役員は「全部を変えようとすると相当無理があるが、先を見据えてデータのあり方や共有の仕方を考えることが重要かなと思っている。私どもの商品カテゴリーも限られているので、それを広げて需要予測の精度などをもっと上げていきたい」と語った。
またディスカッションの後には、地域における協調の取り組みとして、イオン九州の柴田祐司社長がオンラインで登場。昨年、トライアルHDなど九州の小売業13社と設立した物流研究会の取り組みについて報告した。昨年10月からイオン九州とトライアルで相互配車を開始し、走行距離を30km縮めることができたという。他のエリアの小売業が物流研究会に参加していいかと司会から問われた柴田社長は「ウェルカムです」と語った。
同パネルディスカッションは、「チームK」を結成している、北村智宏・イオンSM担当付チームリーダー、田邉裕喜・NTTデータソートリーダーシップマネージャー、小川和也・グランドデザイン社長、神成昭宏・ソフトバンクシニアプロダクトマネージャー、大島誠・パナソニックコネクトエグゼクティブインダストリースペシャリスト、岡田義史・日本マイクロソフトインダストリーテクノロジーストラテジストの6人が、業界の垣根を越えて、競争でなく「協調(K)」を目指し活動を行っていることの紹介と合わせて、ゲストパネラーに柴田社長、山本副社長、齋藤執行役員を招いて開催された。(写真はセミナー冒頭、チームKのメンバー)