共通の理念を商品開発から社会貢献活動まで広げる
――2019年にセブン&アイ・ホールディングス(HD)は環境宣言『GREENCHALLENGE2050』を発表しました。この4年で環境への取り組みの進み具合はいかがですか。
釣流 社会全体で環境対応への意識もガラッと変わり、より理解も深まりました。限りある地球環境や資源を生かし、未来世代につなげていくためにグループ一丸となって環境負荷の低減に取り組んでいます。そのため当社は19年に30年、50年に向けての明確な数値目標を打ち出しました。発表当時と比べて当社の挑戦も加速し、取り組みへの難易度もより高まりました。「CO2排出量削減」「プラスチック対策」「食品ロス・食品リサイクル対策」「持続可能な調達」の四つの取り組みテーマを掲げ、新たな技術を取り入れるためにグループ横断でイノベーションチームを設立。本部と事業会社が一体となり、プラスチックや電気使用量、食品ロスなどをいかに削減ができるのか、日々課題解決に取り組んできました。その結果、30年(13年比)の目標であるCO2排出量の50%削減と、「セブンプレミアム」などの当社PBの環境配慮型素材使用量を5割までに引き上げる目標は達成できる見込みです。
――PB商品の開発では、サラヤと共同記者会見を実施するなど両社で環境への取り組みを深めています。
山田 当社が創業以来掲げてきた「衛生、環境、健康」の三つの企業理念が、セブン&アイHDさんが発表した環境宣言に共鳴するところが非常に大きかったと思っています。当社創業時の戦後間もない1950年代には赤痢が広がり、日本の死亡原因の1位でした。これを解決するため52年に感染予防の基本である「手洗い」に着目し、日本初の薬用せっけん液を開発したことが創業の原点です。公共施設のトイレなどでよく見る「緑色のせっけん液」と言えば、思い浮かぶ方も多いはずです。このお馴染みの緑色の手洗いせっけん液を進化させたのが、今のセブンプレミアムの「薬用泡ハンドソープ」。植物性の洗浄成分が汚れを落とすだけでなく、しっかり殺菌・消毒が出来て手肌にも環境にもやさしいハンドソープをご提供しています。
――セブン&アイHDの環境宣言がサラヤ初のPBの商品開発に至ったわけですね。
山田 はい。環境宣言の中では、「オリジナル商品で使用する容器は環境配慮型素材を50年には100%の使用」を目標に掲げておられますが、セブンプレミアムの「ヤシノミ洗たく洗剤」「ヤシノミ柔軟剤」は環境と人権に配慮して生産されたパーム油のRSPO認証マークを取得し、持続可能な原料調達の普及を支援しています。さらに、当社が取り扱うセブンプレミアムの全商品に記載したWWFへの寄付は、初の小売業と共同の取り組みとなりました。併せて売り上げの1%がマレーシアのボルネオ保全トラストを通じて、ボルネオ島の環境と野生生物を守る活動に使われています。
大阪・関西万博で世界に環境への取り組みを発信
――セブン&アイHDでは、プラスチック素材から環境配慮型素材への容器の切り替えを進めていますね。
釣流 商品開発のメンバーが最新の技術を積極的に取り入れ、CO2削減や環境配慮型素材への活用を一つ一つ見直し、容器の刷新を進めています。セブンイレブンでは、今年7月をめどに弁当や麺類の容器を印刷・着色のない白や透明のパッケージに統一。これにより年間約800トンのCO2を削減します。また、セブン&アイグループ店頭で回収したペットボトルだけを原材料とした完全循環型ペットボトルの第4弾のお茶を4月に発売するなど取り組みは広がっています。