手でムラなく伸ばせる簡単仕様とつややかな「とぅるん色」を実現

 ホーユーは9月、黒髪用ヘアカラーブランド「ビューティラボ」から新商品「ビューティラボ カラーセラム わたしいろ」を発売した。約9年ぶりとなる大型新商品の投入だが、その背景にあるのは単なる新商品戦略ではない。縮小傾向が続くセルフカラー市場を再び成長軌道に乗せる〝セルフカラー復権〟という中長期戦略の第一歩として位置付ける。

 国内のヘアカラー市場はサロンやEC利用の広がりを背景に拡大する一方、セルフカラー市場は伸び悩みが続く。女性のセルフカラー使用率は約20年前の5割から現在は4割程度まで低下している状況だ。コンシューマーマーケティング本部長の加藤政樹氏は「コロナの打撃からは脱したものの、かつての勢いには戻り切っていない。現在の約920億円の市場を再び1000億円規模へ再興すべく、セルフカラーの価値を改めて伝えていく必要がある」と決意を語る。

 その突破口として選んだのが「女性×黒髪」市場だ。特に高校卒業から大学進学時期に初めてカラーリングを体験する若年層に着目した。ホーユーの調査では、女性15〜24歳の未染毛者はおよそ216万人おり、潤沢な未開拓市場が残されている。また別の調査では、初めてのヘアカラーを検討する際、76%のユーザーがサロンとともにセルフカラーも選択肢に入れていることがわかった。こうした層に、最初のヘアカラー体験としてセルフを選んでもらうためにはどうすべきか。商品設計は。価値伝達の方法は。「すべてが新たなチャレンジだった」と加藤氏は振り返る。

 こうした考えのもと開発されたのが、今般の「カラーセラム」だ。商品コンセプトは「染めたのに、とぅるん色。」。ターゲットは高校卒業から20代前半のファーストカラー層だ。

 開発にあたり同社が徹底的に調査したのはセルフカラー初心者の心理だった。そこから浮かび上がったのが、「自分でうまく染められる自信がない」というムラへの不安と、「市販品は髪が傷みそう」というダメージへの不安だ。こうした心理的ハードルを解消することが、セルフカラーをより身近に感じてもらう出発点となった。

 そこでまず剤形については、手で直接伸ばせる乳液タイプを採用した。コンシューマーマーケティング本部商品企画室の岡田浩希氏は「普段のお手入れに近いトリートメント感覚で塗れることが安心感につながる」と指摘。初心者でも髪全体に塗り広げやすく、ムラなく均一に仕上げやすい設計とした。

 またダメージへの不安に対しては、トリートメント成分を従来品比で約3倍配合した。サロン専売品の商品企画・マーケティング部門を経験した岡田氏を中心としたメンバーが商品を企画することで、塗布時のなめらかな伸びから洗い流し時の手触り、仕上がりのうるおい感までこだわり抜いた。

右からコンシューマーマーケティング本部 本部長の加藤政樹氏、商品企画室の岡田浩希氏

 色展開も若年層を意識し、ピンクブラウンやミルクティーベージュなど、SNSで人気のカラーやサロントレンドを反映した全11色をラインアップ。黒髪にも自然になじむ発色と、ムラのないつややかな仕上がりで〝とぅるん色〟を体現していく。岡田氏は「セルフカラーが初めてのお客様でも『自分でもうまくできた』と思っていただける商品に仕上がった」と胸を張る。

 このセルフカラーの成功体験で目指すのは目先の売り上げだけではない。ホーユーは「カラーセラム」で捉えた顧客が将来、白髪染め期に返り咲くことまでを想定。これにより長期を見据えたセルフカラー市場の拡大を目指す考えだ。

ヘアカラー商品で初となるロフトでの先行販売を実施

 今回の開発で特徴的なのは、商品の中身だけでなく開発手法そのものを見直したことだ。従来の体制は各部署が順に仕事を引き継ぐいわば「バトンリレー型」だったが、この度そうした部門最適の垣根を打破。研究開発、マーケティング、販売などの機能が全社横断のワンチームとして連携する「アジャイル・スクラム型」の開発体制が動き出した。

 プロダクトデザインについても、ターゲット顧客の代弁者であるインフルエンサーの声をダイレクトに反映する方針に転換。商品パッケージはもちろん、取扱説明書の文言や様々なメッセージの伝え方まで含めて大きく見直したという。

 販売・販促戦略にも変化の兆しが表れている。今回「カラーセラム」は量販店やドラッグストアでの発売に先駆け、「ロフト」での先行販売を実施した。ホーユーのヘアカラー商品では初の展開だ。またプロモーションについても、今後は従来のマス広告による一斉訴求ではなく、複数のインフルエンサーやKOLを活用しながら、ターゲットの興味関心ごとに複層的な発信を行う意向。これに店頭施策やリテールメディアなども組み合わせることで、売り場での話題感や「最近よく見かける商品」という空気感を醸成していく考えだ。

 ホーユーは9月14日、「カラーセラム」の発売に合わせ、都内でメディアやインフルエンサーを招いた発表イベントを開催した。商品の展示・紹介のみならず、ターゲット層が求める「体験」「自己表現」「レトロなエモさ」を盛り込んだコンテンツを展開。特にチャームづくり体験や青春モチーフのフォトスポットなどが大きな盛り上がりを見せていた。

ターゲット層に商品の世界観を伝えるイベントを開催。盛況だったチャームづくり体験

 セルフカラーの再興・復権。「カラーセラム」の発売を皮切りに、市場そのものの再成長を目指すホーユーの新たな挑戦が始まった。