コロナ禍を経て成長を続けてきた即席麺市場。背景には物価高騰を受け、「コストパフォーマンスの良さ」「一食完結の手軽さ」「長期保存可能なストック性」といった強みが評価されてきたことがある。ただ今年はそれらの反動もあり、足元の伸びは鈍化傾向だ。そこでサンヨー食品では最新トレンドを踏まえた新たな定番商品を投入。市場の活性化を図ることで、停滞感を打破したい考えだ。

新フレーバーの「ほたて塩味」を投入

 サンヨー食品がこの秋冬商戦に向け投入した新商品が、「サッポロ一番 カップスター」シリーズの新フレーバー「ほたて塩味」だ。塩味はいま注目のトレンド。サッポロ一番ブランドの中でも、これまで袋麺で一番人気は長らく「みそラーメン」だったが、直近では「塩らーめん」が首位に立った。また同じ袋麺の「塩とんこつラーメン」もこの数年じわじわと売り上げを伸ばしており、塩味の人気が高まっている。サンヨー食品の担当者はその理由として「さっぱりしていて飽きがこないこと、また様々な具材と合わせやすいといった点が評価されているのではないか」と指摘する。

 そこで新たな塩味商品の開発に着手。カップスターシリーズにはすでに定番品の「旨塩」があることから、これとは違った味わいを模索。まず近年ラーメン市場でトレンドである“貝だし”に着目し、さらにほたての旨みにポークを合わせ、ガーリックの風味を加えるなど、味にメリハリを効かせた。

 それでいて具材にはシャキシャキ食感のわかめと、見た目も食感もほたてのような「ほたて風かまぼこ」を採用。従来のオーソドックスなフレーバーとは一線を画す、新ジャンルの味わいを実現している。担当者は「塩味やたっぷりのわかめなどで女性ユーザーを意識しつつも、幅広いお客様に親しんでいただきたい」と語る。

 販売促進策は10月からカップスターでおなじみの「乃木坂46」の新CMを放映中。またSNSで若い層とのコミュニケーションを図ることで売り上げの拡大を目指す。

 新フレーバーの投入と合わせて、他の定番品もリニューアルを実施。カップスターの定番品は「醤油」「旨塩」「味噌」「豚骨」に「ほたて塩」を加えたラーメン5アイテムと和風系の2アイテムがあるが、今回はその2アイテムも見直した。従来の「海老天そば」に代わり投入したのが「鶏天そば」だ。かつお節や昆布の旨みをベースに、鶏だしの旨みを合わせ、アクセントにゆず七味唐辛子を効かせた風味豊かなそばつゆが特徴。具材にはジューシーな鶏天、花形かまぼこ、ねぎを使用し、和風ながらも差別化された味わいを実現している。

 もう一つの「カレーうどん」は、スープに「牛だし」を採用。香りや辛みにこだわった香辛料に、昆布や魚介の旨み、牛脂やビーフのコクを加えた風味豊かなカレーつゆが特徴だ。麺はつゆがよく絡む太麺。具材には肉そぼろ、にんじん、ねぎを組み合わせ、肉そぼろの増量でさらにコク深い、満足感のある一杯に仕上げている。

左から「サッポロ一番 カップスター 鶏天そば」、「同 カレーうどん」

サッポロ一番史上最も辛い商品を定番に育て上げる

 もう一つ、この秋冬に強く推し出していくのが「サッポロ一番」シリーズで史上最も辛いフレーバーの「極辛 味噌旨タンメン3食パック」だ。今春発売され、小売店からすでに支持を集める人気商品となっている。

 コンセプトは辛いもの好きのユーザーに向けた本格的な激辛商品。激辛ラーメンはこれまで一過性のブームを繰り返してきたが、それが近年定着し、一定の市場を形成している。そこに満を持して投入したのが「極辛」だ。味噌の旨みとポークのコクに唐辛子の辛みを効かせ、野菜の甘みやオニオン、ガーリックの風味を加えた、ただ辛いだけでなく甘みも感じられるクセになる味わいが特徴だ。

「サッポロ一番 極辛 味噌旨タンメン 3食パック」

 主なターゲットは10〜30代の辛いもの好きだが、「辛いもの好きの方は世代に関係なくいらっしゃる」(担当者)として、こちらも幅広い世代にアプローチしていきたい考え。発売に合わせて、インフルエンサーへの試食配布や、辛いもの愛好家に支持されている情報発信サイト「辛メーター」とのコラボサイトを開設するなど、認知アップに努めている。「辛いもの好きというお客様は一定数おり定着している。小売店への配荷をさらに強化していくためにも、『極辛』を定番品としてじっくり育て上げたい」と担当者は意気込む。

 サンヨー食品はトレンドを取り入れた商品ラインナップ強化で、秋冬の即席麺市場を牽引していく構えだ。