シンプルな味わいが評価され、調味料選手権の最優秀賞を獲得

 徳島産業の新たな切り口の商品が注目を集めている。2025年3月1日に発売したドレッシング「タマネギまんま」、「トマトのまんま」、10月15日発売の「ごまのまんま」の「まんまシリーズ」3品だ(冒頭写真)。

 コンセプトは、「素材そのまんま」。「タマネギまんま」は、Mサイズのタマネギ1個分を使用し、おろしたてのタマネギの自然な辛味とフレッシュな風味をそのまま生かしたノンオイルドレッシング。同じくノンオイルの「トマトのまんま」は、Lサイズのトマト2個分を使用し、トマトそのものをかけているような味わいを実現した。「ごまのまんま」は、練りごまと充填直前にすったごまをそれぞれふんだんに投入し、素材本来の味と香りを引き出している。

 いずれも、香料・保存料・うま味調味料を一切使わず、素材そのものの風味、甘味、酸味を生かして開発された。そうした点が評価され、日本野菜ソムリエ協会主催「第16回調味料選手権2025」の野菜を使った調味料部門では「タマネギまんま」が最優秀賞を受賞した。

「タマネギまんま」は日本野菜ソムリエ協会主催「第16回調味料選手権2025」の野菜を使った調味料部門で最優秀賞を受賞した

 徳島産業では、これまでも生姜をふんだんに使った「鬼の土佐生姜ポン酢」など素材を生かした商品を開発してきた。今回、ドレッシングでもその取り組みを行った狙いは、既存商品との差別化だ。園木章浩社長は、「最近は、香料など素材以外のものを添加して味を複雑に組み立てるドレッシングが非常に多くなっている。そこで我々は、一度素材に立ち返り、いろんなものを加えるのではなく、減らすという引き算の発想で開発することで、健康的で独自性のある商品が作れると考えた」と説明する。

 素材の選定にあたっては、ニンジンからニンニクまで10種類以上の野菜や果物で試作、最終的にいろんな料理との相性がよく、生でも食べやすいタマネギとトマトに行きついた。第2弾にごまを投入したのは、市場でごまドレッシングの人気が高くラインアップに必要と判断したため。ただし、既存の商品は、さまざまな調味料や添加物を入れることでごまの風味を出していることから、徳島産業では、ごま以外の材料は最低限に抑え、ごまの存在感を強調することで差別化を図っている。

多様な用途を評価し、3品導入の小売業も

 商品化を進める上でハードルとなったのが製造だ。常温で販売するためには、熱を加えて殺菌する必要があるが、熱を加えすぎると素材のフレッシュさが失われてしまう。そのため、熱をかけ過ぎずにしっかり殺菌できる製造方法を試行錯誤しながら確立した。一方、ごまドレッシングの製造では、ごまをふんだんに使うことで製造機械の目詰まりが頻発、それを様々な工夫で解消しながら安定的に大量生産できる環境を整えた。

 商品化までのハードルは高かったものの、発売後の取引先の反応は良好だ。一般的なドレッシングと比べ調味料や添加物が少なく、すっきりした味わいのため、サラダ以外にもタマネギやトマトはパスタソースに、ごまは鍋料理のつけつゆやごま和えなどにと、幅広い料理に使える点を評価。3品を一括して導入する小売店も多く、また、ごまの取り扱いをきっかけに先に発売した2品を導入するところも少なくないという。

 プロモーションでは、たっぷりポン酢シリーズに続き、芸人のほいけんた氏を起用。商品カラーの緑と赤に身を包んだほいけんた氏が、「素材のまんまでサラダが美味しくなる」と歌うCMを製作した。シンプルだがインパクトのある内容が注目され、YouTubeでは、放映開始から約半年で累計27万回再生を記録。いまだにその数が増えているといい、確実に商品の認知向上につながっている。

プロモーションには芸人のほいけんた氏を起用。インパクトのあるCMで認知向上を図る

 徳島産業では、まず、これら3品の販売促進に注力する構えだが、長期的にはラインアップの拡大も視野に入れている。

 ちなみにこれらの商品は、開発から営業、管理部門まで組織横断で従業員が参加するプロジェクトから生まれた。「従来は、専門部署が開発に取り組んでいたが、1、2年前から組織の壁を取り払って様々な部署のメンバーから成るプロジェクトを作り、新商品開発に取り組んでいる」(園木悠司取締役事業本部長)といい、既存の枠組みに縛られない発想が新しい商品の開発につながっているようだ。

スイーツの製造も手掛け、地域活性化でも貢献

 ドレッシングやポン酢で知られる徳島産業だが、実はスイーツメーカーとしての顔もある。同社の金沢工場(金沢市)では、和三盆を使ったわらび餅や水ようかんなどの和菓子から、ゼリーやプリンなどの洋菓子まで様々な商品を製造しており、大手コンビニ向けの専売品も多数開発。商品開発は徳島と金沢のスイーツ好きの社員が中心となっている。

石川県にある金沢工場では多様な和洋菓子を開発している
ヒット商品の中には無色透明なプリンや黒いわらびもちなどのユニークな商品が数多い

 調味料や菓子類の製造に加え、地域の活性化にも積極的だ。イベントでは子どもたちが楽しめるゲームの運営や商品提供で協力しており、今年は徳島の人気祭り「阿波の狸まつり」において、ドレッシングやスイーツが当たる輪投げゲームを出店した。園木社長は、「人口減少が進む地方では、特にお子さんに元気になってもらえることが重要。少しでも皆さんに喜んでいただければ」と語る。徳島産業は2025年12月で創業70周年を迎えた。地方に根差す企業として、今後も地域活性化に貢献していく構えだ。

地域イベントへも積極的に参加。徳島県の人気祭りの一つ「阿波の狸まつり」では子どもが楽しめる輪投げを行った