「生鮮市場TOP!」の拡大に伴いキャパを増強
マミーマートホールディングス(HD)の出店攻勢を支える、AZ-COM丸和HD傘下・丸和運輸機関の次世代物流。両社の取り組みは、単なる3PLの枠を超え、新たなサプライチェーンの姿を提示しつつある。その象徴が、埼玉県松伏町に誕生した新物流センターだ。
丸和運輸機関が今年2月に稼働した「AZ-COM Matsubushi EAST」(以下、松伏センター、冒頭写真)は約2万5000坪の大型物流施設だ。3温度帯に対応した5層構造で、1階を冷蔵庫、2階を冷蔵・冷凍庫、3~5階を常温庫とする。食品物流に求められる「品質管理・安定供給・生産性向上」を同時に実現する設計とし、物流の集約と標準化を通じて荷主の成長を支える拠点と位置付けている。
この新センターを舞台に進むのが、主要荷主であるマミーマートとの取り組みだ。同社は近年、年間10店前後のペースで出店を継続。生鮮の安さと品揃えでお客を呼び込む戦略業態「生鮮市場TOP!」の拡大によって、成長を加速させている。同社の髙橋史生執行役員商品管理事業部長兼商品管理部長は、「TOPの年商は平均して30億円を大きく超える。従来のマミーマート業態の2倍以上。さらにディスカウントで量販するスタイルなので物量の増え方は2倍じゃきかない」と足元の業容拡大の実態を語る。
マミーマートは2022年7月、丸和運輸機関とともに「三郷物流センター」を立ち上げ、既存の川越センターと合わせた2拠点体制で対応してきた。しかし直近の売り上げ拡大に伴い、トラック台数や荷捌きスペースが不足。旧センターでは運用変更やレイアウト変更を行いながら、どうにか対応していた。
こうした背景の下、3年半という異例のスパンで三郷から新センターへの移管が行われることとなったのだ。


輸配送管理システムの試験運用がスタート
松伏センターは東京外環道の三郷ICから車で約25分の場所に位置。常磐道や圏央道へのアクセスにも優れ、東埼玉道路に隣接することで都心から約25km圏内に位置する戦略的優位性を持つ。その規模による十分な処理能力に加え、配送や庫内作業の効率を高める最新機器を導入。物流の「量」と「質」の両面での強化が図られている。
中でも一足先に試験運用が始まっているのがTMS(輸配送管理システム)だ。センターを出発した車両の現在地や店着時間、積載内容といった様々な情報を一元管理。センターと店舗が同じ情報をリアルタイムに共有することで、「従来電話で行っていた状況確認や運行調整の手間がなくなり、効率化につながっている」と丸和運輸機関の飯野裕二アズコム松伏事業部副課長は自信を示す。
さらに庫内では、ロボットによる積み付けや自動搬送機の導入も検討が進む。こうした取り組みは生産性改善にとどまらず、人手不足が進行する中で持続可能な物流の実現を見据えるものでもある。
全ての食品を一つの建物で調達可能なモデルを構築
こうした取り組みの延長線上にあるのが、松伏センターが志向するサプライチェーン全体の最適化だ。
新センターはマミーマートをはじめとする主要荷主を軸に「垂直統合・水平連携」の拠点構築を目指している。垂直統合とは、メーカー・卸・小売りの物流機能を同一拠点に集約し、一体運用することでサプライチェーン全体の無駄を減らす試みだ。今後は主要荷主と親和性の高いメーカー・卸の誘致を進めることで、拠点間の横持ちや、多段階配送を削減。低コスト・高収益型の物流モデルの確立を狙う。
一方、水平連携ではメーカー間や小売り間など同業種での連携を深め、発注の集約や在庫の一括管理を進める考えだ。これにより、全ての食品を一つの建物で調達可能な「次世代流通モデル」の構築を見据えている。
また、丸和運輸機関が強みとする青果の産直物流についても、新センターを活用することでスキームを一段磨く構えだ。全国の提携産地から陸・海・空の柔軟な輸送手段で運び、市場を介さず鮮度の良い商品を店舗に届けるのが丸和流。松伏センターはそのハブになるだけでなく、今後はセンター内に加工設備も備えることで「産直プラットフォーム」としての機能を高めていく考えだ。
さらに松伏センターでは、内閣府と国土交通省等が推進する「スマート物流サービス」への対応を進める。これまで企業間や物流工程ごとに分断されていたデータを標準化し、シームレスに連携することで、真の意味での全体最適を実現し、新たな付加価値創造につなげる。
その第一歩として動き出しているのがメーカーからセンターに納品される商品の納品伝票の電子化だ。検品、受領確認などの作業が簡素化されることに加え、今後川下までデータがつながっていくことで、一層の物流効率化の道が開ける。丸和運輸機関の藤井敦志アズコム松伏事業部課長は、「今年中には一部メーカーさんとの取り組みが本格的に始まる予定。成果につなげ、スマート物流の構築を着実に前進させたい」と意気込む。
「人」の力を大切に考えるセンター運営と環境づくり
こうしたデジタル化の取り組みが進む一方で、両社は物流における「人と人との対話」の重要性も強く意識している。松伏センターの立ち上げ過程でも、その姿勢は随所に表れた。
担当者同士が顔を突き合わせ、あるべき物流の姿を議論。マミーマートは店舗や商品の情報を逐次共有し、丸和運輸機関はそれを受けて庫内レイアウトや出荷の仕組みを改善。課題が生じればフィードバックし、協力して解決の道を探る。委託関係を超え、情報を双方向に行き来させながら物流を共に設計する――松伏センターでは、こうした「共創型」の取り組みが着実に形になりつつある。
マミーマートの藤原淳平執行役員商品管理事業部物流部長は、三郷からの数年間の取り組みを振り返り、こう断言する。「我々の考えを伝えると、それを真摯に受け止め応えてくれる。丸和さんの強みは、突き詰めれば『人』だ」と。
「人」の力を大切にする思想は、センターの設計にも色濃く反映されている。松伏センターは、現場で働く人に配慮した環境づくりにこだわった。庫内には空調を整備し、夏の暑さや冬の寒さといった負担を軽減。さらに5階にはカフェテリアを設け、休憩や交流の場を確保した。「こうした取り組みが働き手の確保にもつながっていると感じる」とマミーマートの板井智章商品管理事業部物流部副部長は指摘する。
加えて松伏センターには、丸和運輸機関として初めて「安全道場」と呼ばれる施設も設置した。実務に即した安全教育を行う場で、現場で起こり得る事故やミスの未然防止につなげる狙いがある。人材育成を通じ、現場力の底上げにも注力する。

そのほか、松伏センターはBCP対策にも余念がない。免震構造や非常用発電機、インタンクなどを備え、災害時でも物流を止めない仕様となっている。今後はセンターに保管されている流動在庫を、有事の際に災害物資として活用するスキームについても検討を進める。
AZ-COM丸和HDの谷津恭輔事業推進グループ事業戦略部長は、「松伏センターは、新技術・DX・ITや新運用の実証フィールドであると同時に、当社らしさの発信拠点でもある。お客様に見に来ていただき、『これなら丸和に物流を任せたい』と思ってもらえる取り組みを、マミーマートさんをはじめ、荷主の方々と具現化させていく」と力を込める。
取り組み企業との共創の中で、物流最適化と収益拡大を後押しする松伏センターの挑戦は、流通業界の新たなロールモデルとなる可能性を秘めている。



















