感動の共有を広げるファンづくりを推進

 「まんま!」「うるま!」

 3月1日、沖縄県うるま市内のホテルの宴会場は活気ある掛け声に満ちていた。この日開かれたのは同市職員が企画した「まんまうるまブランドサミット in URUMA」だ。地元の事業者・団体、アンバサダー、観光大使らが一堂に会し、うるま市の魅力をブランドとして発信すべく、その意志を共有し合った。中村正人市長は「うるまのありのままの姿(まんまうるま)を価値に変えるのは、ここに集まった一人ひとりの力。人づくりこそが地域の誇りと未来を育てる」と熱く語り掛け、続く「まんまうるま」の唱和で会場の一体感を誘った。

 沖縄本島中部、東海岸に位置するうるま市。同市が今、地域ブランディングに力を入れている。美しい海の上を走る海中道路や世界遺産の勝連城跡といった観光資源はもちろん、そこにある暮らしや文化、そして人と人とが育むあたたかさを〝感動資源〟としてアピール。足元で取り組みを加速させている。

 うるま市がブランディングを強める背景には、コロナ禍で地域産業がダメージを受けたことがあった。観光や物産を従来通り打ち出すだけでは足りない――。そうした思いから、2021年に就任した中村市長は地域の魅力ある人・ものの再発見と、それを市の内外に発信する施策に注力。23年には「感動産業特区」のテーマを立ち上げ、市の自立的・持続的な成長を目指す共創活動を積極的に展開している。

 うるま市が目指すのは、同市の「感動人口」を100万人に拡大することだ。感動人口とは、単なる観光客数ではない。いわゆる関係人口の概念を発展させたもので、たとえば県外からメディアやイベントを通じてうるま市を知った人、うるま市のSNSをフォローしている人、実際に訪れる人、そこからさらに関心を深めて継続的な関わりを志向する人等々、うるま市と感動を共有するすべての人々を指す。うるま市民13万人をベースに、こうした認知人口・体験人口・応援人口を合算し、100万人規模を達成すること。この最終目標に向け、うるま市はロードマップを描き、情報発信、ファン獲得、ブランド形成の取り組みを推進している。

選りすぐりの産品の中からグランプリを受賞した「サンナッツ」

 うるま市の取り組みは、今般のブランドサミットを起点に新しいステージに入った。それを象徴するのが、新制度「まんまうるまセレクション グランプリ」の創設だ。うるま市は24年より、市産品の認定ブランド「まんまうるまセレクション」を始動。今回、ブランドのさらなる価値向上と認知拡大を目的にグランプリ制度を立ち上げた。ブランドの草創が成り、いよいよ世の中に広く提示していく〝実装〟の段階へ。グランプリ制度と受賞商品が、その旗振り役を担っていくイメージだ。

 記念すべき第1回グランプリ(お菓子・スイーツ部門)には、「いさ屋のサンナッツ プレーン味」が輝いた。サンナッツはココナッツを使った常温のタルト菓子で、サクサクとした生地と香ばしいフィリングが特徴。うるま市では長年親しまれてきたなじみの味でもある。

「まんまうるまセレクション」第1回グランプリを受賞した「いさ屋のサンナッツ」

 というのも、この菓子の歴史は1970年代にまでさかのぼる。サンナッツの製造を手掛ける宮國由紀江氏によれば、サンナッツは元々、宮國氏の叔父が開発したという。宮國氏は製菓店の娘として生まれたが、のちに店は惣菜をメインに販売するスーパー「いさ屋」に転換。しかしサンナッツはその後も菓子職人の叔父が変わらず手作りし、いさ屋で売られ続けていた。

「琉球薬膳 琉花」の代表講師である宮國由紀江氏

 転機が訪れたのは4年前。叔父が高齢となり、サンナッツを作り続けることが困難な状況に追い込まれたのだ。宮國氏は当時をこう振り返る。「私自身、ずっと当たり前にあったものがなくなるなんて『まさか』という思いがあったが、何より地元の方から『あの味が途絶えてしまうなんてさびしい』というお声をたくさんいただいた。このバトンを受け取るのは私しかいないと思い、サンナッツの製造を受け継ぐことを決意しました」

うるま市で営業する「いさ屋」店舗
いさ屋店内。サンナッツは特設売り場が置かれている
伝統が受け継がれるサンナッツ作りの現場(旧工場にて)

 宮國氏の本業は沖縄に古くから伝わる薬膳料理の研究家だ。ゆえにサンナッツを受け継ぐにあたっては、素材や製法を今一度総ざらいしたという。伝統の味を守りつつ、天然の黒糖を使うなど、宮國氏ならではの無添加のこだわりや、沖縄が誇る「健康長寿」の思いを詰め込むことで新たなサンナッツを完成させた。

 こうして引き継がれたサンナッツは23年、県が認定する「優良県産品」NEXT部門で最優秀賞に選ばれた。期待の商品としてリウボウやユニオン(野嵩商会)といった県内スーパーにも取り扱いが広がっていったが、一方で生産量が月6000~7000個と限られたため、「一定の納品ペースを守り、ゆっくり育ててきた」と宮國氏は語る。

 今回のグランプリ受賞を機に、サンナッツの展開拡大にも弾みがつきそうだ。足元で新たな製造拠点が稼働し、生産能力が従来の3~4倍に増強されることから、4月には沖縄ファミリーマート全店での販売が始まるという。そのほかにも多くの引き合いが寄せられており、工場の稼働状況を見ながら順次対応を検討していく方針だ。

 また、このタイミングに合わせて新フレーバーの投入も予定している。現在のプレーン・黒糖の2種類に加え、近いうちにバナナとパイナップルがラインアップに加わる見込みだ。

 宮國氏は「まずはウチナーンチュ(沖縄の人)にとってのふるさとの味、ほっとする味として根付いてほしい。そこからのつながりで、県外、そして世界へとサンナッツが広がっていったらとてもうれしい」と期待を語る。

 現在、サンナッツの県外への展開は、物産公社のEC・アンテナショップを通じた販売にとどまるが、今後は市としても、うるまセレクショングランプリ品としての発信を県内外に強化していく意向だ。また今後もグランプリを継続展開する中でブランドの信頼性を確立。うるま市産品の販路開拓や販売支援をより強力に後押ししていく計画だ。

公式ファンクラブ「うるラバ」で〝うるま好き〟をつなぐ

 今回のブランドサミットにおいては、うるま市公式ファンクラブ「うるラバ」の創設も発表された。「うるま市が好き、応援したい」という人が誰でも入会でき、LINEを通じて登録できるコミュニティだ。登録者には、「デジタル会員証」や「ファン限定ピンバッジ」といった特典を用意。市民はもちろん、日本全国、そして世界へと「うるまファン」を広げる、感動人口づくりの軸となる仕組みとなる。

 イベント当日、会場にはうるま市出身のアーティストで観光大使のHYが駆けつけ、記念すべきうるラバ会員第1号として登録された。また特別ゲストとしてシンガーソングライターの山本彩氏もサプライズ登壇。彼女の誕生日の7月14日にちなみ、会員番号「714」番のうるラバメンバーとして登録された。

うるま市観光大使のHY(名嘉俊氏、新里英之氏)と山本彩氏が「うるラバ」会員に。中村正人市長が会員証を授与した

 地方都市では、人口減少や過疎化、経済の弱体化など、様々な課題が山積している。こうした中、うるま市は地域資源の再評価とコミュニティ形成を通じ、地域が潤う循環モデルの構築を推進。「まんまうるま」の取り組みは持続可能な地域ブランディングの実践例として、今後さらに注目されそうだ。(本誌・中村秋紀)

(冒頭写真 ブランドサミットを開催。市の事業者・関係者らが結束を固めた)