冷凍食品のポジティブな利用増に対応
冷凍餃子シェア2年連続No.1のイートアンドフーズが、さらなる市場拡大に向けアクセルを踏み込む。主力商品の拡販に加え、新たなおいしさや楽しさを打ち出すフレーバーアイテムの品揃えを強化。「大阪王将」の本格的な味・レパートリーが家庭で再現できる価値を打ち出し、冷凍食品の裾野を一段広げる構えだ。
足元、冷凍食品市場は前年比106%と好調に推移し、コロナ後も勢いを維持している。直近ではコメ不足の影響などから米飯、麺・パスタなどが全体を押し上げる傾向があるが、イートアンドフーズが手掛ける中華メニューも手堅い成長を遂げている。
同社の看板商品といえば、言わずと知れた「大阪王将」ブランドの「羽根つき餃子」。油いらず・水いらず・フタいらずで調理でき、本格的な羽根つき餃子が手軽に味わえる一品。たれを付属しているのも特徴で、9月から展開しているリニューアル品では黒酢とレモン果汁を加え、スッキリ感をアップ。「この餃子に、このたれ」のニーズからリピーターも多い。
こうした自信の商品を持つ一方で、イートアンドフーズは昨今の市場の変化も感じ取っている。商品本部マーケティング企画部の平山春奈部長代理(冒頭写真右)によれば、「これまで代替手段としての利用が多かった冷凍食品が、『これが食べたい』『便利でコスパが良い』など、ポジティブな理由で選ばれることが増えている」という。
そこで同社は、今までより一段上の消費者ニーズに応えるバリエーション強化の必要性を認識。野村壮太取締役執行役員(冒頭写真左)は「当社といえば、圧倒的定番の『羽根つき餃子』、あとは冷凍水餃子売り上げNo.1の『ぷるもち水餃子』のイメージが強い。ここは引き続きしっかりと売り込みつつ、フレーバー商品で提案の幅を広げていく。また餃子はもちろん、周辺の中華メニューにも磨きをかけ、需要を取り込んでいく」と力を込める。
餃子のフレーバー商品として、同社が目下育成を強めているのが「羽根つきスタミナ肉餃子」だ。にんにくの効いたガツンとした味わいが特徴で、男性のヘビーユーザーも多い。これをまずフレーバー商品の柱とすべく、この度リニューアルを実施。にんにくの割合を高めるとともにジューシーさを向上。また豚のカシラ肉を配合し、肉のおいしさを引き出した。
餃子以外では「たれつき肉焼売」を注力商品に掲げている。中華カテゴリーの中では餃子に次ぐボリュームの焼売で存在感を今一度高めたい狙い。同品も改良を実施し、冷却前の焼売に上からスープをかける工程を新たに導入。蒸したての風味を一層高めた。
この2品は初のテレビCMも投下しながら認知拡大を図る。9月末から全国で放映。深澤辰哉・渡辺翔太両氏の出演で話題性も喚起しながら、「羽根つき餃子」「ぷるもち水餃子」に続く柱商品に育てたい考えだ。

トレンドを捉えた新フレーバーをラインアップ
秋冬に向け、フレーバーメニューの新商品も9月から続々投入している。今季のテーマは「Hotなハイパフォーマンス中華」。トレンド的にも「ホット」、かつ気持ちが「ホッ」とする商品のバリエーションを充実させている。
目玉の一つが「とろ~りチーズ焼売」だ。焼売の上に濃厚なチーズソースがかかった特徴的な一品。「チーズソースは自社工場で炊き込み、上からかけるための設備も新たに導入。今までにない商品が実現した」と商品本部商品開発部の山本邦彦部長は胸を張る。弁当の具材としてだけでなく、食卓のおかず利用が増える焼売で、少数世帯からファミリー層まで幅広い需要を取り込む。
同社のチーズフレーバー商品の先駆けには「羽根つきチーズぎょうざ」がある。こちらも今般のフレーバー強化の流れの中でリニューアルを実施。自社製チーズソースを具に練り込み、羽根のチーズパウダーの量も増やしチーズ感を高めた。
さらに今季、餃子のフレーバー商品で初となる韓国系餃子も投入する。それが「羽根つきヤンニョム餃子」だ。トレンド感のある旨み×辛味がやみつきになる味わい。「スタミナ肉餃子」「チーズ餃子」の二大フレーバーに新商品を加え、食べ比べや新規需要を喚起。若年層にも訴求しながら冷凍餃子の裾野を広げていく。
そのほか、既存品だが「肉汁」にフォーカスした「肉汁爆弾餃子」「肉汁大粒餃子」もこの度具材を増量するなどのパワーアップを施した。餃子のバリエーション品としてラインアップし、一層の拡販を図る。
今季のプロモーションでは、定期的に展開している消費者キャンペーンをこの秋冬にも実施予定だ。またウェブへの広告出稿も強め、引き続き新規層への情報発信にも力を注ぐ。
イートアンドフーズは目下、裏側の製造体制も強化している。2023年に火災にみまわれた群馬の関東第一工場は新ラインを増設し完全復旧。26年末には九州・宮崎に新工場を立ち上げる計画だ。「新工場は原料調達、リスク分散の観点からも最適な立地。稼働後は全社の製造能力が25%増強され、メーカーとしてのステージが一段引き上がる」と野村取締役は意欲を語る。冷凍中華のバリエーションを増やし、成長市場をさらに活性化。イートアンドフーズはその牽引役を目指す。