あらゆる情報が氾濫する現代社会において、戦略的な情報発信を担当する「広報」の価値が見直されている。本連載では、資生堂の広報部長、エバラ食品工業のコミュニケーション本部長を歴任し、この4月からは社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科で教鞭をとる広報のエキスパート、上岡典彦氏を「講師」に招聘。同氏による誌面レクチャーを通して、広報の存在意義を問い直すとともに、経営に〝効く〟実践的な広報活動のあり方についても迫っていく。
時代と共に高まる認知度と重要度
「宣伝の間違いではないかね?」
30年以上前、私が資生堂の入社面接を受けていた時のこと、「広報の仕事がしたいです」と意気込む私に、面接官が不思議そうに問い返してきたのを今でも覚えています。現代では信じられないかもしれません。ですが当時はまだ、資生堂においてすら、広報・PRに対する認知度・理解度はその程度だったのです。
これ自体は、時代の推移を感じさせる笑い話です。しかしどうでしょう、そもそも広報の本質的な役割とは何か、企業の営業活動にどのように貢献している部署なのかと改めて問われた時、皆さんは答えられるでしょうか。
本連載では「経営と広報」という観点から、現在多くの企業が直面している課題の一つである、「採用難」「従業員のエンゲージメント向上」に対して、実は広報が大きな職責を担っていることを述べていきたいと考えます。初回ではまず、広報の基本的な仕事や機能について、改めて整理していくことから始めましょう。
ステークホルダーと関係を築き維持する
まず広報の定義ですが、日本広報学会は2023年に以下のように定めています。
















