当社は東京都大田区南馬込に1店舗を構えています。創業は1958年、私の父と祖母が始めた八百屋を前身とし、81年にスーパーマーケットに業態転換、現在は200坪の売り場で生鮮、惣菜、寿司、ベーカリーなどを全て直営で扱っています。

 私ども、差別化のために継続的に行っていることが二つありまして、一つは地域のお客様のお役立ちに向けた年中無休営業。そしてもう一つがデータに基づいた経営です。スーパーはまさにデータの宝庫です。うちのような小さな店にも5000点を超える商品の情報があり、月間6万人を超えるお客様の販売データが日々蓄積されています。データを用いれば、経験の浅い人でも経験豊かな人との差を縮めることができ、判断の精度も高めることができます。

 POSによる単品管理から始まり、私自身も独学でパソコンを習得しながら、従業員全員がもっと自由にデータにアクセスし、有効活用できるよう整備を続けてきました。今では売り上げ、会計、勤怠、棚卸、発注といったデータが全てつながり、さらには当社のホームページとも連動しています。

 昨年から始まったHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の義務化にも、こうしたデータ化、ネットワーク化で対応しました。最初は紙のチェック表で健康管理、温度管理をしていたのですが記入漏れが頻発。そこで各部門にタブレットを配布し入力する体制にしたところ、チェックが全て埋まるようになりました。

 こうした仕組みは、今回のコロナ禍でも威力を発揮しました。まずはお客様にきちんと情報を開示しようということで、ホームページでその日の出勤者数、健康状態を閲覧できるようにしました。また店内でアルコール消毒が必要な箇所をリストアップし、消毒作業の進捗をタブレットで管理。作業の進捗状況もホームページで見られます。残念ながら12月に1人陽性者が出てしまいましたが、それも即座に開示したので、お客様にとっては逆に安心感につながったようです。売り上げもおかげさまで前年クリアの状況が続いています。

 今後は私どもの開発した仕組みを広く業界の皆様にもお役立ていただきたい。その思いで、この1月からデータ管理アプリ「ストアログ」のテスト版を公開しました。健康管理、温度管理、消毒管理が一括でできるアプリで、従業員のスマートフォンでも運用が可能。1店舗1カ月あたり3300円で導入できます。

 デジタル活用はまだまだ広げていけると考えています。ネットスーパーは規模的にメリットがないので選択肢にないですが、例えば既にやっているのがウェブカメラ。売り場の様子を15分に1回撮影し、これもホームページでお客様に向けて発信するほか、売り場の画像データを蓄積することで催事やセール時の売り場づくりに役立てています。アイデアはまだいくつかあるので、今後も深掘りを進めていきます。(2月24日、全国スーパーマーケット協会にて)

スーパーキタムラ