英国最大手のスーパーマーケットチェーンであるテスコは、夏の学校休暇期間中、食の不安に直面する子どもとその家族に対する支援を拡充すると発表した。無償給食が受けられない夏休み中に食事に困る家庭を対象に、食品寄付、学校助成、「キッズ・イート・フリー」など多方面から支援を展開する。

 この取り組みは、テスコが推進する「ストロンガー・スターツ」プログラムの一環として位置づけられており、食料支援を通じて、子どもたちの健全な成長と家族の生活基盤を支えることを目的としている。

 調査によれば、24年夏には、子どもを持つ家庭の約3分の1(32%)が「バランスの取れた食事が取れないことがあった」と回答している。また、現在では5歳未満の子どもの4人に1人がフードバンク利用のリスクにさらされており、深刻な食料不足が社会問題となっている。

 さらに、テスコが独自に実施した調査では、12人に1人が「金銭的理由で子どもに食事を与えられなかった経験がある」と答えており、学期中は無償給食によって緩和される問題が休暇期間には一気に表面化する実態が明らかになっている。

店舗での寄付支援に「食品バッグ」を導入

 テスコは今夏、すべての大型店舗で栄養価の高い保存食品をあらかじめ詰めた「食品寄付バッグ」を販売する。価格は2〜3ポンドで、購入者はこのバッグの代金をレジで支払うことで、簡単に寄付活動に参加できる。

 寄付された食品はチャリティ団体「フェアシェア」および「トラスセル・トラスト」に直接提供され、英国各地の支援団体やフードバンクを通じて困窮家庭へと届けられる。

 昨夏にはトラスセルのフードバンクが39万1000人に緊急食料を提供し、そのうち14万3000人が子どもだった。今年も同水準以上の支援需要が見込まれている。

 トラスセル・トラストのCEO、エマ・レビー氏は「我々のフードバンクは昨年、100万件以上の子ども向け食料パーセルを提供した。これは現在の生活苦がいかに深刻かを物語っている」と語る。

「端数切り上げ募金」や「カフェで無料食」も動員

 学期中に無償給食を提供していた学校の中には、夏休み期間中も「朝食クラブ」や「昼食クラブ」として支援を継続するところがある。テスコは、このような取り組みを行う全国400校に対し、200ポンド相当のギフトカードを提供する。

 対象となる学校は「学校向け果物・野菜プログラム」に加盟している無償給食比率の高い地域の教育機関である。このプログラムでは年間約1600万個の果物や野菜を提供し、1人あたり年間平均110食分に相当する。

 8月25日から31日までの1週間、テスコはレジでの「端数切り上げ募金」キャンペーンを実施する。買い物客は会計時に合計金額を次の1ポンドに切り上げ、その差額を寄付として提供できる。

 寄付金は、フェアシェアおよびトラスセルの活動資金として活用される。昨年はこの取り組みにより、50万ポンド超の寄付が集まった。オンラインショッピングでも同様にチェックアウト時の募金が可能である。

 また、テスコは英国317店舗のカフェにおいて、夏休み期間中「キッズ・イート・フリー」キャンペーンを実施する。大人が60ペンス以上のメニューを購入し、テスコのクラブカードまたはアプリを提示することで、子ども向けの「ホットミール」「朝食」「ピック&ミックス」などが1食無料となる。

セインズベリーも貧困層支援を拡大

 英大手スーパーのセインズベリーも今年の夏休みに向けて、食と記憶に関する独自の調査を踏まえ、食料貧困層への支援を拡充している。

 7月9日から8月1日までの間、自社ブランドのパスタの売り上げをすべてチャリティ団体「コミック・リリーフ」に寄付し、100万食分の食事提供を目指すと発表した。さらに、180万ポンドを寄付し、10万件以上のホリデークラブ枠を創出。料理、音楽、スポーツなどの活動を通じて、子どもたちに「思い出づくり」の機会も提供している。