健康寿命の延伸と介護負担の軽減の2大潮流

 ユニ・チャームの排泄ケアブランド「ライフリー」がひとりひとりの悩みに寄り添う提案を深めている。大人用おむつ・尿もれ専用品を使う本人、また介護者双方の前向きな生き方を応援すべく、臭いトラブルや肌トラブル対策に特化した新商品をこの春に上市する。同時にプレミアム化、プラス1品提案の推進でユニ・チャームが目指す業界総資産の拡大へとつなげていく考えだ。

 国内の高齢化は足元で着々と進んでいる。2025年は団塊の世代が残らず75歳以上の後期高齢者に突入するという分岐点的な年となった。また2035年前後には団塊ジュニア世代が65歳以上に差しかかる第二の山も控えており、2040年までの今後15年間で65歳以上人口は実に276万人増加する見込みだ。一方、寿命については、平均寿命が2040年までに男女平均で1.7歳延びる予測に対し、政府は健康寿命を2.5歳延ばす目標を掲げている。ライフリーは、この健康寿命をいかに延伸するかを課題と認識している。

 ライフリーは1995年に「リハビリパンツ」を発売して以降、大人用おむつの紙パンツ化普及に努めてきた。「寝たきりゼロ」の発信に始まり、2013年からは自立排泄・自立交換の提案を継続的に実施するなど、排泄ケアの側面から健康寿命延伸を目指している。こうしたメッセージを今後は商品のパッケージから広く発信すべく、来春をめどに主力紙パンツ商品のパッケージ変更も予定している。生き生きと活動する実写の人物をあしらい、本人の自立した生活を後押し。また明るいイメージの想起で購入意向の引き上げも図る狙いだ。

 ユニ・チャームが介護の潮流と捉えるものには、健康寿命の延伸ともう一つ、介護負担の軽減がある。働きながら介護をする人や65歳以上の高齢者同士の介護が増加傾向にある中で、排泄ケアにおいても本人だけでなく、介護を担う人の負担軽減も求められている。ユニ・チャームの担当者によれば、「排泄ケアにおいて、介護負担に直結するトラブルは排泄物のモレだけではない」のだという。「実は臭いや肌のトラブルもモレと近しいか、ほぼ同等に嫌悪度が高く、多くの方が負担を感じていらっしゃる」

 こうしたニーズを捉え、ユニ・チャームはひとりひとりの個別の悩みに沿った、今までにない価値を搭載した紙パンツ用パッドの新商品を開発した。既存パッドからのランクアップや、紙パンツと組み合わせるプラス1品の提案で既存顧客のプレミアム化を推進。ひいては単価増により店舗の売り上げに貢献することを、新年度上期の最重要戦略に掲げている。

臭いの悩みを解決する「Wの消臭力」搭載パッド

 新たなパッドは2タイプ、いずれも4月7日から出荷を開始する。新商品の一つ目は、自分で歩ける・立てる・座れる人用の尿取りパッドで、排泄物の臭いトラブルにフォーカスした商品だ。

 ユニ・チャームが紙パンツパッド使用者に行ったアンケートによると、最も悩んでいるトラブルは、尿が紙パンツの外にモレることではなく、排泄臭を感じることなのだという。装着時はもちろん、パッドを交換する時、またパッドをゴミ箱に捨てた後も「もわっとした臭い」を常に感じてしまうという問題だ。介護者はこの「もわっとした臭い」に対して、使用済みパッドを小さなゴミ袋に入れる、こまめに換気する、消臭スプレーをするといった様々な対策を講じているが、それでもアンケート回答者の64%が不満を感じると答えている。

 この臭いの問題は、介護者にとっても、本人にとっても、思い悩みの種となる。介護者は嫌な臭いに心理的ストレスを抱えることに加え、対処するために手間と時間を取られてしまう。また本人も介助されることへの申し訳なさを必要以上に感じてしまい、自身の臭いを自覚することで自尊心の低下をも招いてしまうのだ。

 実は、高齢者の尿には通常のアンモニアに加えて、硫化水素、メチルメルカプタンといった臭いの原因物質が含まれている。これらは従来のパッドの消臭成分では消臭しにくく、これがパッド使用時・交換時の「もわっとした臭い」につながっていた。またゴミ箱の中で吸収面が露出することで、排泄臭が広く拡散してしまうことがあった。

 こうした課題に対応すべく、ユニ・チャームが開発したのが新商品「ライフリー ズレずに安心消臭パンツ用パッド」だ。同商品の特徴はまず排泄臭を99%消臭※1する「活性炭シート」にある。活性炭にあいた無数の孔が臭い物質に作用。消臭しにくい物質を物理的に吸着することで高齢者特有の「もわっとした臭い」を抑制する。

 さらに二つ目の機能として、世界初※2・3の特許技術※2「臭い遮断テープ」も搭載した。肌に触れてもくっつかないが、同じ素材同士だとくっつく特殊なテープをパッドの両端に配置。テープを貼り合わせて二つ折りにして捨てることで、臭いが広がるのをブロックできる。このダブルの消臭機能により、現行品の約10分の1まで臭いを抑えられるという。

 モニターの総合満足度は97%に上り、商品のコンセプトと使用実感が高く評価された。使用者からは「何回尿モレしてもほとんど臭わなかった」、「交換時にたまに臭う時があるが、ほぼ気にならなかった」などの声が集まったほか、「臭いを感じなくなるとやさしい気持ちになれた」といった負担の軽減によって生まれた心のゆとりに言及するコメントも寄せられた。

 新商品のラインアップは2回吸収・4回吸収でそれぞれレギュラーサイズとジャンボサイズを取り揃える4SKUで展開する。また今回、消臭という新たな機能とその強さを伝達するため、パッケージにもこだわった。消臭効果の高さを直感的に伝えるべく、大人用おむつ・パッドの売り場ではあまり見ない黒と銀のカラーリングを採用。各部位に搭載した機能をわかりやすく記載し、「Wの消臭力」の文言を添えることで消臭がウリの商品であることを強調した。

 そのほか、店頭支援・コミュニケーション施策としては、小売業がアプリなどのデジタル媒体で活用できるDDP(デジタル・デザイン・パック)を用意するほか、価値伝達動画をネットで配信し、店舗によっては売り場での放映なども提案しながら認知拡大を図る。また既存紙パンツのパッケージに商品案内を掲載することで、組み合わせ購入や既存パッドからのスイッチングを促進。実際に使ってもらい、消臭力を実感してもらうことで支持を定着させていく考えだ。

※1 活性炭と消臭SAP 2つの効果でアンモニアに対して効果を有する ISO17299-2に準拠
※2 吸収パッドの肌面のみに、接合強度が非肌面のフックより低いものの、所定の落下試験でも開かない自着性のテープが配置されている構成
※3 2025年10月ミンテルGNPDを用いたユニ・チャーム調べ

病院・施設で認められた高齢者の肌にも低刺激なパッド

 新たに投入するパッドのもう1品は、寝て過ごすことが多い高齢者の肌トラブルに対応する高機能パッドだ。

 有職介護者が増える中、時間的な余裕のなさからこまめにパッドを換えられず、1枚のパッドを長く使うことが増えているのが介護現場の実情だ。結果として、肌トラブルの困窮者は2020年の22%からこの5年間で33%に増加。3人に1人が週に1回以上の肌かぶれに悩んでいる状況がある。

 高齢者の肌はバリア機能が低下しており、一度肌トラブルが発生すると、痛みやかゆみを伴う重い症状へと進行しやすい。また高齢者は肌のターンオーバーの期間が長く、回復に時間がかかることから、介護者も毎日薬を塗ったり、仕事を休んで病院に付き添ったりなど、長期にわたって時間的な負荷がかかる。つまり本人、介護者双方の観点から肌トラブルの発生を未然に防ぐことが重要になるのだ。

 肌トラブルの原因は大きく二つある。一つは肌のふやけだ。特に体重のかかるお尻側では、尿が逆戻りし、濡れた状態が続くことで肌のふやけが生じやすい。もう一つはおむつ・パッドによるこすれだ。要介護度が高い被介護者は自分から動くことが少ない。しかしそれゆえに外部の力で強制的に動かされる時、自分で思うように体勢を変えることができず、強いこすれ刺激を受けてしまうのだ。例えば在宅介護で使われることが多い電動ベッドにおいて、上半身を起こす操作が行われる時、被介護者のお尻には引っ張られるような強い刺激が日常的に生じている。

 こうした課題に対し、ユニ・チャームはお尻のこすれを低減する「ライフリー お肌に低刺激であんしん尿とりパッド」の投入で立ち向かう。肌トラブルの不安を解消すべく、新商品には三つの革新機能を搭載した。一つ目が特許技術※4を用いた「極上やわらかベール」だ。トラブルが発生しやすいパッドのお尻側につるつるとした低摩擦シートを配置し、その上にベールのようなカバーシートをかぶせる構造を採用。体の動きに応じてカバーシートがなめらかに動き、ズレによる刺激を低減する。この構造が作用し、電動ベッドを45度起こした場合のこすれを、極上やわらかベールが無い場合と比較して48%減らすことができる。

 二つ目の機能は「Wドライ構造」だ。こちらもふやけやすいお尻側に搭載した。保水力の高いシートに加えて、特に肌トラブルが起きやすい仙骨部にはフィルム素材のシートを組み込み、体重をかけても水分が染み出しにくいよう設計。尿の逆戻り率を現行品比で99%減らしている。

 そして三つ目の機能が「全面なみなみシート」だ。パッドの全面に細かく波立たせた素材のシートを採用することで、肌への張りつきを現行品比の3分の1に低減。さらさら感がずっと続く使い心地を実現した。

 モニター調査では、お尻への肌あたりのよさ、さらさら感が高く評価され、総合満足度は83%を獲得。また同商品は病院や施設向けに先行販売しており、現場の職員からもこすれの低減による肌トラブルの減少が認められ、直近5年で5倍以上に販売量が拡大している。

 満を持して発売する流通向けのラインアップは4回吸収・6回吸収の2SKU。パッケージは低刺激を体現したやさしいピンクの色合いで訴求する。ただ、こすれを低減するという新しい価値や、今までにない商品の構造は、言葉や絵面だけでは伝えづらいことから、店頭では現物POPに触れてもらうことで体感とともに認知を図る構え。また、パッケージ天面のQRコードから誘導する特徴説明動画で納得感を高めたり、商品ストーリー動画で共感を呼び起こしながら、トライアルから定着までを早期に図っていきたい考えだ。

※4 製品後方部の肌側に低摩擦シート、カバーシートを有し、カバーシートが低摩擦シートの上を滑ることにより身体の動きに追随し、ズレ力を低減する構造

個々人のニーズを捉えた「パーソナライズ売り場」を提案

 ひとりひとりの悩みに寄り添う新商品の発売と合わせ、ライフリーは新年度、売り場の棚割りの考え方にも「パーソナライズ」の概念を本格的に導入し、提案を深めていく。ユニ・チャームが定義するパーソナライズとは、ユーザーが自分の好みに合わせて選択することではなく、企業側が個々人の属性や趣味、関心、行動履歴などのデータを分析した上で、最適な商品・情報を的確に提供する姿を指す。

 これに向け、従来の左から右へ、軽度失禁ケア用品、入り口期の超薄型タイプを起点とした中度パンツ売り場、重度と流れていく売り場の形は保ったまま、軽度・中度・重度それぞれで課題解決型のプレミアム品を展開。ひとりひとりの悩みに対応しながら単価アップを図る。

 また、売り場の下段にはニーズの高まる大容量品を大きく並べ、既存顧客への対応を強める。「うす型軽快パンツ」でいち早く取り入れたジャンボサイズ(36枚入り)の1段上の容量、スーパージャンボサイズ(40枚入り)を「長時間あんしんパンツ」「リハビリパンツ」でも販売開始し、ロイヤル客の囲い込みを一層強化する。

 さらに夜用商品についてはひと固まりのゾーニングによる視認性アップ施策を継続実施する。昼用と夜用の使い分け促進による単価アップ効果は絶大だ。昼用と夜用の併用者は必然的に買い上げ点数が増加するため、客単価が昼用のみ使用者の245%に上るというデータもある。棚づくりから夜用の認知・使用を推し進めることで、店舗の売上拡大への寄与も目指していく。

 画像のようなフルライン提案の一方、狭小店に対しては売上構成比を保ちつつ組み直した別パターンの作成・提案を基本としていくが、売り場に限りがあると新商品の展開などがどうしても弱まる傾向がある。こうした課題に対し、担当者は「お客様ひとりひとりのニーズに合わせた品揃えの幅を広げるためにも、原点に立ち返り、売り場を広げる提案もこれを機に図っていきたい」と意気込みを語る。

 ライフリーは排泄ケアを通じ、本人と介護者双方の「できる」を一つずつ増やしていく取り組みを応援。その人らしい生き方を支える提案力を、商品、売り場の両面でより深化させる構えだ。