アマゾンは7月12日、「プライムデー2025」が過去最大規模のセールイベントとなり、会員による節約総額が数十億ドルに達したと発表した。セール期間は例年の2日間から4日間に拡大され、家電、美容、食品、日用品など35以上のカテゴリーにわたる数百万件の購買が展開された。

出足の鈍さを尻上がりに挽回

 最終的な売り上げは記録的な水準となったが、その裏には序盤の出足の鈍さを挽回した後半の盛り上がりがあった。

 米調査会社モメンタム・コマースの分析によれば、プライムデー初日(7月8日)の売り上げは前年同日比で41%減と報じられた(フォーブス7月9日記事より)。買い控え、商品選定のための「下見」モード、そして関税や価格上昇への消費者の慎重姿勢が影響したとされる。

 同社のCEOであるジョン・シェア氏は「消費者は“買っている”のではなく、“商品を漁っている”だけだ」と語っており、スタート段階では購買活動が控えめだったことが示されている(テクロイ7月9日記事より)。

 低調に始まったプライムデーだったが、開催3日目以降、人気商品に対するディールの強化や、AIアシスタント「ルーファス」、新たに提供された「アレクサ+」のガイド機能により、ユーザーの購入行動が急速に活性化した。

 加えて、今年はセール期間が4日間に延長されたことで、後半で売り上げを伸ばす余地が広がった。ファイヤーTVスティックHDやリングのバッテリー・ドアベルなど、アレクサ対応スマートデバイスが数百万件以上売れたほか、アップル・エアポッズ・プロ(第2世代)、バイオダンスのフェイスマスクなどの美容・健康商品も好調だった。

 特に、生活に密着した食品分野での大幅割引が評価された。ホールフーズ・マーケットではアイスクリームや冷凍デザートが50%オフ、アマゾン・フレッシュでは150ドル以上の買い物に対して30ドルの値引きが実施された。これにより、食品・日用品のまとめ買いが一気に加速したと見られる。

AIで“検索支援”が進化、中小企業にも恩恵

 今年のプライムデーで特筆すべきは、AI技術による購入サポートの進化だ。生成AIを搭載した「アレクサ+」は従来の音声検索を超えて、商品比較やニーズに応じた提案を行う機能を備えており、先行アクセスとして多くの米国ユーザーに提供された。

 さらに、会話型AIアシスタント「ルーファス」は、商品仕様の説明や類似商品の提案を即座に行い、消費者の迷いを最小化。AIショッピングガイドとの連携により、対象商品への到達率が飛躍的に向上したという。

 プライムデーの恩恵は大手ブランドだけでなく、中小規模の販売事業者にも及んだ。カリフォルニア州のヘアケアブランド「オリビア・ガーデン」の共同経営者アン・マーザ氏は、「2025年のプライムデーは、当社が2019年にアマゾンで販売を開始して以来、最も成功したイベントとなった。限定ディールだけでなく全商品が好調だった。新規顧客の獲得にもつながった」と述べている。