10Xは、主力のネットスーパープラットフォーム「ステイラー」の新戦略として、AIを活用し、小売り現場のDX全般を支えるマルチプロダクトへと進化することを発表した。
2020年から展開しているステイラーは、自社開発不要のネットスーパー立ち上げサービスとして、現在、全国のスーパーやドラッグストア13社に導入されている。提供開始から約4年間で、導入企業の流通総額は市場成長率10.5%増に対して、平均56.7%増と大きく成長。また、システムを導入するだけでなく、各社の採算性の課題にも一緒に取り組むことで、デリシア社をはじめ複数の導入企業がネットスーパー事業の黒字化を達成した。5月20日開催の新戦略発表会に登壇したデリシアの森真也社長(冒頭写真左)は、「ステイラー導入から売上高は2.5倍となり、昨年3月には店舗段階黒字化を実現した」と説明する。
今後、10Xでは、こうした蓄積された知見を生かし、ステイラーを「粗利創出」「業務改善」「データ運用」といった小売り全般の経営課題解決を目指すプラットフォームへと刷新する。また同時に、各プロダクトの共通の基盤として「ステイラー ID」「同 データストア」を活用し、各領域において円滑にデータを利活用できるようシステムを改修。計画では25年度中に、シリーズで5プロダクトを提供し、その第一弾として「同 AI発注」を同日開催の発表会で公開した。
今年7月に正式にリリースする「AI発注」は、小売業で長年課題とされてきた発注業務の属人化や手作業による負荷を根本から解消するSaaSだ。売り上げや天候、販促情報など複数のデータをもとに、AIが自動で最適な発注内容を提案するもの。担当者の経験や勘に依存せず、誰でも安定的かつ最適な判断が可能だ。担当スタッフはスマートフォンで簡単に発注業務を完了させることができるため、大幅な生産性の改善が見込める。
AI発注を皮切りに、25年冬には商品の値付けを支援する「同 AIプライシング」、商品の売り場情報や販促情報を統合する「同 MD」の提供も始める。そして26年春には、既存の店舗IDやポイントシステムとネットスーパーのシステムを統合するOMOアプリ「ステイラーOMNI」を導入する予定だ。10Xの矢本真丈社長(冒頭写真右)は、「今のスーパーに求められている労働生産性の向上を各社と伴走しながら実現していきたい」と力を込めた。