好調の「つゆ」「ふりかけ」カテゴリーを育成
1699年創業の鰹節専門店・にんべんは、鰹節のだしを生かした付加価値商品を拡大している。
とくに今年は「ブランド強化」をテーマに、鰹節専門店ならではの伝統の味を前面に訴求。深いコクと豊かな香りが味わえる付加価値商品を投入し、さらなるブランドの価値向上を目指している。
同社の家庭用事業の23年4～12月の売り上げは、前年比104.9％と好調に推移した。中でもコロナ禍以降、需要が高まっている「つゆ」「ふりかけ」カテゴリーが売り上げを牽引。今春夏はこのニーズを捉え、両カテゴリーの育成に力を入れる。
とくにつゆでは、素材とだしにこだわったストレートタイプ「ゴールドつゆ」シリーズから「素麺」「蕎麦」「天ぷら」の3商品を揃え、プレミアム感を打ち出した〝わかりやすいこだわり〟と〝納得できる品質〟で新規ユーザーを獲得。22年度の売り上げ実績は、17年度対比で224％と、この5年間で倍以上に売り上げが拡大している。
そこで今春の新商品として「ゴールドつゆ」シリーズに、「ゴールドつゆ金ごま」（冒頭写真、300mL、税抜369円）をラインアップに追加。国内製造の鰹節と鯖節、北海道産昆布をじっくり抽出しただしを使い、そこに、まろやかな有機醤油と香り豊かな金胡麻が加わることで、コク深くしかも上品な味わいを実現した。
家庭用事業部商品サービス企画部の鈴木麻以氏は「既に導入が決まっている取引先からは味を高く評価いただいています」と自信を見せる。稀釈不要のストレートタイプならではの汎用性の高さも強調。「金ごま」を活用した、漬け丼やうどんなどのアレンジレシピも紹介した。
販促は、にんべんのファン約980人が登録する鰹節やだしを楽しむコミュニティー「にんべんだしアンバサダー」との連動施策を企画。SNSを通した露出を強化していく考えだ。
二つ目の育成カテゴリーのふりかけでは、国内製造の鰹節を使用した〝本格派シリーズ〟のソフトふりかけを刷新。ここではソフトふりかけの消費者調査を実施し、購入理由の問いに対し、トップ3の「味、食感、素材感」を今回の改良ポイントに定め、リニューアルを図った。
その中でも定番人気の「おかかふりかけ胡麻入り」「塩分ひかえめ同」（各90g、販売小売価格380円）の2品を3月1日からリニューアル発売する。「塩分ひかえめ」では、健康意識の高いユーザーニーズに対応し、塩分を30％カットしながらも味わいそのままをキープしている。
パッケージは従来の白いりごまから、コク深く、香り豊かな〝金胡麻〟に変更。それに合わせメインカラーの薄黄色から光沢感のある金色に変更した。加えて、アンケート結果で反応が良かった〝釜炊き〟の文言を丸いマークを用いて新たに添付。より商品の魅力が伝わるよう改善を施した。販促では「ゴールドつゆ」同様に、アンバサダーとの連携を図る予定だ。
左から「おかかふりかけ金胡麻入り」「塩分ひかえめ同」（各90g、希望小売価格380円）
周年企画でロングセラー商品を活性化
にんべんの〝ブランド強化〟の戦略は新商品だけにとどまらない。今年、同社の主力商品「つゆの素」が発売60周年、小袋タイプの鰹節「フレッシュパック」が55周年を迎える。これを記念し今期は、通期にわたり周年企画を実施。ロングセラー商品の拡売を図り、ロイヤルカスタマーの育成につなげていく。
対象商品は、主要の「つゆの素」（1000mL、3倍濃縮）、「フレッシュパックソフト」（4.5g×8袋）の2品。これらのパッケージに周年ロゴを入れ、店頭での視認性を高め、周年企画を盛り上げる狙い。また、周年を迎える3月に合わせて、Xにてアカウントをオープン。レシピやブランド関連の情報を定期的に配信する。
周年企画を盛り上げる限定パッケージで店頭での視認性を高める
さらに、「つゆの素ゴールド」のプロモーションも継続して強化する。にんべん13代当主でもある髙津伊兵衛社長が出演する新テレビCMを2月初旬公開予定。昨年は20周年を記念して同社の歴史やこだわりを語るものだったが、今年は本質的価値を伝えるストーリーへと変更。事前の消費者調査を基に検証した「つゆの素ゴールド」の消費者への提供価値を参考に、髙津社長自らがにんべんの独自性である〝本物であること〟〝誠実さ〟を語り尽くす。
左から「つゆの素」（1000mL、3倍濃縮）、「フレッシュパックソフト」（4.5g×8袋）
にんべんは祖業の鰹節を基軸に、ブランドの世界観を見直し、独自性を担保した新たな切り口を提案。一段と消費を喚起していく。
