新型コロナウイルス感染拡大が好調だった日用品メーカーの決算を直撃した。小林製薬の2020年12月期中間決算は、売上高が前年同期比4.5%減の661億8000万円、経常利益が同5.2%減の110億2900万円と前期から一転して減収減益となった。ただし、販促費を抑えた結果、純利益は0.2%増の82億1800万円を確保し、純利益は22期連続増益を達成した。

 コロナによる減収影響では国内外で外出自粛による需要減で21億円、インバウンドの需要減で39億円、世界的暖冬でカイロなどが6億円のマイナスとなった。一方で除菌・衛生関連商品の需要拡大で国内外で27億円の増収となったが、減収分を補いきれなかった。

 小林製薬ではコロナに対応していち早く商品政策と海外戦略の見直しに着手した。中期経営計画(20年から22年)では、引き続き国際ファーストを掲げ、全社挙げて国際事業の成長に取り組むが、新型コロナの影響で数値目標に修正があり得ることにも言及した。中国や日本、米国での工場建設投資は新型コロナの影響から竣工時期についても見直す。

 特に中国本土戦略では、インバウンド需要を前提とした日本の店頭強化策を変更し、中国国内ECで直接購買を喚起するマーケティング戦略を推し進める。日本でのインバウンド用の販促費を中国のSNSやウェブの広告、テレビCMなどに使い、現地での認知度を高める戦略を進め、インバウンドの需要減少を中国本土で補う。「ECを主体にした中国への直接的な広告手法に戦略を変えました。ただし、広告効率で見るとインバウンド向けは抜群に高いので、訪日客が増えれば元に戻します」(小林章浩代表取締役社長)。

 さらに中国本土の商品製造・販売体制と越境ECを強化。9月にはトイレ消臭剤「ブルーレット デコラル」で中国人に人気のピーチを日中同時発売し、今秋には医薬品を1品、来年には「アンメルツ」の発売を予定。熱さまシートの販売チャネルを活用し、22年に中国でOTC医薬品の売り上げ4億円を目指す。

 国内戦略では30のコロナ対応プロジェクトを立ち上げ、年内に10品の新製品を投入する計画だ。基礎体力や粘膜バリアなど、免疫を高めたいという消費者意識に対応。「のどぬ~るマスク」の売り上げが好調なことから、不快なムレ感と同時に除菌もできるマスク用スプレー「同 ムレ感対策」など幅広く取り揃える。コロナ対策新製品で年間5億円の売り上げを目指す。
(冒頭写真は、小林製薬中国法人のサイトページ)