コロナが5類に移行され、経済活動が再開したことから、あらゆる業界で人手不足が深刻化している。ドラッグストア業界も例外ではない。慢性的な人手不足対策にスキマバイトをどう活用するか。タイミー事業推進一部カスタマーサクセスの加澤雅之氏に、そのポイントを聞いた。

スキマバイトの活用で数百万円のコストダウンを実現

 ドラッグストア業界では、全国展開する大手チェーンからローカルチェーンまで、人手の確保が共通の課題だ。加澤氏によれば、とくにロードサイドと大都市中心部の店舗で人手不足が深刻化しているという。求人をしても応募がなく、応募があっても面接につながらない、何とか面接にこぎ着け、ようやく採用となっても短期間で辞めてしまうといったことがあちこちで起きている。

 そのため、人手の足りない店舗では、既存の従業員の残業や近隣店舗からの応援でカバーしようとしているが、それにも限界があり、従業員の疲弊が懸念されている。また、人材派遣サービスで対応するところも増えているが、こちらは、人件費の増加が利益を圧迫するという別の問題を引き起こしている。

 こうした状況への解消策として、加澤氏はタイミーのスキマバイトの活用を提案。品出し、レジ業務、賞味期限チェックなど、有資格者でなくても行える業務にスキマバイトを活用することで、従業員の負荷が軽減できる。しかも、タイミーワーカーが品出しをすることで、手の空いた従業員は接客ができるようになるため、販売のチャンスも増える。加えてタイミーの料金は、人材派遣の単価より安いため、人材派遣から切り替えることでコストダウンも見込めるというわけだ。

ドラッグストア業界に対し、「タイミーを活用した人材確保の安定化策を提案したい」と意欲を示すタイミー事業推進1部カスタマーサクセスの加澤雅之氏

 実際、導入企業では、大きな成果も出ている。ある大手ドラッグストアでは、改装時の閉店業務を派遣サービスからタイミーに切り替えたところ、年間で数百万円のコストダウンにつながった。また、都市中心部の店舗でも人材派遣からタイミーに切り替えたことで、年間数百万円のコスト削減や数十時間の残業削減ができ、従業員の働く環境も改善したという。

 とはいえ、求人への応募もない地域で、スキマバイトが確保できるのか。そうした懸念に対し加澤氏は、「心配ない」ときっぱり。「毎月求人媒体に数万円かけて1年募集しても応募者がなかった店舗でも、マッチング率(募集をかけて採用できた割合)が90%を超えるところもある」と根拠を示す。

 加澤氏の自信の裏付けとなっているのは、パート・アルバイトとして定期的に働けなくても、スキマバイトでなら働けるという層が存在することだ。例えば、「小学生の子どもがいて長時間は働けないが、子どもが学校に行っている間は働きたい」という主婦層は多い。タイミーはこうした潜在的な働き手を掘り起こし、スキマバイトのワーカーとして活用することで、安定的な人手の確保につなげているのだ。

ドラッグストア業界では、タイミーの導入店舗が急拡大しており(グラフ上)、求人数も急増している(同下)

担当者とマニュアルで安心して働ける環境を提供

 スキマバイトの活用は、「その時々の人手の確保だけでなく、長期的な働き手の確保の面でも有効」と加澤氏は指摘する。単発の仕事を経験したワーカーがその職場を気に入れば、リピーターになる可能性は高い。そうなれば、毎回仕事を教える必要がなくなるため、業務の効率化にもつながる。さらに、リピーターになったワーカーはパートやアルバイトになる確率も高まる。慣れた職場でこのまま働き続けてもいいと考える人が多いためだ。実際、加澤氏が担当したドラッグストアでも、利用開始3カ月で数人のタイミーワーカーがパートに転じた例がある。しかも、店舗で働いた経験があるため、「想像していた仕事(職場)と違う」と、すぐに辞めてしまうリスクも低い。

 加えて、新たなお客の獲得という効果も期待できる。「ワーカーさんの仕事終了後のコメントを見ると、『品出しでいろんな商品を見る中で、欲しい商品が見つかった。今度、店舗に買いに行こう』といったコメントがかなりある」と加澤氏は言う。つまり、タイミーの仕事をきっかけにワーカーが店に関心を持ち、自らがお客になることも考えられるのだ。

 こうしたメリットを得るためには、スキマバイトのワーカーが気持ちよく働ける環境づくりが重要になる。その一つとして加澤氏が提案するのが、スキマバイト担当者を設けることだ。初めての職場は誰でも不安になるが、そんな時、サポートしてくれるスタッフがいれば、心強い。さらにもう一つ重要になるのがマニュアルだ。加澤氏は、ワーカー用のマニュアルに加え、ワーカーを指導する側のマニュアルも用意することを勧めている。これは、人によって教える内容や教え方にバラツキが出ることを防ぐためだ。

タイミーでは、応募してきたワーカーの情報を事業者が確認できるので、ミスマッチがおきにくい

 このほか、会社の従業員管理の仕組みをスキマバイトにも適用できるようにしておくことも欠かせない。多くの企業では、従業員管理の仕組みやルールがスキマバイトのワーカーを対象にしていない。そのため、タイミーの導入が決まってから従業員管理の仕組みを変更しなければならず、サービスの導入が計画より遅れるケースもある。スキマバイトは新しい働き方だが人手不足が慢性化する中、今後は恒常的に必要になると考えられることから、従業員管理の対象にスキマバイトのワーカーを組み入れることが望ましい。

 タイミーのサービスで、特に評価が高いのが、「求人に応募がないエリアでもタイミーなら人手が確保できる」点だが、加澤氏は、これをさらに進め、実際にサービスを活用して得られた様々な成果を定量的に示すことができないか検討している。「これが実現できれば、当社のサービスを利用していただくメリットをより実感して頂ける」(加澤氏)はずだからだ。もう一つ、加澤氏は、有資格者をスキマバイトとして活用することも考えている。「薬剤師は難しいが、登録販売者のスキマバイトを実現したい。それができれば、資格を持つ人は日本中どこにいても働けるし、ドラッグストア側も安定的に人材を確保できる」(加澤氏)からだ。

 2025年に10兆円産業を目指すドラッグストアは、小売業の中でも数少ない成長産業だ。その成長をより確かなものにするために、スキマバイトを活用した人手確保の重要性が増している。