スキマバイトの活用で多くの企業が懸念するのが、直前のキャンセル(ドタキャン)だ。兵庫県内でドラッグストアや調剤薬局を展開するゴダイは、この店で働きたいと思う〝ファン〟を増やすことでドタキャンの防止につなげている。ゴダイの川邉整治執行役員営業統括事業部長と中谷嘉伴ドラッグストア部長、名定秀章上野田店店長、タイミー関西事業部カスタマーサクセスの笠原太氏が、その取り組みについて語った。

簡単業務にタイミーを活用し従業員の作業効率を改善

 ――コロナの5類移行に伴い、労働者の流動化も進んでいます。御社の人手の確保状況はいかがでしょう。

 川邉 店舗により人手の充足状況は異なりますが、特に北部の人口が少ないエリアでは2022年の秋ごろから人手不足が徐々に表面化してきましたね。そのためシルバー人材センターの活用や身障者雇用と組み合わせるなど、安定的な人手確保の方法を模索しています。

 ――合わせてタイミーの活用も始められました。導入を決めたポイントはどんな点ですか。

 中谷 担当の笠原さんの丁寧な説明を聞き、昨今の人員確保が困難な状況に対して、欲しい時間に欲しい人数を確保できることで、人件費が抑えられる点、また、当社とワーカーさん双方が望めば、固定のパート・アルバイトとして採用できる点などが決め手になりました。

 ――どんな業務でタイミーを活用されているのでしょう。

 中谷 納品された商品を棚に陳列する作業ですとか、毎月月末に行うガラガラ抽選会の対応などです。いずれの業務も知識や経験がなくてもできるので、初めての人でも不安なくやってもらえると思います。

 川邉 そうした簡単な作業でもやってくれる人がいることで、従業員はレジ業務や棚替えなどに集中できますので、生産性も高まります。特に、納品される商品の量が多い日や主婦のパートさんの休みが多くなる週末には、とても助かっています。

 ――タイミーは募集すれば、人手が確保できる状況なのですか。

 名定 上野田店(兵庫県姫路市)では、納品業務は人手が間に合っているので、抽選会のみで募集しています。朝の9~13時、18~20時のお客様の多い時間帯に絞って1日2名、4日間合計で8名を3~4日前に募集していますが、毎回すぐに応募があります。早い時だと募集の5分後に採用となり、応募がなかったということはこれまで全くありませんね。

 ――何か募集方法についてアドバイスをしているのですか?

 笠原 早めの募集と複数日程での募集をお勧めしています。早めに募集すれば、予定が空いているワーカーさんも多いですし、また、複数日程で募集することで、ワーカーさんの選択肢も増えるので、応募しやすくなります。実際、上野田店さんも早めに募集されていて、11月下旬の段階ですでに12月31日分まで決まっています。

左から、ゴダイの川邉整治執行役員営業統括事業部長、中谷嘉伴ドラッグストア部長、タイミー関西事業部の笠原太カスタマーサクセス、ゴダイドラッグ上野田店の名定秀章店長

100名超のお気に入り登録が安定した人員確保につながる

 ――現在、タイミーを活用している店舗はどのくらいあるのでしょうか。

 中谷 ガラガラ抽選会は40~50店舗で、納品作業は20店舗程度です。

 ――タイミーを導入する上で、心配した点などはありませんでしたか。

 川邉 一番懸念したのが、直前のキャンセル、いわゆるドタキャンというものですね。一般的な求人媒体で募集した際、応募された方に連絡を取ろうにも取れないということがあったので、そこが不安でしたね。

 笠原 直前のキャンセルに対しては従来、ペナルティポイントを設けて予防していますが、新たに、直前のキャンセル率が低い人を優先的に募集できる仕組みも作りましたので、そうしたものを活用していただくこともできます。ただ、直前のキャンセル予防で最も有効なのは、お店のファンを増やすことだと思います。

 ――ファンを増やすとは?

 笠原 ワーカーさんもタイミーのアプリの画面から募集店舗をお気に入り登録することができるんですね。例えば、上野田店様が募集を出すと、お店をお気に入り登録している人に「求人を出しました」という通知が届くので、すぐに応募ができる。そうしたお気に入り登録をする人を増やすことが直前のキャンセルを防ぐことにもつながるのです。

 ――その店舗で働きたいと思っている人であれば、簡単にキャンセルをしないということですね。

 笠原 また、仮に急なキャンセルが出た場合も、ほかに働きたい人は沢山いるので、すぐに次の応募があります。ちなみに、上野田店様をお気に入り登録している人は100名以上になります。先ほど店長様が「募集を出すとすぐマッチングする」と言われたのも、100名のファンの中で取り合いになっている状況があるからなのです。
名定 確かに、先月来られたタイミーさんが、「今月も入れてよかった。もう取り合いになるんです」と言っていました。

 笠原 ゴダイ様の場合、100名以上のお気に入り登録をされている店舗が数十店舗ありますし、中には200名を超えている店舗もあります。

 ――そうしたファンを増やすためにどんなことをしているのですか。

 中谷 当社は、お客様との距離が近いドラッグストアですから、親しみのあるコミュニケーションが自然な流れの中でできていて、働く方達にもそれを感じてもらえているのではないでしょうか。また、お願いしている業務は誰でもできるものですが、業務マニュアルも用意して、必要に応じて利用できるようにしています。

 笠原 当社からは、例えば、ワーカーさんをお名前で呼ぶことや、定期的にコミュニケーション取っていただくことをお話ししていますが、ゴダイ様は素晴らしい体制を敷かれていて、中谷部長様が、「うちは、タイミーワーカーさんも自社雇用のワーカーさんとして受け入れる」とおっしゃり、それを各店長さんに周知していただいています。そうした方針が浸透しているので、ワーカーさんもまた働きたいと思うのだと思います。

ゴダイでは、化粧品の販売にも力を入れている

 ――タイミーワーカーから、パート・アルバイト採用に至ったケースもあるのですか。

 中谷 繰り返し来ていただいていた方にお声がけし、篠山店(兵庫県丹波篠山市)で2名の採用につながったほか、弥栄店(京都府京丹後市)では1名、年内にパート採用となる予定です。

 ――タイミーでは、ワーカーがパート・アルバイトに転換することを推奨しているのですよね。

 笠原 はい。リピーターの方は、そのお店の雰囲気ですとか働きやすさだとかいった点を評価して繰り返し働きに来ているので、そうした方に、パート・アルバイトへの転換を打診するようお勧めしています。

 ――今後、タイミーをどう活用していく予定ですか。

 中谷 今は納品と抽選会の二つの業務だけですが、もっと活用できる業務を広げていければと考えています。

 川邉 例えば新店オープン時は、一気に納品作業が発生するので、人手が必要になることから、商品が入っていた箱やケースの片づけなどでお願いすることも考えられます。さらに、単に従業員の負荷を軽減するだけでなく、価値を生む業務にも活用を広げていくことも検討していきたいですね。

ゴダイ
 兵庫県を中心に、京都府、岡山県、鳥取県内にドラッグストア80店舗、併設を含む調剤薬局を57薬局展開。生鮮食品から日用品、化粧品、医薬品、処方薬まで取り扱うほか、介護やコンビニエンスストア事業も手掛け、地域の健康と快適なくらしをサポートしている。