10年後には20~30代となり、経済活動の主役へと躍り出る「Z世代」。これまでの世代と全く異なる価値観、消費の特徴を持っていると言われ、アプローチは容易ではない。本連載では、Z世代にホットなモノ・コトを取り上げ、展開する企業の戦略や、なぜZ世代に刺さっているのかを調査。見えづらいZ世代のニーズや生態を掘り起こすとともに、 若年層から巻き起こる“ニュートレンド”が、今後の生活や消費の“ニュースタンダード”になり得る可能性を探る。

既存の就活は「個性が死んでしまっている」

 皆同じようなリクルートスーツを着て、業界・業種で機械的に分類された企業群から志望先を選ぶ。面接では、対策本に従って、企業の望む人物像に自分を合わせる――。

 日本の就職活動につきまとう、どこか無味乾燥で紋切り型のイメージ。そんな慣習を打破しようとするサービスがある。アレスグッドが展開する「エシカル就活」だ。同サービスは一言で言えば、社会課題の解決に意欲のある学生と、そうした人材を採用したい企業をマッチングする就活プラットフォームだ。現在就活をしている、あるいはこれから就活を始めるZ世代は、SNSネイティブであり、「個」の発信に積極的。彼らのキャリア志向は、一つの安定した会社で勤め上げる長距離走型から、自分らしい働き方ができるか・スキルアップが見込めるかなどを重視する傾向に変わってきている。またSDGsの理解も浸透しており、人権意識も高い。エシカル就活はこうしたZ世代のニーズを捉え、支持を高めている。

 エシカル就活の最大の特徴は、社会課題を軸に企業の情報を収集できることだ。これまでの就活において、学生は「金融」「メーカー」など、業界・業種から企業を絞り込んでいくしかなかった。が、エシカル就活は「気候変動」「ジェンダー」といった項目でフィルタリングが可能。興味のある社会課題を切り口に、より自分の価値観に合った企業を探せるのだ。

企業の検索画面だけを見ても、従来の就活サイトとの違いは一目瞭然

 例えば学生が「気候変動」を選択して検索すると、気候変動に関連する取り組みをしている企業がピックアップされる。各社のページでは具体的な事業内容やパーパスのほか、そこで働く社員の声などがまとめられており、気になる企業があれば直接エントリーもできる。また企業側も、学生が登録している経歴や興味のある分野を閲覧でき、「これは」と思う候補者がいれば直接スカウトすることも可能だ。

 アレスグッドを立ち上げたのは1998年生まれのZ世代起業家、勝見仁泰氏だ。勝見氏の原体験は、高校時代にバックパッカーとして訪れたフィリピンの縫製工場で児童労働の現場を目撃したことにあるという。「事業を通じて社会に良いインパクトを与えられないか」。そんな思いを抱えた勝見氏は起業経験などを経て、大学3年の夏に就職活動を開始。しかし貧困解決など課題意識を持って就活をしたものの、既存の就活サービスでは業界や業種ごとでしか企業を探せず、途方に暮れた。「同じ志を持つ友人たちも同じ悩みを抱えていた。既存の就活というシステムの中で、まるで人それぞれの個性が死んでしまっているように感じた」

「エシカル(倫理的)」を冠した今までにない就活サービスは、勝見氏のこうした思いから生まれた。2021年5月のローンチから2年余り、エシカル就活の登録者は既に約1万名、掲載企業は80~100社に上っている。

アレスグッドの創業者で、代表取締役CEOを務める勝見仁泰氏

次ページは 学生と企業双方がサービス価値を実感

この記事の購読は有料購読会員に限定されています。
まだ会員登録がお済みでない方はこちらから登録ください。
有料購読申込

すでに会員の方はこちらから