アフターコロナの機運高まり出展者は前回比1割増に

 全国スーパーマーケット協会は、「第58回スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)2024」を来年2月14~16日の3日間、千葉市の幕張メッセ全館で開催する。

 SMTSはスーパーマーケットに関わる様々な業種が集うBtoBの商談展示会だ。食品・日用品メーカーから卸、資材関連、店舗開発、情報サービス系企業、さらには官公庁や地方自治体などが出展。小売業を中心としたバイヤーが多数来場し、新たなビジネス開拓の場として、また業界の最新トレンドが収集できる場として支持を得ている。

スーパーマーケット・トレードショー2023の開会式の様子

 新型コロナが拡大したこの数年も、SMTSは感染防止策を徹底し、リアルでの開催にこだわってきた。感染のピークアウトが見え始めた前回のSMTS2023には延べ2046社・団体が出展。「3年ぶりに訪れた」と語る地方スーパー関係者も少なくなく、来場者は3日間で6万2525名に上った。全国スーパーマーケット協会の横山清会長は「出展商品の幅も広がり、奥深いショーとなった」と総括、改めてリアル開催の価値を示す展示会となった。

 今回はコロナが5類に移行して初の開催となる。足元では人流が大きく回復している一方、値上げや円安、人手不足などスーパーマーケットを取り巻く環境変化も加速しており、展示会の重要性は増している。SMTSチームリーダーの吉沢敦氏は、「コロナでこの間少し様子を見られていた企業・団体さんも再び出展意欲が高まっているのを感じる。本格的なアフターコロナを迎え、皆様のSMTSへの期待の大きさを感じている」と気を引き締める。

 SMTS2024の出展者数はまだ確定していないが、前述の機運もあり、前回比でおよそ1割増となる見込みだ。コロナの期間中、出展を控えていた菓子卸の髙山、包装・什器関連の折兼などが今回久々の出展を予定している。

 また来場者数も前回より増えることが期待されるが、吉沢氏は「単に数だけを目標に掲げることはせず、業界に関係のある質の高い来場者を増やしたい」として、集客活動に力を入れる意向だ。

「食のトレンドゾーン」に「インバウンド×食」ゾーンを新設

 今回も前回同様、「第58回SMTS2024」を中核として、同じく全国スーパーマーケット協会主催の「デリカテッセン・トレードショー(DTS)2024」、食品産業センター主催の「第19回こだわり食品フェア2024」を同時開催する。

 会場となる幕張メッセ全館のうち、1~8ホールではSMTSの「生鮮」「加工食品」「菓子・スイーツ」「飲料・酒類」「設備・資材」「店舗開発・販促」の各ゾーンと、DTSを設ける。9~11ホールではSMTSの「地方・地域産品」ゾーンと、こだわり食品フェアで地域の豊かな食を提案する。

 中でも今回注目の主催者企画が、「食のトレンドゾーン」に新設した「インバウンド×食」ゾーンだ。コロナの収束とともに訪日外国人客が急速に増えており、中でも「食」分野に対する関心が高まっている状況にフォーカス。インバウンドに関する食品・情報・サービスを提案する出展者ブースのほか、インバウンド関連の様々な情報発信を行う主催者企画展示を展開する。また、ジャパンショッピングツーリズム協会と連携したセミナーなどの企画も予定。過熱するインバウンドにいかに対応するかのヒントを得られる展示となりそうだ。

幕張メッセ全館でSMTS2024、DTS2024、第19回こだわり食品フェア2024を同時開催する(写真は前回の様子)

 また前回に続き、「冷凍」と「サステナビリティ(持続可能性)」をテーマにした二つのゾーンも設ける。「冷凍×食」ゾーンでは、単身世帯の増加やライフスタイルの変化で拡大する需要を捉え、時短・簡便につながる冷凍惣菜・調理冷凍食品、凍菜などの冷凍素材、冷凍機器などを扱う企業が出展予定。「サステナビリティ×食」では、関心が高まるプラントベースの代替肉、ベジタリアン・ヴィーガン・ハラール対応食品、有機食品のほか、食品ロス削減やアップサイクルなどSDGsに配慮した展示が集まる予定だ。

 SDGsは一展示のテーマにとどまらない。展示会全体のテーマとして、主催者自らも食品ロス削減、環境に配慮した会場運営に取り組む。前回に引き続き、出展者から回収した食品と資材はフードバンクに提供するなどの取り組みを推進する。

 主催者企画では、全国から選りすぐりの国産酒類を提案する「てづくりNIPPON」を今回も展開する。日本酒、焼酎、クラフトビール、日本ワイン・果実酒、ウイスキー・スピリッツなどを製造・販売する40社以上が出展。映像資料やパンフレット、そして何より商品そのものを通じ、造り手の技や思いを来場者に伝えることで取引拡大につなげたい考えだ。

「食のトレンドゾーン」の「冷凍×食」の提案。今年は「インバウンド×食」をテーマにしたゾーンを新設
「てづくりNIPPON」の展示ブース

 今回の展示会では〝リアル回帰〟がもう一段進む見通しだ。東京商工会議所との共催で行っている個別商談会「ビジネスマッチング」では、今回からコロナ禍対応のオンライン併用をとりやめ、完全リアルにシフトする。3日間で前回より多い最大700商談を実施する計画だ。またジェトロ(日本貿易振興機構)主催の輸出商談会では、4年ぶりに海外バイヤーが来日することが決定している。吉沢氏は「国内市場が縮小に向かう中で、輸出への潜在的関心は高まっている。こうした企画を海外販路の開拓に役立てていただきたい」と力を込める。

 4年ぶりといえば、コロナ禍でオンライン配信となっていた「セミナーステージ」も今回から再びリアル開催となる。横山会長による「SMTSスピークス」をはじめ、スーパーマーケットの旬の話題を取り上げる講演を多数用意。生の熱気を帯びた久々のステージは要注目だ。

 そのほか、コロナで取り組みを一時休止していた「Future Store 〝NOW〟」もこの度再始動の運びとなった。同プロジェクトは、未来のスーパー像を研究すべく、全国スーパーマーケット協会の会員小売業と、ソリューション企業が共創しながら推し進める協議体だ。今回、20年2月以来となるブースをSMTSに展開し、研究成果やソリューションの発表を行う予定。これを機に再び意見交換の場を設け、食品流通に関わる全ての事業者を巻き込みながら未来に向けた可能性を探っていく考えだ。

ニーズを捉えたデリカがお弁当・お惣菜大賞に集結

 中食に特化した商談展示会「DTS2024」では、デリカに関する企業・団体のブース出展、恒例企画の「お弁当・お惣菜大賞2024」の表彰式や受賞商品の展示を行う。受賞商品の一部はフードコートで販売され、その場で喫食することも可能だ。

お弁当・お惣菜大賞を受賞した商品は会場で一部販売も行う

 お弁当・お惣菜大賞は日本全国からエントリーされた弁当・惣菜など11部門の中から優れた商品を選出するアワードだ。今回のエントリー商品の特徴としては、現場の人手不足を背景に、なるべく手をかけずにおいしく、見た目良く作れることをアピールする商品が目立っているという。また原料価格が安定している肉を使った肉寿司や、2、3種のメニューを1皿に盛り込みお得感を出した弁当なども増加傾向とのことだ。

 さらにDTSの会場では、店内調理の導入提案として来場者に実際に食べて体験してもらう「食べくらべ体験STAND」を設置。前回はスチコンを使ったピザをふるまい、生産性の高さ、味の良さをアピールしたが、今回はドリアで実施する。またこちらも恒例となったデリカに関する情報をまとめた冊子「惣菜デリ最前線2024」を無料配布するほか、DTSに連動して年間で行う勉強会「デリカスタディ」を今回も開催する。今年は既に5月、7月、11月に実施しており、お弁当・お惣菜大賞受賞の秘訣などを学べることから受講者からも好評。来年1月にも開催を予定している。

「食べくらべ体験STAND」今回はドリアで実施

 このほか、展示会をフォローする機能として、全国スーパーマーケット協会が運営するポータルサイト「リテールトレンド」内に、出展者・商品の検索システムも構える。出展者と来場者がメッセージをやり取りできる機能やニュース配信などのコンテンツも充実させ、「展示会の事前・事後でご活用いただけるものにしたい」(吉沢氏)考えだ。

 コロナの拡大局面は去ったが、スーパー各社は落ち着く間もなく新たな課題に直面している。業界の行く先を捉え、ビジネスをさらに発展させるためにも、本展示会で得られる情報や交流の価値はますます高まりそうだ。

〇SMTS2024注目ブース/双日食料「肉一番」「NIKUVEGE」/商品力強化と植物肉商品の開発で安心安全な畜産加工

品を提案

出展ゾーン:生鮮
ブース番号:2-304

〇SMTS2024注目ブース/ブルーチップ「乾燥野菜」/「コンセプト商品」開発でおいしさと利便性を実現 

出展ゾーン:加工食品
ブース番号:5-310

〇SMTS2024注目ブース/クレオ/最新鋭のサニテーション提案、自動化で衛星レベルの向上と人手不足に対応

出展ゾーン:設備・資材ゾーン
ブース番号:7-317

〇SMTS2024注目ブース/レイテック「LIEBHERR」/最大限の消費電力削減効果を強く訴求

出展ゾーン:設備・資材ゾーン
ブース番号:4-201