トラックドライバー不足を背景にした2024年問題への対応が迫られる中、流通業界ではパレット輸送に対する関心が高まっている。だが、パレット輸送には空パレットの管理や回収スキームの構築など大きな負担が発生する。そこで、この課題を解消する手段としてレンタルパレットに注目が集まっており、中でもトップシェアを持つ日本パレットレンタル(JPR)の存在感が高まっている。JPRはパレットレンタルの普及とDXの推進により、2024年問題の解決に力を入れている。

今年9月に代表取締役社長に就任した二村篤志氏

パレット輸送を促進するレンタルパレット

 ドライバーの時間外労働の上限規制導入が迫り、流通業界はその対応が求められている。特に長距離輸送が成り立たなくなると懸念する声が大きい。深刻なドライバー不足で手荷役を伴うバラ輸送を敬遠する物流事業者も増えている。また、発荷主が自社所有パレットで輸送し、着荷主で手下ろしによる荷役を行う事例などもあり、卸や小売業のセンターでの車両の長時間待機の一因ともなっている。企業によってパレットサイズが異なることも多く、着荷主が管理しにくいこともあることから、T11型の標準型サイズのパレットへの移行を行政も呼び掛けている。

 JPRのレンタルパレットは、こうしたパレット輸送の課題解消の手段として注目を集めている。JPRはT11型の標準型サイズのパレットを約1000万枚保有し、標準型サイズのレンタルパレットでは国内で圧倒的なシェアを有する。加工食品・日用品業界のメーカー、卸売業、小売業または物流業者の三者を中心に、多様な業界・業種の企業に年間約5000万枚のパレットを貸し出す。JPRのレンタルパレット出荷枚数は年々増加し、それに伴いレンタルパレット市場は毎年拡大している。

 政府でもレンタルパレット輸送を活用した荷待ち・荷役時間削減を目指す、持続可能な物流構築に向けたガイドラインを今年6月に策定した。今年9月にJPRの代表取締役社長に就任した二村篤志氏は「2024年問題への対応のために、レンタルパレットの導入を相談したいという要望が増えている」と企業の関心の高まりを語る。

 2024年問題の最大の課題は、ドライバーの拘束時間の長さにある。内閣府のデータによれば、ドライバーの拘束時間のうち運転時間は6割程度。残りの4割の多くが荷待ち時間や本来の業務ではない荷積み・荷下ろしの荷役に割かれている。この荷待ち・荷役の短縮につながるのがレンタルパレットの活用だ。荷物をユニット化できる標準パレットは、保管やトラックへの積み込みが効率よくできる。さらに同じレンタルパレットでメーカー、卸、小売業まで一貫して輸送・管理できる「一貫パレチゼーション」によって、荷役にかかる時間は手作業の4分の1で済む計算だ

納品伝票の電子化と合わせて一貫パレチゼーションを推進

 JPRは、こうしたレンタルパレットを運用する仕組みを整えている。メーカー、卸売業、小売業と複数の企業にまたがるレンタルパレットを効率的に活用し、循環させる共同回収システムを構築。パレットを利用する企業は回収や紛失の問題に悩まされることなく、安心して輸送に専念できる体制ができている。実際にパレット化が遅れていた冷凍食品、菓子、紙製品、農産物の業界でレンタルパレットの活用が進んでいる。

 JPRの強みはパレット回収の仕組みと同時に、DXを推進している点にもある。物流の現場では紙伝票が多く使われている。この紙伝票の受け渡しや整理に時間がかかり、ドライバーや物流・配送センターの人員にとっては大きな負担となっており、DXの導入が急務だ。

レンタルパレットの共同回収システム「一貫パレチゼーション」の活用で荷役にかかる時間は手作業の4分の1まで短縮する

 そこでJPRは昨年9月、納品伝票電子化・共有化システム「DD Plus」(ディーディープラス)の提供を開始した。同システムは出荷側(伝票発行側)、入荷側(受理処理側)の両者が納品書をペーパーレス化することで、紙伝票の取り扱いにかかる作業時間を削減、さらにデジタル化したデータを活用することによって、検品時作業の効率化を実現している。

 今年8月には、加藤産業とヤマサ醤油、JPRの3社によるDD Plusを活用した検品省力化の取り組みが評価され、日本ロジスティクスシステム協会が主催する「2023年度ロジスティクス大賞」において、「ロジスティクス大賞 社会性特別賞」を受賞した。二村社長は「一貫パレチゼーションの普及促進には納品伝票の電子化も一体となって運用することが非常に大事。当社子会社のTSUNAGUTEが運用するバース予約システムと合わせて提案していきたい」と力を込める。

 2024年問題の解決には物流の生産性向上が欠かせないが、日本の物流は欧米に比べて低いという指摘もある。二村社長は「生産性を高めれば2024年問題もクリアできる。一貫パレチゼーションや納品伝票の電子化を推進することで物流課題の解決に貢献し、さらには日本を物流先進国にしたい」と意欲を示す。現場の物流の負荷軽減と生産性を高めるためJPRは挑戦を続けていく。

JPRは納品伝票電子化サービスに先立ちパレット伝票を電子化した