1万4000の物流拠点が利用するレンタルパレットのシステムと連携

 納品書のペーパーレス化、デジタル化された物流データの活用による検品作業の省力化が動き出そうとしている。背景にあるのは、労働力不足による物流危機だ。とりわけトラックドライバー不足は、「2024年問題」が間近に迫る中で社会的に大きな課題だ。それであるのに、物流現場の納品伝票は、紙の運用が一般的で印字や納品前後の照合作業に長時間を費やしている。電子化が望まれる物流現場の納品書ではあるが、データフォーマットの標準が定められていないことや、特に食品や日用品のサプライチェーンは、多数の企業のつながりによって成り立っており、それぞれ異なる仕様の伝票を使用してきた経緯もあり、電子化が進んでいなかった。

 こうした物流業界の課題解決に向け、日本パレットレンタル(JPR)は、納品伝票電子化・共有化システム「epal DD Plus」(イーパルディーディープラス)のサービスの提供を始めた。出荷側(伝票発行側)、入荷側(受理処理側)の両者が納品書のペーパーレス化によって、紙伝票の取り扱いにかかる作業時間を削減、さらにデジタル化したデータを活用することによって、検品時の作業の効率化を図るものだ。

 JPRは、レンタルパレットと同様に、納品伝票電子化においても「標準化・共同化」をコンセプトにしている。2019年から「デジタルロジスティクス推進協議会」に参画し、多くの加工食品・日雑メーカー・加工食品卸・物流事業者などと、納品伝票電子化に関する標準データフォーマットと標準運用手順を策定してきた。epal DD Plusは、同協議会で策定し、日本加工食品協会が承認した標準フォーマット「事前出荷通知情報」に準拠。利用者が抱えるデータフォーマットの乱立への懸念を解消している。

 また、レンタルパレットサービスの事業基盤と連携していることも特徴だ。JPRレンタルパレットの利用企業は、「epal」というシステムでパレットの受け払いを行っており、その利用拠点数は1万4000に及ぶ。パレット伝票電子化は先行して進んでおり、パレット伝票電子化のソリューションである「epal DD」の普及も進んでいるという。epal DD Plusは、このepalおよびepal DDのネットワークと連携、レンタルパレットの利用者は、普段使用しているIDや相手先のコードをそのまま利用でき、納品伝票データの送受信と、レンタルパレットの受け払いがワンストップで完結できるようになる。

パレットシステムの約1万4000の物流拠点と連結

荷受け・荷待ち時間を減らしドライバー不足の解決に貢献

 現状の紙の納品伝票は、一般的に複写式となっており、各社ごとに仕様がバラバラで統一化されていない。そのため出荷側の物流事業者では、仕様が異なる伝票を印刷、得意先・納品車両ごとに伝票を仕分ける作業が発生。入荷側の卸や小売りなどは、その受け取った伝票と自社データを検品時に目視して照合する作業に多くの時間をかけている。また受領印押印後の納品書の収受や回収、荷主への返送や保管が必要で後日確認が必要になった場合は、大量の伝票から探す作業も大きな負担となっている。

 実際に大型トラックドライバーの調査例では、拘束時間のうち「運転」は約62%にとどまり、約16%が「荷受け・荷待ち」に費やされている。ドライバーの長時間労働の緩和には、この「荷受け・荷待ち」の拘束時間を減らすことが重要だ。広報担当者は「デジタル化された情報を企業間で共有することで大きなメリットが得られる」と力を込める。

 そこで納品伝票の情報に、消費期限などの情報を加えた事前出荷情報の送受信にも対応。事前出荷情報を使った検品レスの導入では、ドライバーの手持ち・検品・手続き時間を1日あたり約10~36%減らすことが確認されている※。

出荷側、入荷側の紙伝票に起因する物流現場の課題(上)、国土交通省トラック運送状況の実態調査結果の大型数値を参考に作成(下)

他システムとの調和を図り普及拡大を目指す

 納品伝票電子化の普及にあたっては、他のシステムとの連携を考慮に入れている。例えば、epal DD Plusで生成した納品伝票データを既存のプラットフォームを介して交換するような利用方法も考えられる。アプリケーション間の連携についてもJPR関係会社のTSUNAGUTE社の伝票運用効率化サービスのほか、外部システムと連携していくことも検討。広報担当者は「他のシステムやプラットフォームと競合するのではなく、他のシステムと連携し調和するシステムを目指している」と協調する仕組みであることを強調する。

 JPRは、もともと「物流現場の人々を重労働から解放したい」という強い想いから1971年に創業。レンタルパレットの循環の仕組みを利用企業との協働により作り上げてきた。その実績から足元の喫緊の課題である労働力不足の問題にも、標準化と共同化をコンセプトに、企業と企業をつなぐ事業の独自性を生かしたDXによる新たな協働の仕組みの浸透に挑戦している。