日本パレットレンタル(JPR)は、創業50周年となる12月1日、「企業・業界を超えた標準化・共同化で実現するDX」をテーマにオンラインセミナーを開催した。
セミナーでは、まず、野村総合研究所の藤野直明主席研究員が、国が掲げる総合物流施策大綱の概要と物流業界で近年注目される「フィジカルインターネット」について解説、今後、DXによりあらゆる物流が統合されていくという物流の未来像を示した。続いて、JPRの加納尚美社長が、同社の50年の歴史と、2030年に向け、同社が目指す「オープンシェアリング」について説明。標準化されたパレットを使った効率的な物流の仕組みづくりへの挑戦を振り返るとともに、環境負荷軽減や働き方改革など、新たな社会課題の解決に、物流資産や情報を外部と共有する「オープンシェアリング」の発想で取り組む方針を示した。さらに、オープンシェアリングの事例として、ライオンの平岡真一郎 執行役員SCM本部長が、化粧品・日用品業界の共同物流の取り組みを紹介。1980年代から現在に至るまで、取り組みの進化・拡張の経緯を踏まえ、「ライバル同士であるメーカー各社が、共通認識を持って協調して取り組んだことが物流の全体最適という成果につながった」と説明した。
加納社長によれば、1970年にT11型パレットのJIS規格が制定されたが、当時はすでに企業ごとに異なるサイズのパレットが使用されており、標準化による効率的な管理・運用が難しかったという。そこで、JPRでは、T11をレンタルで運用しながら、時代とともに変わる利用者のニーズに対応し、パレットの運用の仕組みづくりを推進してきた。その中からは、顧客の加工食品メーカーによるレンタルパレットの共同利用・回収を推進する活動(P研)も生まれ、19年には335社が参加する「加工食品業界におけるパレット輸送のデファクトスタンダードへと成長した」(加納社長)。P研の活動は19年に終了したが、その取り組みはJPRが引き継ぎ、拡大を図っている。また、情報のデジタル化により管理業務の効率化、情報の共有化も推進。労働力不足への対応とサービスの安定的、継続的な提供にも力を入れている。さらに加納社長は、「パレットの共同利用は、環境負荷軽減、持続可能な社会の実現に大きく貢献する。今後は、外部とつながり開き合うことで、新しい価値を生み出していきたい」と強調。パレットの共有にとどまらず、ロジスティクス、情報、さらにそれらをマネジメントする機能までをオープンにし、外部のシステムとつながることで、より広範囲な物流の最適化を目指す。
「多くの利用者に利用されるサービスが、標準化と共同化のメリットを利用者に還元できるサービス」(加納社長)との発想に立ち、より多くのパートナーとの連携を進める構えだ。