業界特化型インフラ構築を標榜するプラネットは、EDI(電子データ交換)や業界横断型商品情報レジストリーの構築を進めている。田上社長に新たな取り組みについて聞いた。

円安が進行しアジアで日本の注目が高まる

 ――日常生活はアフターコロナに移行しています。日用品・化粧品業界の状況は。

 田上 外出の機会が増えて化粧品やエチケット商品が購入されるようになりましたが、自宅時間を充実させる付加価値商品を購入する傾向は続くと見ています。コロナ禍後もECでの商品購入率は増えています。

 ――確かに、ECでの商品の購入は定着しました。

 田上 実店舗も堅調です。当社でも消費者調査レポート「インターネットは一般消費財流通をどう変えるか 2022」を発行し、その調査では15の商品カテゴリー、販売チャネルでの買い物実態の調査を実施。結果、ドラッグストアで食品、菓子、飲料を購入する方は4割を超え、逆にスーパーで日用雑貨を購入する方も5割を超えるなど業態の垣根はより低くなっていることがわかります。ワンストップショッピングで購入できる便利性がより求められています。

 ――日用品業界を中心に、商品の値上げ問題にも直面しています。

 田上 日本は、メーカー、卸売業、小売業の三者間の協力で、世界的にも日用品・化粧品の価格は非常に安く抑えることができています。ただ、今年から原材料調達の面では急激な円安と原料高騰などによって、グローバルサプライチェーンが不安定になってきました。食品業界ではすでに相次ぐ値上げが実施されていますが、これから日用品業界の値上げも避けられません。生活者は衛生、健康的で快適な日常生活に必要な日用品の使用量を減らせません。そのため値上げは、生活者に大きな影響があると考えて、慎重に進められると思います。

 ――6月から入国制限が緩和され、外国人観光客の受け入れが再開されました。インバウンド需要への期待は。

 田上 インバウンド消費は、各国の政策や政治判断をより注視して対応する必要があります。特に日用品・化粧品業界は、中国、香港、台湾の旅行者が消費を牽引してきたことから、このエリアの旅行者が戻ることが大事です。昨年の同じ時期の取材では、中国のインバウント需要の戻りは早いと予想しましたが、まさか、その後に上海が2カ月にわたりロックダウンするとは考えもしませんでした。一方で円安が進行して、日本での買い物の注目度がアジア全体でより高まっています。海外旅行が解禁となれば、富裕層を中心に日本に行きたいという声は非常に多い。日本製品はもちろん安いですが、海外製品も世界一安く買えるのが今の日本なのです。

 ――中国、香港、台湾は、入国時の検査と自主待機も免除されています。規制緩和や政策の潮目が変われば、一気に訪日客が増えることは予想できます。

 田上 当社でも定期的に訪日経験のある中国の方に商品の購入に関してアンケート調査を実施しています。カテゴリー別では化粧品(74.5%)、日用品(62.5%)、医薬品(56.1%)、 衛生用品(49.4%)、食品(44.5%)の順で購入したいと回答。越境ECでも日本製品は購入できますが、取り扱い商品は限定されています。日本に来れば、実際に商品を見て、触って、多くの商品から選べることから、政策が変わればインバウンド消費の復活は十分期待できます。足元では欧米や東アジアなどからの訪日客が戻ってきています。欧米の方々は、マスク着用への抵抗感が強いので、日本製の高機能マスクを提案し、訪日客の皆さまがより快適に過ごせるように、業界全体でサポートする必要もあります。

商流、物流のデータ基盤の構築に協力

 ――御社では物流インフラ構築への取り組みも広がっていますね。

 田上 当社は、37年間、メーカーと卸売業で企業間のEDIの業界特化型インフラ構築に取り組み、多くの企業に継続利用をいただいています。消費財流通業全体を考慮すると、次にインフラ構築を迫られているのが物流業界です。2024年4月に施行される「働き方改革関連法」では、法律で定められた時間外労働時間の上限規制がドライバーに適用されます。すでにドライバー一人あたりの労働時間は減り、労働賃金も上昇傾向にあります。企業の物流経費は高止まりし、場合によってはトラックが手配できずに商品が届けられない可能性も出てきます。

 ――確かに、物流業界の課題となる「2024年問題」は目の前に迫っています。

 田上 そこでこの課題を受け、当社では政府が主導しているSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)に採択された「スマート物流サービス」の実験に協力しました。日用品・化粧品業界の製・配・販が協力し、安定的に持続可能な商品供給を行うための物流領域のEDI実装を進めています。当社がこれまで標準化に取り組んできた商取引に必須である商流データと、これから標準化が進むモノの流れを可視化する物流データの両方で情報基盤を管理します。すでにASNデータからスタートし、入荷検収データの開発も進めています。

 ――物流業界の今後の見通しはどうでしょう。

 田上 まず長距離ドライバーの長時間労働を解消する方法として高速道路の自動運転は早期に実用化されるでしょう。そして、倉庫では無人化、AIによる需要予測や配送の最適化なども急速に進むと見ています。トラックと人と倉庫をつなぐ情報基盤を活用して流通全体の最適化を早期に実現し、持続化していくことがポイントとなります。その中で当社の役割としては商流、物流の両方のデータ基盤の構築に協力し、新たな付加価値を創造していくことです。

――メーカーと卸売業の企業間のEDI利用状況については。

 田上 EDIの利用社数は増え、特に接続数(相手先数)が増加しました。例えばA企業がEDIを利用すれば、そのA企業と取引のあるB企業もEDIに対応するので接続数が増えることになります。業務自動化ニーズの後押しもあり、中小の生活用品メーカーにも利用が広がっている状況です。EDIの利用社数は、22年6月末時点で1483社まで広がっています。

 ――「広く遍く」を企業理念とした御社の役割がより一層高まっています。

 田上 はい。特に発注・仕入オンラインデータの双方向通信を手軽に実現できるウェブサービス「MITEOS(ミテオス)」が貢献しています。卸売業からはEDIでの取引の要望が増えていますが、すぐに対応できないメーカーもある。その場合でもMITEOSではスタートしやすいのが特徴です。

 ――今年から業界横断型商品情報レジストリーの構築も始めました。

 田上 日本国内のJANコードを登録・管理するGS1 Japan(流通システム開発センター)と、酒類・食品業界の商品マスターを管理するジャパン・インフォレックスとの三者間で、業界横断型商品情報レジストリーの構築を進めています。当社の商品データベースは商品情報をメーカーが直接登録しているので、常に正しいデータで管理されています。利用者はデータチェックなどに膨大な時間を使う必要がありません。将来的にGS1 Japanが運営するGJDB(GS1 Japan Data Bank)を経由し、小売業や卸売業が正しい情報を簡単に入手できるようになれば商品情報の利用の幅はさらに広がります。

 ――御社が筆頭株主であるTrue Dataが昨年末に上場しました。その狙いは。

 田上 当社は業界特化型インフラを提供しているので、公平性の観点からデータも見ませんし、分析なども一切行いません。逆にTrue Dataは上場することで独立し、小売業の購買ビッグデータを扱うプラットフォーマーとして、メーカーや卸売業の役に立つ情報提供、データ分析やデータソリューションなどサービス品質の向上と領域の拡大を目指しています。より良いサービスを提供するため両社は業務提携もしました。その第一弾として「POSデータクレンジングサービス」を両社で共同開発しています。各社にとって手間がかかるPOSデータとマスタデータの整備に関わる作業を、高い品質でリーズナブルでアウトソーシングできる環境を整え、今年からサービスを提供予定です。

 ――25年に向けた中期経営戦略「ビジョン2025」の進捗はいかがでしょうか。

  田上  ビジョン2025では、15年に①企業間取引における業務効率の追求、②企業間におけるコミュニケーションの活性化、③流通における情報活用の推進、④社会に役立つ情報の収集と発信、の四つを掲げました。特に二つ目のコミュニケーションの活性化はリアルでの対話が欠かせません。今年11月のプラネットユーザー会は3年ぶりにリアル開催を予定しています。またインバウンド研究会もリアル開催に戻し、久々の訪日客を歓迎する「ウェルカムバックキャンペーン」などの企画に参加する予定です。

 ――次のビジョンは。

 田上 コロナ禍でさらに成長した社員が中心となって目指す当社の新しいビジョンを描き、発信していきたいと考えています。