400社を超える規模感とその成果が高く評価される
物流業界の働き方改革が今強く求められている。ドライバーや物流施設作業員などの時間外労働時間の上限規制を定める「2024年」問題が間近に迫る中で、物流現場では非効率な作業が依然多く存在している。特に納品書に代表される物流現場の伝票処理は紙の運用が一般的で、事務作業員は納品後に付帯作業として、日々納品書作成・管理に長時間を費やしている。社会全体で請求書、契約書の電子化は急速に進んできたが、物流業界は世の中の流れに明らかに遅れている。
そうした中でデータを連携して納品書のペーパーレス化をいち早く実現したのが、コープさっぽろの物流を担う北海道ロジサービスと、流通業界の物流伝票デジタル化を推進するTSUNAGUTEだ。両社はその功績から「2022年度日本ロジスティクス大賞」を8月に受賞した。同賞は日本ロジスティクスシステム協会が年1回主催、表彰するもので、両社の受賞は物流業界の働き方改革につながる新たな取り組みとして注目を集めている。
具体的には、コープさっぽろに納品している食品・飲料・菓子メーカー約400社、卸8社、輸送事業者約20社で電子納品伝票の統一化を果たした。これまで各社でバラバラの仕様による紙の納品書を使い、物流情報も寸断されていたことから、両社で物流情報連携の必要性と意義、達成手段などを一社一社丁寧に説明。共通のクラウド型システム「テレサデリバリー」を活用し、製配販・輸送の関係者のデータを連携。電子受領・納品伝票の統一化と、物流情報データの可視化を実現できたのだ。
今までにない400社を超える参加企業の規模感と、その成果は、今後の物流業界の働き方改革につながる解決策として同協会から高く評価された形だ。大賞を受賞した北海道ロジサービスの高橋徹専務取締役は「サプライチェーン全体の最適化に貢献でき嬉しく思う、引き続き、先進的な改革・改善に取り組みます」と語った。
電子納品書とデータ連携で省力化と環境対策を実現
紙の伝票処理作業は、複写式の紙のはがし、仕分け、付け合わせ、押印、保管、廃棄と一連にかかわるムダな作業が非常に多く煩雑だった。これらの手間だけでなく、紙は廃棄・保管費用、印刷経費など多額のコストも発生している。そのため北海道ロジサービスでは納品書の電子化を進めてきた。
最も大きな効果として伝票に関する事務作業員の作業時間が、電子化前の5分の1と大幅に削減された。さらにドライバーと荷受けの両方で電子受領や検品などの省力化を実現、対面時間も減って感染対策にも一役買っている。同時にバース予約システムも連携し、北海道ロジサービスのトラックの待機時間は、平均30分と荷受け待ちもほぼなくなっている。ペーパーレス化では伝票の印刷経費削減に加え、環境対策にも大きく貢献した。一つの伝票を作るのに平均16gのCO₂が発生しているが、同社では1日平均400枚の伝票を印刷していたことから、1日あたり6400gほどのCO₂を削減していることになる。
データ連携後のメーカーや卸、輸送など関係取引先からの評価も上々だ。加藤産業の福留尚樹札幌支店長は「当社は伝票枚数が多いため内容を確認する際に多くの時間を要しました。電子化により伝票を探す時間が大幅に改善。伝票保管のスペースも不要となり、空いたスペースを有効活用出来て助かります」とコメント。メーカーでは松屋製菓の尾和氏が「今までは単価の入った複写式の伝票を月に数回分けて帳合先に郵送していた。伝票を郵送する手間がなくなり、その分の業務が軽減された上、伝票を郵送していた切手代のコストも削減できた」とコメントを出した。製配販・輸送によるデータ連携は、各業種で様々な効果として表れ始めていることがわかる。
TSUNAGUTEの春木屋悠人社長は「物流は依然としてアナログで辛いイメージが強いです。そのアナログをデジタルに変えることが当社の役割です。『物流に関わるすべての方々にゆとりをもたらす』をビジョンに、物流現場で働きたいと思える方を増やしたい」と意気込む。同社はサプライチェーンが「つながる」仕組みの提供に力を入れている。すでに北海道の他の業界関係者とも話を進めており、北海道内でメーカーや卸、輸送業者が重複することから同様の取り組みをまずは道内で一気に広げていく予定だ。
物流業界は「2024年」問題やドライバーの高齢化などによる働き手不足だけでなく、燃料費高騰など課題は多い。働き方改革によって、サプライチェーン全体でドライバーや事務作業員が運送作業に専念するための環境作りは待ったなしの状況だ。納品書のペーパーレス化による作業軽減、省力化は今すぐにできる取り組みの一つと言えるだろう。
(冒頭画像 製配販・輸送のすべての関係者でデータ連携による効果は大きい)