物流業界は人手不足に加え、2024年4月から強化されるドライバーの時間外労働の残業規制等(2024年問題)への対応が求められている。すでに先手を打って成果を上げている企業に注目は集まるが、取り組みの進み具合は、業種業態、企業規模でバラバラだ。全国展開する生協の物流を担う日本生活協同組合連合会の物流子会社シーエックスカーゴ(CXカーゴ)は、新たな取り組みを進めている。

センターごとの要件に合わせた柔軟性の高さが導入の決め手

 CXカーゴは19年10月、TSUNAGUTEが提供するトラック予約受付システム「テレサリザーブ」を導入した。その結果、例えば、小野営業所(兵庫県小野市、冒頭写真)では、それまで荷下ろし待ちで2時間以上待機する車両が1日最大15台もあったが、現在ではほとんどなくなった。テレサリザーブ導入前、荷受け受付開始の朝7時になると、順番待ちのため夜中から待機していた車両20〜30台の行列が発生。受付簿に名前を記入した順に各バースで荷受けするという無駄な業務フローが続いていたことから、その解決に向け、トラック予約受付システムの検討を始めていた。

 小野営業所業務課の明野晋太郎主任は「現場のセンターではトラックがいつ来るのか可視化されることで段取りしやすい。ドライバーさんも、予約した時刻にセンターに行けばよく、待機時間が大幅に減ったのは良かったと好評だ」と破顔する。

 CXカーゴがテレサリザーブを導入した背景には、入庫車両の待機時間削減を目指していることがある。当初、CXカーゴでは自社製の予約システムを開発し、一部センターに導入・運用していたが、生協への拡大を検討した際に外部システム導入に方針を転換。複数のベンダーのシステムを比較検討した結果、テレサリザーブを採用し、23年に全国で21の流通センターへの導入が完了した。

 TSUNAGUTEに決めた理由についてCXカーゴ事業戦略本部事業企画室の田村寛之室長は「他社の予約システムはパッケージが固まっており、各センターの要件に合わせた設定がしにくいが、テレサリザーブは物流センターごとの要件に合わせる事ができるシステムで柔軟性が高い」と語る。それに対し、TSUNAGUTEの春木屋悠人社長も「導入に向けて何度も事前に調査。我々の見落としがちな要望や指摘を受けたことで理解も深まった」と振り返る。ユーザーからヒアリングを重ね、機能の向上や画面のユーザーインターフェース(UI)改善などの使いやすさを追求してきた。

実績データを元に予約時刻を定期的に見直す

 CXカーゴでのテレサリザーブによる予約率は平均60%で、「高い時期には70%」(明野主任)にまで上がっている。トラックドライバーの働き方改革・法令遵守の推進を方針に掲げ、来場頻度が少ない事業者にもテレサリザーブを利用できるようにドライバーにも導入を提案。待機時間が30分を超えないように工夫を凝らしている。このようなテレサリザーブのメリットを訴求することで利用促進を図り、予約率をさらに引き上げる計画だ。

 CXカーゴでは、テレサリザーブの運用の見直しを定期的に行っている。荷物量や荷下ろしにかかる時間のデータを参照し、2、3カ月に1回は荷物量に合わせた予約の時間枠や車両台数設定を修正。春木屋社長は「テレサリザーブをフル活用されている。使い続けることで副次的な効果が生まれている」とデータが可視化されることのメリットを説明する。

テレサリザーブを導入することで待機時間の大幅な削減を実現できる

 CXカーゴは、2024年問題の対応としてパレット化も推進してきた。トラック予約受付システムを導入しても、手作業による荷役が続いている状況では作業効率が上がらないからだ。春木屋社長は、「ある事業者では、10トントラックの荷物をすべて手下ろしで行っていたため、作業が完了するのに2時間かかっていた。手下ろしのトラックが何台も続けば、後続のトラックの待機時間に影響が出てしまう。これを避けるため、パレットの活用や、ロボットを始めとしたマテハン機器の導入による作業の自動化などで荷役時間を削減することも重要である。また、ハードをフル活用するためには、サプライチェーンで物流情報を可視化するなどソフトの強化も必要だ。サプライチェーン全体で考えないといけない」と指摘。

 2024年問題の対応に向け、CXカーゴとTSUNAGUTEの両社は、さらなる連携強化を図る。田村室長は「2024年問題でテレサリザーブに問い合わせが急増しているだろうが、今後も現場に合わせた機能の拡充を期待している」とTSUNAGUTEにエールを送る。春木屋社長も「テレサリザーブの引き合いは昨年の比ではないほど非常に増えている。社会の要請に応えつつ、CXカーゴさんのご要望に応えられるよう引き続き足しげく通いたい」と期待に応える構えだ。両社はさらなる一手を打ち出していく。