10月10、11日に大規模セールを控えるアマゾンが、規制当局から独占で訴えられた。FTC(米連邦取引委員会)と17州の司法長官は9月26日、アマゾンが販売サイトに出品している中小業者の安売りを阻止するなど継続的な違法行為により競争を阻害し、独占力を行使して価格を吊り上げ、買い物客の質を低下させ、消費者と企業のイノベーションを阻害していると断じた。

 FTC競争局のジョン・ニューマン副局長は「米国の反トラスト法(独占禁止法)の歴史において、一つの事件がこれほど多くの人々にとって良い結果をもたらす可能性を持つことはまれである」と自信を示している。

他サイトで安売りすると検索順位低下

 FTCと各州は、アマゾンの反競争的行為が、買い物客向けのオンラインスーパー市場と、販売者が購入するオンラインマーケットプレイスサービス市場という二つの市場で行われていると主張している。

 例えば、あるセラーが他のECサイトなどでより低価格の商品を提供していることをアマゾンが発見した場合、アマゾンは値引き販売者を検索結果のかなり下の方に格下げすることで、ユーザーから事実上見えなくすることができる。

 また、関連性の高い自然検索結果を有料広告に置き換えることで検索品質を劣化させ、顧客体験を悪化させている。検索結果は品質重視というより、アマゾン自身の商品が優先されているという。

 さらに、アマゾンに依存するしかない何十万もの販売者は、ビジネスを継続するために高額な手数料を課せられている。手数料は、販売者が商品販売ごとに支払わなければならない月額料金から、販売者がビジネスを行うために事実上必要となっている広告料まで多岐にわたるため、多くの販売者は総収入の50%近くをアマゾンに支払わなければならないという。

 FTCは各州のパートナーとともに、アマゾンの違法行為を禁止し、競争を回復させる永久差し止め命令を連邦裁判所に求めている。

アマゾンは全面的に争う姿勢

 アマゾンは翌9月27日にリリースを出し、「(FTCの言い分を飲めば)消費者は価格上昇と配送の遅れを招き、企業は打撃を受けるだろう」と反論している。ここ数年、FTCの調査に協力してきたが、「この訴訟はFTCの小売りに対する根本的な誤解を明らかにしている」と断じた。

 アマゾンで販売する大小の独立系セラーは約50万社あり、米国で150万人の雇用を生んでいるという。アマゾンは当初、第三者(サードパーティー)のセラーを認めなかったが、現在では総売上高の6割がサードパーティー経由だ。共存共栄できなければアマゾンも困るというわけだ。

 同社は各種オプションサービスのどれを活用するかはセラーの選択次第としているが、FTCはアマゾンが高額のオプションをセラーに強要していると考えている。これはフランチャイズチェーンの本部と加盟店の関係に似ているかもしれない。アマゾンのブランドなら大きな販売チャンスが見込めるが、セラーの負担も多くなる。

 アマゾンは、「消費者は小売商品全体の80%以上を実店舗(リアル)で購入している」と、小売業界全体での競争の激しさを訴えている。9月27日現在、食料品店「アマゾン・フレッシュ」の実店舗は全米44店、レジのないコンビニエンスストア「アマゾン・ゴー」は同24店(スターバックスとの共同店舗2店舗を含む)しかない。

 だが、ネット通販の世界ではセラーはアマゾンに逆らえないのも現実だ。サービス品質を落とさずにセラーの負担が減り、販売価格も低下して消費者にもメリットがあるという理想的な着地ができるのかどうか。訴訟の行方にはセラーの主張も影響を与えそうだ。