10年後には20~30代となり、経済活動の主役へと躍り出る「Z世代」。これまでの世代と全く異なる価値観、消費の特徴を持っているといわれ、アプローチは容易ではない。本連載では、Z世代にホットなモノ・コトを取り上げ、展開する企業の戦略や、なぜZ世代に刺さっているのかを調査。見えづらいZ世代のニーズや生態を掘り起こすとともに、 若年層から巻き起こる“ニュートレンド”が、今後の生活や消費の“ニュースタンダード”になり得る可能性を探る。

推し活に特化したメディア、通販を展開

「SixTONESのライブに向けて田中樹さんの推しネイルしてきました!PVで持ってたチェーンをモチーフに、メンバーカラーの青でまとめたよ」
「六弥ナギくん(スマホゲーム「アイドリッシュセブン」に登場するキャラクター)、誕生日おめでとう!推しぬいとケーキを食べるところまでが推し誕!」

 SNSの投稿からも熱気がうかがえるのが、今Z世代を中心に盛り上がる「推し活」だ。ファンになったアイドルやキャラクターなどの「推し」を熱心に応援し、ライブやイベントに参加するのは当たり前。それだけでなく、普段から推しのイメージカラーのグッズを身に着けたり、推しの誕生日にはお祝いのケーキを用意したりする。それがもはや自己表現やライフスタイルの一部となり、推し活に人生の楽しみや生きがいを見出す人も増えているのだ。

 そんな推し活に特化したサービスを展開するスタートアップがある。2021年に立ち上がった「Oshicoco(オシココ)」だ。代表を務めるのは1998年生まれのZ世代起業家、多田夏帆氏(冒頭写真)。会社設立のきっかけは、彼女の個人的な体験にあったという。「私自身、いわゆる『オタク』として好きなものをずっと推してきて、人生のつらい時期も推しの存在がいたからこそ乗り越えられた。何かを応援したり、好きという気持ちを表現することで前向きになれる。そういう活動をサポートすることで世の中に貢献したいと思った」。

 Oshicocoが消費者向けに展開するサービスは大きく二つある。一つは推しがいる人に向けたSNSメディア、もう一つは推し活応援グッズの通販だ。メディア事業ではインスタグラムを活用して情報発信を行っている。記事の中身は例えば、「推し活Q&A」「夏の遠征持ち物」「ファンレター例文14選」などなど。メインユーザーは10~30代の女性。約8万人というフォロワー数もさることながら、投稿した動画が500万回再生されたり、1投稿で多くのリーチや保存数があるなど、エンゲージ率の高さがメディアとしての強みとなっている。

Oshicocoのインスタグラム。推し活をしている人に刺さる情報を提供

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