単身者世帯の利用に ブレーキがかかった

 冷凍食品市場が分岐点に差し掛かっている。コロナの3年が冷凍食品市場を拡大させたのは周知のとおりだ。2020年4月以降、学校休校や在宅勤務など、不要不急の外出自粛を余儀なくされた結果、消費者は長期保存がきく冷凍食品の買いだめに走り、脚光を浴びることとなったのだ。

 実際、総務省の家計消費支出調査によれば、2020年の冷凍食品に対する年間の支出金額は、2人以上世帯で8787円、単身者世帯でも2401円となり、前年比でそれぞれ12.4%増、35.6%増と共に2桁伸ばした。21年もその勢いは衰えることなく、2人以上世帯で9441円(前年比7.4%増)、単身者世帯に至っては4672円(同94.6%増)と2倍近い伸びを示したのだ。

 ここまでの伸びはコロナによって生じた特殊な消費環境のせいばかりではないだろう。伸びを下支えしたのが冷凍食品そのものの品質の高さだ。「コロナをきっかけに、冷凍食品を利用した消費者の方が味の良さや利便性に気づき、その後のリピート買いにつながった」との声は少なくない。

 もう一つの要因は裾野の拡大だ。食品スーパーはもちろんのこと、ドラッグストア、コンビニ、外食、百貨店までもがこぞって冷凍食品の商品開発や取り扱いを強化。冷凍食品の専門店までもが登場し、消費者ニーズに応えた。

 加えてカテゴリーの広がりも見逃せない。冷凍食品売り場では地方や有名店といった切り口の高単価商品や、1食完結型、おかず系、デザート、パンに至るまで品揃えが拡大している。また食品スーパーでは生鮮3品の売り場で冷凍品を見かけないスーパーはないほどだ。さらにミールキットや惣菜など、スーパーのオリジナル商品も増えている。

 ただしこうした動きも、昨年と今年の新たな環境変化を受け、戦略の見直しが求められる事態となっている。変化の一つはコロナの収束だ。消費者の巣ごもり生活は終わりを告げ、再びコロナ前の外食、中食、内食の胃袋争奪戦が激化している。

 実際、昨年からその兆しは見えていた。22年の家計消費支出調査によれば、2人以上世帯の年間消費金額が1万106円と1万円の大台を超え、前年比7%増と堅調な伸びを示したのに対し、単身者世帯は3495円、前年比25.2%減と急ブレーキがかかったのだ。

 さらに2人以上世帯のうち、勤労者を含む世帯の伸びが前年比2%増と全体の伸びに対して小幅にとどまった。これらの結果から考えられるのは、現役世代がコロナ収束に伴い、冷凍食品以外にシフトしているということだろう。

本来の価値を消費者に伝える好機

 もっともコロナ収束で売り上げの伸びが鈍化するのは予想の範囲本来の価値を消費者に伝える好機内。ただそれに加えてもう一つの大きな変化が原材料の高騰を受けた商品の値上げだ。当然冷凍食品も値上げが進んでおり、その結果、スーパーでは点数が落ち込み、単価アップがそれを補うという構図になっている。

 そうした状況下で今年、さらに来年も進むと見られるのが商品の選別だ。実際、今年に入り、去年広げた冷凍食品の売り場を見直す動きも出ている。一例が埼玉県のイトーヨーカドー和光店。今春、売り場から消えたのが冷凍パンだ。スイーツも大幅に縮小され、代わりに同社オリジナル商品の1食完結型「イーズアップ」が並んでいた。冷凍食品はそもそも製造時に冷凍する分コストが高くつく。さらに原料も高騰する中で、そのコストアップ分の価格を考慮しても食べたい商品であるかどうか。消費者の選別のハードルは間違いなく上がっている。

 逆に冷凍食品メーカーや小売業にとっては、ピンチをチャンスに変える好機でもある。メーカーにとっては冷凍食品の本来の価値を消費者に伝える機会となりうる。冷凍食品は長年、小売業の安売りの目玉商品にされてきたが、本来は利便性が高く、保存料を使わないため安全性も高い商品だ。その特性を生かし、いかに品質を上げて高単価でも消費者に受け入れられる商品開発ができるかどうか注目される。

 一方、スーパーを中心とする小売業にとっては、生鮮や惣菜を冷凍にして売ることが適しているかどうかを見直す好機となろう。実際、大手スーパーの幹部からは「冷凍食品に舵を切りすぎると、ロスが出ないことをいいことに、現場が甘えて販売力が落ちる」ことを警戒する声も上がっている。特に生鮮3品の売り場で冷凍食品の売り場が増えれば、その分鮮度の訴求力は落ちる。冷凍食品が増えるからこそ、あえて他社と差別化を図り、売り上げ、利益を取りに行く。そんな冷凍食品との向き合い方も問われそうだ。

(冒頭写真 スーパーが展開する冷凍のミールキットも支持が高まっている<写真はヨークベニマルのミールキット>)