来場者数が前回から45.8%増に

 リアルの展示会の価値を改めて示したと言えよう。全国スーパーマーケット協会は2月15~17日の3日間、「第57回スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)2023」を千葉市の幕張メッセで開催した。

 SMTSは、スーパーマーケットと接点を持つBtoB向けの商談展示会だ。食品・日用品メーカー、卸、店舗設備・資材関連、地方自治体と幅広い業種が出展し、新商品や業界トレンドを紹介。また商談の場として多くの来場者に活用されている。

開会式でテープカットを行う横山清・全国スーパーマーケット協会会長(中央左)

 今年はコロナ禍の各種規制がない3年ぶりの環境下となったことから、出展者数は2046社・団体、3271小間と昨年から約2割以上増加。そのうち地域産品メーカーは1400社以上、海外からは16カ国、95社・団体、104小間が参加した。開会式で全国スーパーマーケット協会の横山清会長は「今回のトレードショーは出展商品の幅も広がり、奥深いショーとなった」と語った。

 来場者数も多かった。「3年ぶりに来場した」と語る地方スーパー関係者も少なくなく、同時開催の「デリカテッセン・トレードショー(DTS)2023」と合わせて、3日間で6万2525名と、前回を45・8%も上回り、盛況となった。

 会場は例年通り、幕張メッセの全館を使用。1~8ホールではSMTSの「生鮮」「加工食品」「菓子・スイーツ」「飲料・酒類」「店舗開発・販促」「設備・資材」「食のトレンドゾーン」の各ゾーンとDTSを設置した。9~11ホールでは「地方・地域産品」ゾーンと同時開催の「こだわり食品フェア2023」(食品産業センター主催)で、地域の食を前面に打ち出した。

 大手設備系メーカーのブースでは最新の技術やトレンドを提案。寺岡精工は世界初の「減算式はかり」を利用した量り売り製品を公開。減算式はかりは秤の上に商品が乗った状態で陳列され、お客が取り出して総重量から減った分の商品の重さと料金を逆引きで算出するものだ。これに近距離無線通信規格「NFC」を搭載し、商品を取り出すたびにNFCカードをかざして計量データを蓄積することで買い回りの最後に全商品の購入データを記録した精算用ラベルをまとめて発行し、レジで会計できる。複数の商品購入の際でも会計時の手間が減り、利便性向上につながる。

 コロナの影響が小さくなり、人手不足が再び大きな課題となっている。これに対応するものとして、オカムラはグラウンド社と共同開発したピッキング・品出し兼用フレームを搭載したピッキング支援ロボット「PEER ST」を公開。店舗におけるネットスーパー向けのピッキングと品出し業務の省力化を提案した。

 一方、エネルギー高の影響による電気代削減策を打ち出したのがパナソニック産機システムズ。省エネコンサルティングサービスや冷凍・冷蔵ケース、消費電力量を最大40%削減する保守メンテナンスサービスを紹介した。

④パナソニック産機システムズは製品やメンテナンスサービスが一体となった電気代削減を提案

食のトレンドゾーンで「冷凍×食」ゾーンを新設

 前回から主催者の特別企画として始まった「食のトレンドゾーン」では、「美と健康×食」「サステナビリティ×食」に加えて「冷凍×食」ゾーンを新設し、コロナ禍を機に需要が急拡大している冷凍食品や機器・技術、サービスについて展示。ゾーンアンバサダーとして起用された〝冷凍王子〟の愛称で活躍している冷凍生活アドバイザーの西川剛史氏がライブステージに登壇し、「2022年冷食トレンドの振り返りと今後の展望」と題した講演を行った。会場では全国スーパーマーケット協会の会員スーパーが開発した冷凍食品PBを試食体験できるコーナーや、出展者から募集した冷凍に関する新商品約100品を集中展示した。

今回新設した「冷凍×食」ゾーンで冷凍に関する約100 商品を展示

 食品卸では、国分グループ本社が加工食品ゾーンで従来加工食品と酒を前面に出していた展示を変更。「新たな価値創造を国分と」を大テーマに掲げ、「持続可能(サステナブル)」「地域密着」「海外事業」「酒類ビジネス」をキーワードに、商品や取り組みについて紹介した。例えば、トレンドのサステナブルでは、部署横断の社内ワーキンググループで作成した「サステナブルアイコン」を実際の棚に設置。「SDGsに取り組みたいが、どのような売り場を作ったらよいかわからない」「売り場で商品がわかりにくい」といった小売業や生活者の課題解決を提案した。

国分グループ本社はサステナブル商品を見つけやすい売り場を提案

 SMTSの主催者企画では、スーパーマーケット業界の旬の話題を取り上げる「セミナーステージ」において、横山会長の基調講演をはじめ、協会が毎年発行している「2023年版スーパーマーケット白書」の解説や、野菜や果物の効果・効能を店頭で伝える「Y-POP活動」、今年から開始予定のインボイス制度、脱炭素の取り組みなどSDGsも充実させた。

 今回で5回目となる協会主催の「スーパーマーケットにおける品質改善成果発表大会」では、ウジエスーパー、成城石井、大創産業、アクシアルリテイリング(原信ナルス、フレッセイ)、ハローデイ、フレスタ、マミーマート、マルト、ライフコーポレーション、ランドロームジャパンがそれぞれ活動を報告。原信ナルスは魚惣菜の粗利益高向上について、マミーマートは焼き芋の品切れ改善に向けた取り組みについて、それぞれ語った。

 また食品スーパーの社会貢献に光を当てる「スーパーマーケット Good Action Initiatives」実行委員会の発表会が行われ、渥美フーズ(愛知)、ウジエスーパー(宮城)、とりせん(群馬)、共栄商事ポルカ食品館(岡山)の4社の取り組みが紹介された。パネルディスカッションに参加した渥美フーズの渡会一仁社長は「運営してい る24時間営業の無人販売店舗では地元生産者やメーカーが出店し、バイヤーが商品を発掘に来店することもある。地域で地元の商品を購入することで雇用が生まれ、経済が循環する仕組みが非常に有効だと思う」と語った。

スーパーマーケットGood Action Initiatives のディスカッションで自社の取り組みについて語る渥美フーズの渡会一仁社長

 このほか、日本品質にこだわった酒類提案の「てづくりNIPPON」を設置。クラフトビール、焼酎、日本酒、日本ワイン、果実酒、スピリッツなど46社が出展し、SDGsの取り組みなども紹介した。

 さらに、経済産業省主催の流通業やサプライチェーンが抱える課題の解決策となる提案を審査・表彰する「スーパーDXコンテスト」の優秀賞受賞社の表彰式も開催。優秀賞を受賞したハルモニア、D&Sソリューションズ、10Xの三社が経産省の茂木正商務・サービス審議官からトロフィーを授与された。

スーパーDXコンテストではハルモニア、D&S ソリューションズ、10X の3社が受賞

1万4300件から最優秀18件を選出したお弁当・お惣菜大賞

 SMTSと同時開催のデリカに特化した商談展示会「DTS2023」では中食に関する企業・団体がブースを出展したほか、恒例企画「お弁当・お惣菜大賞」受賞式を開催した。受賞商品を展示し、一部商品は会場内に設けられたイートインスペースで実際に食べることもできた。お弁当・お惣菜大賞には、スーパーマーケットや専門店などから1万4286件の応募があり、その中から弁当、惣菜、サラダなど11部門それぞれで「スーパーマーケット部門」と「専門店・CVS」の2業態に分けて審査を実施。最終的に最優秀賞18件、優秀賞39件、特別賞6件、入選153件が選出された(最優秀賞の企業と商品名は表の通り)。

 また店内調理販売の導入提案として、デリカのメニューを来場者に食べ比べてもらう「食べ比べ体験STAND」を展開。バックヤードに設置したスチコンを活用し、3種類のピザを実演を交えて紹介し、試食も提供した。

お弁当・お惣菜大賞の受賞商品の見本を会場内で展示した

 次回は24年2月14~16日の3日間、幕張メッセで開催する予定だ。競争環境の激化に加え、相次ぐ値上げで消費の後退が懸念される中、スーパーマーケット各社は消費者から選ばれる商品やサービスをどう打ち出していくか。有益な情報収集の場であるスーパーマーケット・トレードショーの存在意義はより重要なものとなりそうだ。