地域産品メーカー1170社以上が参加

 継続の意義が問われた2年だったのではないか。全国スーパーマーケット協会は2月16~18日の3日間、「第56回スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)2022」を、千葉市の幕張メッセ全館で開催。3日間で計4万2885人が来場した。

 SMTSは、スーパーマーケットと接点を持つ様々な業種が集う、BtoBに特化した商談展示会だ。メーカー、卸、店舗設備、資材、店舗開発、情報サービス関連企業がそれぞれ新商品や業界トレンドを発信し、官公庁や地方自治体は地元の中小メーカーとともに、地元のこだわり商品を紹介する。特に小売りのバイヤーにとっては全国の地域商品を一堂で見ることができるチャンスとあって、毎年ニーズが高い。

会場の幕張メッセ
中央でテープカットを行っているのが横山清・全国スーパーマーケット協会会長

 そんなSMTSもコロナに直面。第54回の閉会直後から感染が拡大し、昨年の55回は「やるかやらないかの大変な議論があった」(横山清・全国スーパーマーケット協会会長)。それでも、コロナ下でのスーパーマーケット支援、地域産業支援のために来場者数を大幅に制限して開催。その前回を乗り越えての今年の開催について、横山会長は「このような状況の中でトレードショーができるのは本当に幸せ。今年は新しい時代の幕開けになるのではないか」と開会の喜びを語った。

 今回は1652社・団体が出展。うち地域産品メーカーは1170社以上で、改めてSMTSに対する地方の期待度を示した。また海外からも6カ国69社が参加。同時開催の全国スーパーマーケット協会が主催する惣菜に特化した商談展示会「デリカテッセン・トレードショー(DTS)2022」と合計すると1690の企業・団体が参加し、各社思い思いの提案を行っていた。

メーカーブースで目立ったサステナブルな提案

 食品メーカーや卸のブースでは、トレンドである冷凍食品やサステナビリティに配慮した商品が目立った。特に後者については、今回から展示会の特別企画としてスタートした「食のトレンドゾーン」においても、2大テーマである「美と健康×食」とともに、「サステナビリティ×食」として、プラントベースの代替肉やベジタリアン、ヴィーガン、環境配慮、食品ロス削減などに適した食品メーカーのブースを集積。マルマサフードは規格外の果物を冷凍カットフルーツにした「グレちゃった果実」などを紹介。大塚食品は肉の代わりに大豆を使用したプラントベースフードの「ゼロミート」を大々的にアピールしていた。

食のトレンドゾーンの「サステナビリティ×食」のブース

 食品卸でも積極的な打ち出しが目立った。国分は「サステナブルデリカ」と題し、自社で定めるサステナブルのスペックに基づいた商品を紹介。その一つが「骨まで食べられる魚」だ。特殊な圧力加工により、骨を柔らかくして、まるごと食べられるようにした。そうすることで栄養価が高くなり、かつ食品廃棄も減らせるというもの。市場では骨取り魚が人気だが、今後は骨まで食べられる魚が取って代わる可能性も十分ある。

国分の提案する「骨まで食べられる魚」。栄養価が高く廃棄部分が少ないことから、今後の流通拡大が期待される

 国分の取扱商品でもう一つ注目したいのが、大豆おからとこんにゃくで肉や魚などのタンパク質食感を実現したプラントベースフード「ディーツ」。食物繊維が豊富でかつ低カロリーが売りの素材で、今後認知が高まれば、市販用、業務用共に利用シーンが増えそうだ。

 大手設備系企業のブースでもサステナブルはキーワードだ。寺岡精工は、包装資材を減らし、最適な量を購入できる量り売りを、最新技術を用いてアップデート。AI画像診断により、商品が何かを認識して量に応じた価格をはじき出す「AIセルフサービススケール」や、容器の重さを計量することなく、充填した商品の重さだけを計量できる「オールインワンバルク」を国内で初披露した。セルフの量り売りの利便性を高めることで、普及拡大につなげる。

寺岡精工の「AIサービススケール」

 このほか、人手不足を背景にスーパーマーケットの店頭では作業軽減がテーマになっていることから、オカムラは最新の引き出し什器を展示。従来製品は引き出す際のロック部が一部にしかなかったが、新製品は前方部のどこでもロックが解除でき、作業性をさらに高めることができる。またコンビニの飲料補充やネットスーパーの倉庫対応として、ピックアップロボットも展示した。

オカムラの最新の引き出し什器

お弁当・お惣菜大賞には4.2万件がエントリー

 同時開催のDTS2022ブースにも多くの来場者が訪れた。中でも毎年大きな話題となるのが、恒例企画「お弁当・お惣菜大賞」と、その受賞商品の紹介ブースだ。さらに一部商品については実際に会場で購入して食べることができるイートインコーナーも設けている。

 今年も多くの人が訪れた「お弁当・お惣菜大賞」。会場では受賞商品の見本も展示した
展示会の期間中には表彰式も開催

 今回は、定番商品部門に採用された「タイ・ベトナム料理(アジアン料理)」を含む11部門に、スーパーマーケットや専門店などから4万1923件のエントリーが寄せられ、18商品が最優秀賞に輝いた(一覧表を参照)。

 主催者企画では前回に続き、国産の品質にこだわった酒類を提案する「てづくりNIPPON」、HACCP制度化への対応を支援する「食の安心・安全対策」の二つのコーナーを設置した。

 スーパーマーケット業界の旬の話題を取り上げる「セミナーステージ」は、前回同様、オンラインでの配信を実施。横山清会長の基調講演をはじめ、商品面ではオーガニックやプラントベース、経営戦略面では協会が毎年発行している「2022年版スーパーマーケット白書」の解説や、プラスチック資源循環法の解説、流通業のGX(グリーントランスフォーメーション)といったSDGs関連も充実させた。

 協会主催の「スーパーマーケットにおける品質改善成果発表大会」は今回で4度目。前回に続きオンライン形式での発表となり、ウジエスーパー、成城石井、アクシアルリテイリング(原信ナルス、フレッセイ)、ハローデイ、フレスタ、マミーマート、マルト、ライフコーポレーション、ランドロームジャパンがそれぞれの活動報告を行った。成城石井はシャインマスカットの拡販について、ライフコーポレーションはプロセスセンターでの豚肉もも切り落としの生産性アップに向けた取り組みについて、それぞれ語った。

 このほかスーパーマーケットの社会インフラ機能に着目し、その取り組みを応援する「Good Action Initiatives」実行委員会による、事例発表会も行われた。

 今回はスーパーサンシ(三重)、斗々屋(京都)、フレンドフーズ(京都)、ホクノー(北海道)、マルト(福島)の5社の地域活動を紹介。パネルディスカッションに参加したマルトの安島浩社長は「(地元客に対して)パフォーマンスは通じない。1度始めたらやり続ける。地元の子ども達からレシピを募集するお弁当コンテストでは、5、6年生の最優秀賞を商品化して販売しているが、今後は全学年に広げることで、もっと食に興味を持ってもらいたい」と語った。

 次回のSMTSは23年2月15~17日の3日間、同じく幕張メッセで開催予定だ。

Good Action Initiativesのパネルディスカッションに参加するマルトの安島浩社長(左から2番目)