食と健康の新提案「食のトレンド」ゾーンを開設
全国スーパーマーケット協会が主催する「第56回スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)2022」が、来年2月16~18日の3日間、千葉市の幕張メッセ全館で開催される。前回のSMTS2021は、食のライフラインであるスーパーマーケットや商談の機会が激減した中小事業者を支援するべく、感染防止策を徹底し、リアルでの開催を実現させた。出展者からは「来場者に商品を直接見て食べてもらい、イメージを伝えることができた」「取引先と直接会えない中、情報交流ができた」など、リアルでの開催を評価する声が相次いだという。
これを踏まえ、協会では来年も引き続きリアル主体の開催を計画している。リアルで開催することの意義として、協会事業部展示会課の吉沢敦主任は「スーパーマーケット業界団体の展示会として、最前線で活躍するスーパーマーケットに商談の場を提供し、支援活動を止めないこと。業務用の売り上げを大きく落としている中小事業者の販路拡大のきっかけをつくること。そしてスーパーマーケットがより安全に営業を継続できるよう、非接触・衛生管理・物流効率化などの情報をより多くの方に届けること。この3点を重視している」と力を込める。
ワクチン接種の広がりなど、状況がこれまでと比べて改善していることから、来場者数は前回より増える見込みだ。ただしコロナ前を目指してはいない。前回の来場者数は感染対策により例年の3分の1の2.6万人にとどまったが、一方で一部の来場者や出展者からは「目当ての取引先とじっくり商談することができた」と評価する声が上がっており「今後は来場者の質をこれまで以上に重視していきたい。今回はコロナ前と前回のちょうど間ぐらいの、5万人から6万人の来場者数を目指していきたい」と吉沢主任は語る。
SMTSは、スーパーマーケットと接点を持つ様々な業種が集う、BtoBに特化した商談展示会だ。食品や日用品のメーカーから卸、店舗設備・資材関連、店舗開発、情報サービス関連企業、さらに官公庁や地方自治体が地元の中小メーカーとともに出展するなど、全国の地域産品や大手メーカーの新商品、業界のトレンドなどの情報収集にとどまらず、その場で商談も行える展示会として、長年多くの来場者に支持されてきた。
今回は「第56回SMTS2022」を中核に、同じく全国スーパーマーケット協会主催の、惣菜に特化した「デリカテッセン・トレードショー(DTS)2022」、食品産業センター主催の「第17回こだわり食品フェア2022」が同時開催となる。
会場は例年同様、幕張メッセの全館を使用。1~8ホールではSMTSの「生鮮」、「加工食品」、「菓子・スイーツ」、「飲料・酒類」、「日用品・雑貨」、「情報・サービス」、「店舗設備・資材」の各ゾーンとDTSを設ける。9~11ホールではSMTSの「地方・地域産品」ゾーンとこだわり食品フェアで、地域色豊かな食を提案する。
中でも注目の新企画が、「ケアフーズ」ゾーンの発展形となる、「食のトレンド」ゾーンだ。健康に対する価値観の多様化とともに、食のトレンド自体も多様化していることを踏まえ、健康以外に注目すべきトレンド情報と商品を紹介する。
今回のテーマは、「美と健康」と「サステナビリティ(持続可能性)」の二つだ。「美と健康×食」では、美しく健康的な心と体づくりに役立つ商品として、ダイエットに人気の糖質オフやカロリーオフ系、体づくりに最適な高タンパクや低脂質商品を集めた。
もう一つの「サステナビリティ×食」では、いま話題のプラントベースの代替肉やベジタリアン・ヴィーガン・ハラール系、有機のほか、環境配慮、食品ロス削減などに適した商品を集積。「これを手始めに、今後もトレンドに即したテーマを提案していきたい」(吉沢主任)考え。
タイ・ベトナム料理を含む11部門の弁当、惣菜が集結
主催者企画では前回に続き、国産の品質にこだわった酒類を提案する「てづくりNIPPON」、HACCP制度化への対応を支援する「食の安心・安全対策」の二つのコーナーを設ける。
てづくりNIPPONでは、日本酒、国産ワイン、焼酎などのメーカー40社が出展する予定。また食の安心・安全対策コーナーでは、今年6月に完全施行となった改正食品衛生法を受け、HACCPに沿った衛生管理対策を出展者が提案する。
リアルが中心のSMTSだが、オンラインも積極的に活用していく方針だ。商談では、東京商工会議所と共催の個別商談会「ビジネスマッチング@SMTS2022」において、リアルとオンラインを併用。ジェトロ(日本貿易振興機構)が主催の食品輸出商談会では、前回に続き今回も完全オンラインで、海外バイヤーとの商談の機会を提供する。ちなみにこちらは展示会会期前の2月7~10日の4日間開催する。
スーパーマーケット業界の旬の話題を取り上げる「セミナーステージ」も前回同様、オンラインでの配信を予定している。横山清会長の基調講演をはじめ、商品面ではオーガニックやプラントベース、経営戦略面では協会が毎年発行している「スーパーマーケット白書」の解説や、脱プラスチック、流通業のGX(グリーントランスフォーメーション)などといったSDGs関連のテーマも充実させている。スーパーマーケットの社会的活動を応援する「Good Action Initiatives」実行委員会による、取り組み企業の発表も行われる予定だ。
惣菜にフォーカスした商談展示会「DTS2022」では、毎回恒例の一大イベントとなった「お弁当・お惣菜大賞」の受賞商品をブース展示するほか、さらに一部商品については来場者が会場内で購入し、実際に食べることができるスペースも設ける。
お弁当・お惣菜大賞では、定番商品部門に採用された「タイ・ベトナム料理(アジアン料理)」を含む11部門に、スーパーマーケットや専門店などからエントリーが寄せられた。事務局では「各社とも商品開発に力が入っており、家飲み需要を取り込むおつまみ系や、代替肉を使ったメニュー、デザートでは各社が創意工夫を凝らしたマリトッツォなどのエントリーが多くみられた」と振り返る。
このほかDTSでは、主催者企画として会場内で「食べくらべ体験」を実施予定だ。スーパーマーケット店内での調理販売提案として、会期中の3日間、日替わりで数量を限定して試食を提供する。初日はタレやシーズニングで味を変えて楽しむ餃子味変メニュー、2日目は卵メニュー、最終日はプラントベースをそれぞれ用意。合わせて、会期中には大賞受賞商品の紹介や業界トレンドなどを網羅した「惣菜デリ最前線2022」を無料で配布するほか、連動企画として、年間を通じてデリカに関する情報発信を行う「デリカスタディ」も開催する。すでに今年の5月、7月、10月の3回までは開催済み。来年1月にも開催を予定している。
フードロス、環境に配慮した商談展示会を目指す
感染症対策では前回に続き、来場に当たっては完全事前登録方式を採用。来場者は招待券に記載のID、パスワードを使用して事前のオンライン登録が必要になる。また出展者に対しては、「出展の手引き」を配布し、試飲・試食時の提供方法など、対策を周知徹底する。「試食はあらかじめ個食にしておく」、「お盆などを介して提供する」など、接触と飛沫を防止するための細かな対応を出展者に求めていく考えだ(イラスト参照)。
加えて今回からは「SDGs宣言」をするとともに、フードロスや環境に配慮した展示会を目指す。具体的には食品ロスの削減を出展者に呼びかけるほか、環境配慮への対応として、展示会で使用する電力をグリーン電力に切り換える。また、資料の電子化、環境配慮素材の使用も推進する。
脱炭素や食品ロス対策など、SDGsの取り組みはスーパーマーケット業界でも避けては通れない。こうした課題に対しても協会として業界に先駆けて取り組む構えだ。